証明
「おい...おい、起きろ」
「ん、んん......ん?」
ミーシャの頬をペチペチと叩いて目を覚まさせる
「よう、おはようさん」
「へっ...?」
俺と目が合うとミーシャは少しアホな声を上げる
「え、なんであなたが...ってここはどこなのよ...?」
「落ち着け落ち着け、とりあえずお前をあの男の屋敷から出すことには成功したから、安心しろ」
そして俺は今までに至る経緯を全てミーシャに説明する
「あ、あなた貴族と決闘なんて馬鹿じゃないの!?」
「やっぱり普通はそういう反応なのね」
一応キースさんに貴族と決闘ってどんな感じですか?って聞いたら、そんなのは処刑されるのと一緒というお言葉をいただいた
「でもしょうがないだろ、お前だけをあそこから連れてきても正直意味無いんだから」
「それでも治癒師が決闘に挑むのなんておかしいわよ」
「おいおい、誰がただの治癒師だっていった?」
「え、でもあなた自分で治癒師って....それに私の呪いや怪我も治したじゃない」
「まぁな、そこらへんのことはおいおい説明するさ。とりあえず立てるか?この家の人達に挨拶するぞ」
そして俺はミーシャを連れて、キースさんたちがいる下の階へと連れていく
実はミーシャを連れてきて、ミーシャもしばらくキースさん宅に俺と一緒に置いてもらうことを承諾してもらった
食費とかそこらへんは俺が毎日仮設テント治癒院で野菜とか食材を色々もらってるから問題ない
服とかもノエちゃんから貸してもらえば済むだろうし
まぁ問題があるとすれば決闘とかを終えた後だな
たぶん...まぁもう答えは決まっているけど、今は考えなくてもいいだろう
「えー...というわけで改めて紹介します、私が貴族のとこから連れてきたエルフのミーシャです。そしてこちらは私が居候させて頂いているキースさんとその奥さんのサナさん娘さんのリナちゃんです」
俺はそれぞれの紹介をする
キースさんたちは「よろしくね」といい、ミーシャもぼそっとではあるが「よろしく」という
「簡単な説明はキースさんたちにはさせてもらったんですが、ミーシャが起きたのでもう少し詳しく説明しますね」
そして俺はハリス子爵の元に行き、何があったかをいう
「いやー...そういう感じで決闘することになってしまって、あはは」
俺の乾いた笑いが響く
俺がハリスに決闘をすることになっていると話し始めた当たりからなんか空気が重くなりはじめましたね
「クロエちゃん、君が強いのは知っているけど貴族というのはお抱えの用心棒や冒険者を必ず持っているんだよ...それでも君は勝てると思うのか?」
「えっと...まぁ正直誰が来てもあまり負ける気はしないというか.....いや...あの迷惑でしたらミーシャを連れて出ていきます」
「い、いやそういうことじゃないんだ...!」
キースさんが慌てながらそう言う
「普通に君のことを心配してるんだ、それくらい貴族と決闘をするということは無謀なことなんだよ」
「何かしらの理不尽があることは想像してます、それでも私は勝つ自信があります、だから信じてほしい...それにミーシャだけを助けるというのは私にはできません...この村からも何人かあいつのところに連れてかれてるんじゃないですか?」
あまり聞いていい話ではないが、もうストレートに正直に聞いてしまおう
近くの村の若い娘たちを何人か勝手に連れてって奴隷とかにしてんなら、もしかしてとは思ってたんだけど...
俺がこの話を出すと何故かサナさんが手で顔をおおい泣き始める
「まさかですが...」
「あぁ実はサナの従姉妹も子爵のところに連れていかれていてね」
「なるほど...」
知り合いならって思ってたけど、まさかサナさんの身内とはな...
「あの子爵は既婚者は狙わないからサナはどうにかなったんだけどね、でも従姉妹のルルちゃんは目をつけられて連れてかれてしまったんだ」
泣いて話せないサナさんの代わりにキースさんが説明をしてくれる
その他にもこの村から何人か連れていかれているということも教えてくれる
俺の常識で考えたらよくそんなことして罪に問われないなって感じなんだが
やっぱ貴族ってのは絶大な権力を持ってるぽいな、あとはここが少し田舎の方だってのもあるかもしれない
ほかの貴族だったら貴族としての誇りにかけてそのようなことは行わないとか言いそうだしな
まぁ奴隷という存在がある時点でなんか知れてる気もするが
というかミスったな、こんな話をリナちゃんがいるとこで話すべきではなかったかもしれない
「まぁえっと、とりあえず私もですがこのミーシャもお世話になります。リナちゃん、よかったら仲良くしてあげてね」
暗い雰囲気になってしまったが、リナちゃんは明るく俺に答えてくれる
幼いリナちゃん相手だったらミーシャもひどくツンケンはしないから問題ないだろう
◇
「今日もいい風が吹くもんだ」
海に浮かぶ夕陽に向かって今日も呟く
「ださ」
俺の後ろにたつミーシャからの辛辣の一言
ミーシャをキースさん一家に紹介した後、俺はいつもの夕方の日課であるトレーニングにミーシャを連れてきたわけだが
「まったくお前はこの風景のよさがわからないのか」
「えぇわからないわね」
「そりゃ厳しいことで」
ちなみにどうしてミーシャがいるかというとミーシャが俺の実力を疑っているので、教えてやろうというわけだ
「で、何を見せてくれるのかしら?」
「だから俺...いや、私の実力をだな」
「あまり期待はしてないけどね。あと別にいちいち俺と言うのも直さなくていいわ」
「そりゃ色々どーも」
いい奴だというのはわかるんだがな、どうしてここまで上から目線なのか
「あとあなたのことって私なんて呼ばばいいのかしら?」
「そうだな...普通にクロエでいいぞ」
「了解。じゃあとりあえずあなたの実力を見せてクロエ」
俺はため息をついて愛刀の雫を抜く
モンスターの相手をしている所を見せてもいいけど、それはミーシャに危険が及ぶ可能性があるのでやめといた
とりあえず強烈な一撃を海に向けて放ってみるか
「みとけよ......はぁっ!!」
ドンッ!!ザパーーーーーーーン!!
刀を振り下ろすと巨大な水飛沫が発生した、雨のように水を降らす
放った技は一撃必殺「龍断・極」
そして俺は振り向き
「どうだ、なかなかのもんだろ?」
たぶんドヤ顔になってるかもしれないが、なかなかきまっている気がする
「な、なかなかってレベルじゃないわよ!!あなたほんとに何者よ!!」
「だから言ったろ?ただの治癒師じゃないって」
「確かに言ったけど、治癒師があんなこと出来るはずもないじゃない。クロエってほんとはとてもすごい人なのかしら?」
「いや、別にすごいやつではないさ。まぁ実力はすごいのは保証するがな」
ミーシャは「答えになってないじゃない」と言う
「あ、わかったわ!もしかしてあなたの職業って聖騎士?そうなら回復魔法が使えて強いのもわかるし、隠そうとするのも無理ないわ」
「悪くない答えだけど、残念ながら不正解だ。聖騎士に俺レベルの回復魔法を使えない。俺は治癒剣士なんだよ」
「治癒剣士...?確かにそんなジョブあった気がするけど、誰もつかない地味なジョブじゃない」
「地味で悪かったな。まぁ誰もつかないってとこは確かに正しいけど」
実際ゲームのとかでも支援系になって、その後支援系のままで近接鍛えるのってえぐい大変だったからな
ましてやそれが現実だった大変だろう、治癒師なんてほぼ非戦闘員だし
「クロエの実力はわかったけど、実力で仮に圧倒できてもあの男があなたとの約束を必ず守るとは限らないけど?」
「あー...そうだな。まぁ仮に守らなかったら俺が力ずくでもどうにかするよ。そうだな...俺には回復魔法があるし、死なない程度に永久に拷問ができるな」
「.........今私回復魔法が初めて恐ろしいと感じたわ」
「そうか?まぁそうならないことを願うよ。とりあえず勝負自体には負けることがないっていう保証はできたろ?」
「えぇ正直相手が普通に負けてくれた方が相手のとって幸せだってことはわかったわ」
なんかミーシャが遠い目をしてるけど、気にしないでおこう
とりあえず勝つ自信はあるが、なるべく決闘の日まで己の実力を高めておくとしますかね