ネカマな俺と異世界 その1
よろしくお願いします
初回のみ二話投稿です
「うっ、あ...ふぁ...あぁ頭いてぇ...」
ズキズキと頭がいたむ、二日酔いか?
眩しくて目が開けられない、まぶたを閉じたまま闇の中で自分の状態を再確認する
今感じるのは頭痛と吐き気...二日酔いって思ったがどっちかというと車酔いとかそんな感じだぞ
しかし昨日はどうやって寝たんだ?
確かトリニティをやってたよな?そうそう、アップデートで新クエストが導入されたから、それをナタ子と一緒に攻略しに行ったんだ
なんやかんやでボスを倒して、その後本来赤ん坊を回復させるとこらをナタ子の提案で代わりにクロエ必殺のダメージを与える回復魔法をくらわせたんだ
それで...確かにパソコンがフリーズして、画面いっぱいの「ERROR」の文字.........
俺は勢いよく起き上がる
「俺のパソコン大丈夫かっ!?」
やばいやばいやばい!!あんな状態だと色々とデータが吹っ飛んでる可能性もあるぞ!?
「.........ってあれ?どこだ、ここは?」
光に慣れてきた俺の目は確かに自分の周辺を認識し始める
そこはどう見ても俺が住んでいたアパートの一室ではなかった
ログハウスのような木組みが為されている壁、置かれている棚や机やイスも全て木製である
映画などで見たことある俺がイメージする北欧の家ような光景が目の前には広がっていた
「一体何が起こって.........ん?」
俺はある違和感を感じた
「今のこの状況もおかしいが、なんか妙に引っかかるぞ」
すごい身近なところがどこかおかしい
なんだ、何がおかしいんだ......
俺は悩みに悩み......
「あ....」
気づいてしまった
「いや、まておかしいどうして俺の声が女性の声になってるんだ...」
俺の疑問が女性の声になって俺の耳に届いてくるというどこか笑える現象が起こる
「ほんとに俺の声なのか...?」
と俺が言いたいことが女性の声で響く
え、なにこれ超気持ち悪いんだけど...違和感がすごい
「あーあー...うん、完全に俺が喋ってる声だ。しかしこの声どっかで聞いたことがあるんだよなぁ......」
すごい聞き慣れているんだけどこの耳で聞くのは初めてという矛盾に俺は困惑する
だかこの声は明らかに俺が聞き慣れている声だ
一体誰だ?
俺は自分のその声から想像できる人間の顔を思い出そうとする
そしてある1人の女性にたどり着く
「クロエ...」
そう、この声はクロエの声だ
ゲームの中で収録されている声じゃ納得できなかった俺が頭の中の妄想として生み出してクロエの声じゃないか!!
なんて痛いことしてるんだ自分!!とか思ったりしたけど、今はそんなことはどうでもいい
これはどう考えても俺が理想としていたクロエの声だ
だから聞き慣れていたんだ。そしてこの耳で聞くのは初めてだったんだ
俺の考えは矛盾していなかった、ということだな
「というか、声が女ってことは...」
俺は恐る恐る自分の胸元に手を持ってくる
"モニュッ"
!!!!!!!!!
柔らかい、実に柔らかい感触が伝わってきた
俺はこの目で確認するために視線を下に下ろす
そこにはあった、男の身体にはついてない二つの山がそこにはあった
しかし残念なことにシャツを着ているため山のお姿をこの目に焼き付けることが出来ない
......いや、ちょっと待てよ?
このお山は俺のお山だよな?つまり俺はこのお山のお姿を見たとしてもそれはただ自分のお山を見ただけだから、犯罪でもなんでもない
「これはただの身体検査...これはただの身体検査...」
俺は自分に言い聞かせて震える手でシャツ襟元をつかむ
「ゴクリンコ......」
俺は唾を飲み込む
何を緊張しているだ孝之、これは自分の胸じゃないか
黒江孝之、男になるためいざ参る!!
「あ、お姉さん起きてたんですね!!」
「...............」
俺はものすごいスピードで腕を元の位置に戻す
......見られたか?
「お身体の方はどうですか?どこか痛むところはありませんか?」
12歳くらいの少女がこちらに近づいてくる
この反応は見られてなかったということだよな?
「よかったぁ...」
「えっと...よかっただから大丈夫なんですか?」
「え?あぁうん、俺は健全だよ?」
「お、俺?健全?」
まずい焦りすぎて自爆しかけたぞ
落ち着け落ち着け...
「あぁごめんね、ところで気になったんだけど...ここはどこかな?君は誰なのかな?」
俺は普通だったら一番気にしないといけないであろうことを質問する
俺はおっぱいの方が優先度が高かったから、このことを後回しにしてしまっていた
「えっと...私の名前はリナと言います」
「あぁよろしく...俺はなんでここにいるのかな?」
「はい、三日前の嵐の日に...お父さんがお姉さんを畑で倒れてるところを見つけて連れきたんです」
思ったけど今俺の状況ってかなり謎だよな、おっぱいのことを考えすぎて忘れてたな
女体化した俺の身体、そして謎の少女と謎の場所
これらのキーワードからたどり着く答えは......
そう、夢だ。これは夢なのだろう
「あの...よければお名前の方を教えていただきませんか?」
「あぁ俺の名前は黒江......そう、クロエだ、よろしくかな?リナちゃん」
「はい!よろしくお願いしますクロエさん!!」
しかし女体化する夢か、しかもここまでリアルな
だったらここはお気に入りネームのクロエでいくか
まぁ苗字が黒江という簡単な由来なんだけど
しかしおれどうかしちゃったのかな、ゲームしたまま寝たからちゃっとファンタジーっぽい夢を見ているのか?
まぁなんでもいいか、悪夢じゃないみたいだし身体も自由に動かせるから夢を楽しむとしよう
「お姉さん、動けますか?」
「あぁ特に問題は無いよ、ほらこうして...立つこともできるからね」
俺はベッドから出て立ち上がる
その時にズボン先から白い足がちょろっと見えた
「よかったです!今私朝ごはんの前にお姉さんの様子を見てきなさいってお母さんに言われてて...お姉さんが目を覚ましたことを伝えないといけないんですけど、朝ごはんを食べるついでに一緒に来てくれませんか?きっとお腹も空いてますよね?」
「確かに空いてる気がするな...いや、すごい空いてる。うん、一緒に食べようかな」
意識するとものすごい空腹感が俺を襲った
「じゃあお姉さんこっちです」
俺はリナちゃんに「わかった」と言ってリナの後をついていく
「リナ、お姉さんは...あら、起きたみたいね!どう?身体の痛いところとかはない?」
「あ、えっと...はい、全然大丈夫です」
綺麗な女性が俺の方まで近づいてきて身体をぺたぺた触ってきた
「あら、ごめんなさい。私の名前はサナ、リナの母よ。あなたを連れてきた男の妻ってことになるわね」
「俺......いや、私の名前はクロエです、よろしくお願いします」
さっきまで俺って言ってたけど、女が俺っておかしいよな。ここは私にしておこう
リナちゃんには何回か聞かれてるけど適当に誤魔化せばいいだろう、どうせ夢だしな!!
「ちょっとあなた!!あなたが連れてきた女の子が起きたわよ、来てちょうだい!!」
サナさんが奥の部屋の方をむいて呼びかける
どうやら俺は話を聞く限り今呼んでいる男の人に助けられたみたいだな
「おぉ起きたみたいだな、お嬢さん。どうだ、体の調子はどうだい?」
これで聞かれたのは三回目だ、俺は「大丈夫です」と答えた後に自分の名前を教える
「クロエっていうのか、俺はサナの夫でリナの父親のキースだ、よろしくな」
「はい、よろしくお願いしますキースさん」
キースさんは何故か右足を少し引きずって歩いていた
俺はキースさんの右膝を見た瞬間にあることを感じ取る
キースさんが足を引きずっているは右膝の古傷が原因だ
何故か俺にはわかった、どうしてかはわからないが感じ取ったのだ
そしてもう一つ感じ取ったことがある
「あの、いきなりこんなことを聞くなんて失礼なんですが右足の方は...?」
「あぁこれかい?これは昔モンスターにやられた古傷のせいでね、多少は不便しているが生活には問題がないよ」
やはり俺が感じたことはあっていた
だったらもう一つ感じていたものも出来るに違いない
「ちょっと失礼しますね...「エクストラヒール」」
俺はキースさんの前でかがんでキースさんの右膝に手をかざひ、無意識に「エクストラヒール」を唱える
「エクストラヒール」は「トリニティ」における上位聖属性魔法の一つであり、部位欠損などを含むすべての状態異常を体力を回復するついでに治す効果がある
手のひらから光が生まれる、そして俺の身体からは何かが抜けていく感覚がした
その光は徐々に小さくなって最終的には消えていった
「膝どうですか?」
「膝......う、嘘だろ!?動く、痛みもさっぱり消えてるぞ!!」
よし、どうやら成功したみたいだ
俺はキースさんの古傷とは別に感じたことは、その古傷は俺なら治せるということだ
そして予想通り成功した、夢だからこそできた芸当だろうな
まるで魔法みたいだ
というか聖属性魔法使ってたな、この夢「トリニティ」の影響すごい受けてるな
「見てくれサナ、リナ!!足が動くぞ!俺の足が......!!」
「あなた...よかった、あなた!!」
「お父さん......!!」
家族3人が涙を流して抱き合っている
たとえ現実ではない夢の中であったとしても人に喜ばれることをできたのはよかったことだ
そしておれの夢が俺にとって都合が良くなるように出来ているのは素晴らしいことだと俺は思った
素晴らしい家族愛を見せてもらい、落ち着いたあと俺はキースさん一家の朝食に混ぜてもらった
というか一緒に朝食を食べようと最初は誘われてたな、忘れてたわ
「ありがとう、俺の古傷を治してくれた本当にありがとう」
「いえいえ、私は出来ることをしたまでですから」
これでもう何度目だろうか、感謝されるのは嬉しいんだがそう何度もやられるとちょっと困ってしまうものがある
とりあえずは話題を変えるついでに、俺の現在の状況...というか設定を教えてもらおう
「あの聞きたいんですけど、どうして私はここにいるのでしょうか?キースさんに助けられたというのは聞いたんですけど...」
「もしかして覚えてないの?三日前の嵐の日にクロエちゃんは夫の倒れていたのよ、覚えてない?」
「すみません...覚えてないです」
「もしかして記憶喪失かしら?あの嵐で事故にあったりして、それで畑までたどり着いちゃったとか」
記憶喪失ではないのは自分でもはっきりわかっている
しかし夢の設定的にはそういう流れなのか?
「もしかしたらお姉さんはどこかのお貴族様なのかも、こんなに綺麗だし」
「確かにそうだなぁ...その綺麗な青みがかった銀髪とか貴族様みたいだしな、それに顔も綺麗で...いでででで、痛いってサナ!!」
キースさんがサナさんに頬をつねられている
しかし青みがかった銀髪で、綺麗な顔...もしかして......!!
「すいません、鏡ってありますか?」
「鏡?あるわよ、手鏡でいいかしら?」
「はい、ありがとうございます!!」
そしてサナさんが手鏡を持ってきてくれたので俺は自分の顔を鏡で確認する
そしてそこには映ったものは......
絹のようにさらさらな青みがかった銀髪、切れ長の目とピンクの可愛らしい唇、美しいという言葉しか浮かんで来ないほどの綺麗な顔であった
そう、鏡にはクロエの顔が映っていた
二次元的な顔ではなく、しっかりとリアルな造形の俺が本当に理想としていたクロエがそこには映っていた
「これは......」
俺は恐る恐る自分の頬をつまむ
すると鏡のクロエの頬もつまられる
自分が触れたその肌はどう考えても現実のような感触であり、だかどこか神聖なものを触れている不思議な感じがした
「どうしたの?すごい驚いた顔をしてるけど?」
「あ、えっと...すいません、事故にあったと言われた顔に傷があったらと思って心配になっちゃって」
「そうよねぇ、そんな綺麗な顔だもの傷なんてつけたくないわよね」
適当に考えた言い訳だがどうやら信じてくれたみたいだ
しかし女体化する夢だと思っていたが、クロエになる夢だったのか
視界に映る長い銀髪、そして声がクロエだったことからもしかしてと思ってたけど、まさか本当にそうだとは
今日の夢は俺が生きてきた中で一番いい夢だと断言できる
「あの...それでここはどこなんでしょうか?」
「ん?ここはイーストトリニティ大陸の東の村アークイル村だ」
「イーストトリニティ...それに...アークイルだと.....ここはトリニティの世界......?ぐっ!!...ぐぁ...あぁ......!!」
俺は突如激しい頭痛に襲われる
様々な記憶が溢れるように蘇り初め、ある言葉が頭に浮かぶ
『Welcome to Trinity ,Chloe 』
あの「ERROR」だけの画面から突如現れたこの言葉──訳せばトリニティにようこそ、クロエ
そうだ、俺はあの文字を見た瞬間に気絶をしたんだ
俺は激しい頭痛の中再び自分の頬を触れる
その触れた指先には確かな感触が伝わり、触れられた頬にもその感触が伝わっている
あまりにもリアルな...いや、違う。それは俺が夢だと思い込んでしまったから、そう感じたんだ
俺は本能的に悟ってしまった、これはすごいリアルな夢なんかじゃなくて、本当の現実なのだと
肌から感じているこの空気も、いま目の前に広がっている光景も、そして口の中に広がる久しく食べてなかった誰かの美味しい手料理の味も
全部全部、何もかも全部本物...すなわち、現実なのだと俺は理解してしまった
そして理解したと同時にまるで拒絶反応を起こしたかのような頭の痛みは消え去って言った
「あの...お姉さん...大丈夫ですか?」
「...あ、あぁごめん...どこか頭を打ってたのかも...」
俺はなんとか言い訳をするが、内心は今自分の状況を整理するのでいっぱいいっぱいである
これが現実なのは理解した、だがそれでも理解しきれないことがいっぱいある
なぜ俺がクロエになっているのか
なぜ俺は始まりの村アークイルにいるのか
まったくわからない、何が起こってるんだ...
「でも、クロエちゃんだったら怪我してても魔法で治せるんじゃない?ほら、夫の時みたいに」
「そうだよ!!もしかしてお姉さんは治癒師さんなの??」
「魔法...治癒師...」
俺は再び思い出す
『Welcome to Trinity,Chloe』
という言葉を思い出す
「ウェルカム...まさか、ここは.......?」
俺はクロエの姿をしている、そしてこの世界はトリニティの世界と思われ、とどめに俺は「エクストラヒール」という魔法を使用していた
考えられる可能性はやはり異世界、またはゲームの世界に来てしまったということだ
「クロエちゃん大丈夫か?」
「まだ身体が辛いなら休んだ方がいいわよ?」
「......すいません、少し落ち着いて横になりたいです」
申し訳ないが今は1人で色々と考えたかった
俺はリナちゃんに俺が目覚めた部屋まで案内してもらい、1人にしてもらう
部屋から出る間際でリナちゃんが心配そうに「ゆっくりしてくださいね」と言ってくれた
それにサナさんもキースさんも俺のことを心配してくれてたよな
いい家族だよ、まったく
どっかの俺を捨てたご両親とは大違いだ
俺はドサりとベッドに座る
「さて、色々と試してみないとわからないことがあるぞ...」
こういう時はゲームの世界に行ってしまった小説の主人公と同じものを試してみよう
「んー...まずはあれを試すか...「メニュー」」
俺はそっと唱える
「......出たよ」
目の前に俺がゲームをしていた時と同じメニュー画面が空中に現れた
「これはタッチ式なのか?」
俺はゆっくりと手を伸ばし「ステータス」と書かれた部分を触れる
するとメニューの表示画面が変わる
「...なんじゃこりゃ?」
クロエ・女(23)
Lv.1 必要経験値 00/50
職業 聖護守Lv.2 必要経験値 30/200
HP 2000/2000
MP 6000/6000
SP 1500/1500
ジョブスキル
回復魔法回復量2倍、聖属性魔法消費MP半減
聖属性魔法効果持続時間2倍、状態異常無効、即死無効、全武器装備可能
攻撃ダメージ1.5倍、攻撃のクリティカル率上昇、被ダメージ-10%
装備
武器・無し(素手)
頭・聖女のピアス 防御力35レア度6(女性専用装備、聖職系限定装備)
MP2倍
回復魔法効果2倍
MPリジェネ 100MP/S
鎧・ただのシャツ 防御力5
腕・無し
腰・ただのスボン 防御力5
脚・無し
装飾 指輪・スペルリング
詠唱破棄
「なんか色々おかしいぞ...」
レベルは1になってるが、能力値はレベル200の時と同じだ
それに職業が治癒剣士ではなく聖護守になっている
ジョブスキルを見る限り治癒騎士の上位の職業っぽいが、ゲームの中じゃこんな職業は存在しなかった
あとはスペルリングの効果が変わっている、詠唱破棄...つまり魔法には詠唱が必要ってことか?確かにゲームの設定としては一応詠唱的なものがあった気がするな
ってことは現実世界とだから発動時間短縮=詠唱破棄となったわけだ
トリニティの世界だが、俺の知っているトリニティは少し違う感じがする
さっきキースさんがイーストトリニティ大陸とか知らない単語を言ってたりもしたしな
「つまりここから推測できることはこの世界はゲームの世界ではなく、トリニティという異世界という考えの方が正しいかもしれないな」
小説の設定であるように、「トリニティ」というゲームはトリニティという異世界を元に作り上げたゲームである、とかそういう感じな気がする
「ゲームの世界じゃないとはいっても、どう考えても強くてニューゲーム状態だよな」
レベル最大の能力を引き継いでのレベル1状態、つまりここからまたクロエの...いや、俺の能力値があがるということだ
「他にも色々試さないとな...装備とか変えられないのか?」
俺は装備欄をタッチして、セット装備のページを開く
「とりあえずはいつもの聖女装備を...おぉ...」
セット装備1に設定してある「聖女シリーズ」のところをタッチしたら一瞬で着替えが完了した
そして「聖刀・雫」が腰に差されていた
「一瞬で変わったな...この部屋に鏡は...ないな」
鏡で自分の姿を確認したい
だがまた手鏡を貸してくださいとは言えないわけだし......
「お、そういえば...」
俺は装備欄からアイテム欄にうつり、インテリアアイテムの項目をスクロールする
「トリニティ」内には自分の家を買って、部屋に好きなように家具を置いたり壁紙を変えたりなどが出来るシステムが存在するのだ
「あったあった、姿見をタッチして」
すると目の前には姿見があらわれ
その姿見の前に聖女装備を纏ったクロエが立っていた
「本当に...これが俺なのか...?」
現実とわかったことでより一層信じられなくなった俺の姿、だかやっぱり鏡に映るクロエが俺なのだ
「やべぇな、改めて見ると超美人」
しかし悲しきかな、その俺のどストライクの美人が俺自身なのだ
「んー、もうちょっと着替えを楽しむかな」
俺はセット装備を数セット試してみた
今までお洒落など興味なかったが、これほど美人な顔ならばお洒落に目覚めていただろう
「よし、次は......うん、魔法だな」
今はTシャツにジーパンという現代的でラフな格好をしている
ちなみにこれは有名洋服量販店「プニクロ」が「トリニティ」とコラボした時に手に入れた装備である
名前はプニクロTシャツとプニクロジーンズである
シャツとジーンズなのに鎧並みに防御力があるのだ、流石天下のプニクロである
そしてなんとなくお洒落っぽくしたくて赤い装飾を伊達メガネにしている
自分で言うのもなんだけど俺超美人
鏡の前で何回もポーズ取っちゃったよ
ちなみに着ていたただのシャツとただのズボンは装備アイテム欄から取り出して綺麗に畳んで置いてあります
あと未だに怖くて自分でも脱ぎ着しておりませぬ
見たいけど見るのが怖いものがね、色々見てしまいそうだったからね
とりあえずはセット装備で一瞬で変身しか行っていない、普通に着替えたり装備したりはどういう感じになるのかは後々試してみることにした
「んじゃ、魔法を試すか...って言ってもなぁ...」
どの魔法を試そうか迷うな
なんか目に見えてわかる魔法の方がいいよな
「一番わかるのは回復魔法だよなぁ...」
指先とかちょろっと切って出血したところを治す、みたいな感じでさ
「まぁ指先ぐらいなら大丈夫か...確か装備アイテムに包丁があったよな...あった、あった」
アイテム欄からネタ武器である「包丁」を召喚する
「ちょっと指先を切って...よしよし...あ、やば」
切れたのはいいが、血が滴り落ちてベッドのシーツに赤い染みを作ってしまった
「血って取れにくいんだよな...こういう時って浄化魔法の「ピュアリフィケイション」を使えば消えるとかあるあるなパターンだよな......試しにやってみるか」
俺は切った指をくわえつつ、血に染みに意識を集中させる
「...「ピュアリフィケイション」」
スッと身体から何かが抜けていく感じがする
これは「エクストラヒール」を使った時にも感じたやつ
MPを使った感覚なのかな?
俺がそう唱えると光が発生し、血の染みが綺麗に......というかシーツ全体が洗いたてのピカピカになってしまった
「成功したけど...成功しすぎだな」
血の染みを取り除ければいいやくらいに思ってたんだが効き目が良すぎたみたいだな
しかし思わぬところで魔法が使えることは証明できたぞ
「......ついでに「ヒール」。お、傷が治った」
回復魔法もバッチリ使えるな
「あとは技スキルだけど...流石に室内じゃ怖いよな」
仮にできたとしたらかなり危険なことになるから、別の機会で使っても安全な場所で使ってみるとするか
「ふぅ......そろそろ真面目に考えるとするか」
ぶっちゃけ言うと今まではちょっとした現実逃避であった
もちろんメニュー画面やステータスなどを見てテンションが上がったりもしたが、やはり異世界に来てしまったという信じがたい現実から目を背けようとしていたのは大きい
「これからどうしたものか...」
もしこの世界がトリニティの世界であるとするならば、外にはモンスターなどの危険なモンスターがいることになる
キースさんのあの古傷もモンスターに襲われからと言っていた気がする
「この世界は日本みたいな平和な世界じゃないんだよなぁ...」
つまりいえばこの世界は弱肉強食の世界なのだ
力が強いものが生き残り弱いものは力の強いものの生きる糧になる
そして危ないのはモンスターだけではない、この世界には盗賊やら殺人鬼やらが普通に存在するんだ
「やっぱりかなり危険な世界だよなぁ...」
ステータスがそのまま反映されているならば心配もないかもしれないけど......
俺は剣や刀を持ってモンスターと戦ったことはない、コントローラーと画面という媒体があって俺はやっとモンスターと戦えるのだ
「これからどうするべきか...」
何かしらの目標は決めないといけないよな、ずっとここにいるわけにもいかないし
いつかはこの家からも去り、どこかへ旅立って1人で頑張って生きていくしかないのだ
「......そういえば、」
「トリニティ」には最果ての街ターミナルはかつて異世界への扉と繋がる終着駅という設定があったよな...
そして俺が最後にプレイしていた場所はターミナルの地下の礼拝堂
「つまりこの世界のターミナルから元の世界に戻ることは可能なんじゃないか?」
可能性としてはありえなく無い
「だったらターミナルを目指すだよな...ターミナルだったらファストトラベルでいけるんじゃないか?」
俺はメニューを再び開きマップを表示する
「うわ、この村以外雲に覆われている状態だな」
「トリニティ」では一回行ったことのある場所でないとマップには表示されない
マップが表示される代わりにそこには大きな雲が覆っている使用であった
「ファストトラベルはできないか、ってこと自分の足で目指すしかないよなぁ...」
ここは東の果ての村アークイル、そしてターミナルは西の果ての街
俺は大陸横断をしないといけないわけだ
でも目指すべき場所は見つかったのはいいことだ
とりあえず最終目的地は「ターミナル」
ターミナルは終着駅って意味があるしピッタリだよな
だけどやっぱり今からすぐ行くというのはかなり危険なことだよな
モンスターのことだってあるし...
それに俺が知っている「トリニティ」とは色々と違っている所があるから、まだまだ確かめないといけないことはたくさんあるよな
だったらしばらくこの家にお世話になるべきだよな
この家でもなくていいのだが、リナちゃんサナさんキースさんの温かさに触れてしまったので出来るならここでお世話になりたいと思う
幸いお金もアイテムもゲームをプレイしていたときのままだから、宿泊代としてお金やアイテムを渡すという手段もある
当面の目標としては、この家にお世話になりながらこの世界についての知識を集め、そして1人でも生きていける術を学ぶことだな
「よし!!やることは決まったな、だったら行動に移すのみ!!」
とりあえずはさっきのことを謝って、この家に1ヶ月ほどお世話になれるか聞いてみよう!!
「おっとその前に二つのお山を......」
お読みいただきありがとうございます