ネカマな俺と回復魔法
よろしくお願いします
月一企画なので更新は遅いです
"ネカマプレイ"という言葉を知っているだろうか?
ネカマというのはネットオカマの略称である
そしてネカマプレイとはオンラインゲーム上でリアルでは男性なのにゲームでは女性でプレイすることを示す言葉だ
かく言う俺、黒江孝之もファンタジー系オープンワールドMMO「トリニティ」において、超絶美少女治癒剣士「クロエ」というキャラでネカマプレイをしている
二年前に発売されてから今なお人気を誇っている「トリニティ」。その要因はやはり、オープンワールドゲームとMMOゲームを統合させた点であるだろう
オープンワールド特有の広大なフィールドと自由度の高いゲーム性、そしてMMOゲームおなじみの不特定多数のプレイヤーとのクエスト、及びキャンペーン攻略が合わさり、これまでに類を見ないやりこみがいのあるゲームとなっている
いわゆるTPS視点と呼ばれる第三者視点で自身のプレイヤーを操るゲームである「トリニティ」
画面に移る俺が操るクロエは今日も今日とてオープンワールドの世界を歩いていた
「やっぱりクロエは綺麗だな」
1日に何度もいうその言葉、「トリニティ」を初めてはや二年、俺は飽き足らずその言葉を毎日言い続けている
絹のようにさらさらな青みがかった銀髪、切れ長の目とピンクの可愛らしい唇、美しいという言葉しか浮かんで来ないほどの綺麗な顔であった
そして彼女の身体はスラリと伸びた綺麗な足ときゅっとしまったくびれ、モデル顔負けの体型である。極めつけはその胸、胸元は大きすぎず小さ過ぎずの黄金比率を奏でた双丘を携えていた
まさに俺が理想に思うパーフェクト美少女である
俺がネカマプレイをしている理由はそこにある
俺は現実世界では存在しない自分だけの理想の美少女を創り上げたいという気持ちの元、ネカマプレイをしているのだ
俺と同じ気持ちでネカマプレイをしている人間は多いはずだ。ネカマプレイをしていなくても好みの女の子をクリエイトする人もいるだろう
俺を含め、そういう人たちは誰もが自分の好みの美少女が可愛い装備を着て、剣を振るい、魔法を使っているところを見たいと思っているはずだ
「とりあえずターミナルにファストトラベル.....おっと、なんかイベントが発生したな」
マップ画面からファストトラベルという主要の街に1発で移動できる機能を使おうと思っていた矢先にランダムで発生するイベントが発生したようだ
今回のは牛型の魔物の群れを狩るイベントだな
クロエの職業は治癒剣士、「治癒師」「剣士」それぞれの職業レベルを最大にまであげると転生可能となる上位職業の一種である
簡単に言えば戦う治癒師だ、ネット掲示板だアンデッド治癒師と言われているが、あながち間違いではないな
ダメージを受けても自身の回復魔法で回復して戦い続けることが出来るしな
このゲームには前衛職と後衛職、二つに別れるのだが治癒騎士はその二つの性質を合わせ持っている
前衛に回れば得意の剣を振るい、後衛に回ればその膨大なMPと回復力で前衛を補助することが可能という優れた職業なのである
コントローラーをポチポチと押して、ササッと出てきたモンスターを剣で切り刻んでいく
ちなみにクロエのステータスはこんな感じである
クロエ・女
Lv.200 必要経験値 ──/──
職業 治癒剣士Lv.10 必要経験値 ──/──
HP 4000/4000
MP 6000/6000
SP 3000/3000
ジョブスキル
回復魔法回復量2倍、聖属性魔法消費MP半減
聖属性魔法効果持続時間2倍、状態異常無効、即死無効、全斬撃系武器装備可能
斬撃系武器装備時のダメージ1.5倍、斬撃系攻撃のクリティカル率上昇
装備
武器・刀 熟練度2000/2000
聖刀・雫 攻撃力1600 レア度6(前衛聖職系限定装備)
SP2倍
聖属性付与
特殊スキル「一撃二斬」
特殊刀スキル「神速抜刀」
頭・聖女のピアス 防御力35レア度6(女性専用装備、聖職系限定装備)
MP2倍
回復魔法効果2倍
MPリジェネ 100MP/S
鎧・聖女の装束 防御力 1000レア度6(女性専用装備、聖職系限定装備)
HP2倍
HPリジェネ 150HP/S
闇属性被ダメージ-40%
聖属性ダメージ+50%
腕・聖女の篭手 防御力300レア度6(前衛聖職系限定装備)
闇属性被ダメージ-10%
聖属性ダメージ+30%
消費SP-50%
腰・聖女のベルト 防御力 600 レア度6(前衛聖職系限定装備)
闇属性被ダメージ-30%
聖属性ダメージ+40%
SPリジェネ 50SP/S
脚・聖女のブーツ 防御力 400 レア度6(前衛聖職系限定装備)
闇属性被ダメージ-20%
聖属性ダメージ+30%
特殊スキル「天脚」
装飾
指輪・スペルリング
魔法発動時間半減
特殊スキル「天脚」により、1SP/1歩を消費して空中へと駆け上がる
そして鞘に一度収めた聖刀・雫の柄に手をかけ、雫を装備することにより使用可能となる剣スキル「神速抜刀」の溜めモーションをかける
剣スキル「神速抜刀」は自分のSPを任意で消費して、(ダメージ)×(消費したSP×0.5)にするという超強力なスキルである
通常の「抜刀」は(ダメージ)×(消費したSP×0.1)だということを考えるとかなり凶悪な技である
溜めの時間は無防備となるので長い時間溜め続けると危険になるが、俺は現在魔物たちが手を出せない空中にいるので限界まで溜めモーションを続けることが出来る
そして空中を効果し始めたクロエは刀を抜き、抜刀術で残りすべての魔物を破壊する
刀を振ったのは1回のみであるが、くらった魔物にはすべて2回分の斬撃エフェクトが発生する、これは雫のもう一つの特殊スキル「一撃二斬」である。文字通り1回で2回分の攻撃となる、すなわち実質二倍攻撃をしていることになる
天からの一撃によりすべての魔物を退治する
「よしよし、ミッションクリアか。ってことでターミナルにファストトラベル〜」
俺は画面の右は時に現れるリザルトに目を向けつつ独り言を呟き、メニュー画面からマップを表示して、大陸東岸に位置する最果ての都市ターミナルへとファストトラベルをする
ターミナルはゲームの終盤にたどり着くことが出来る巨大な都市だ。このゲームの世界におてターミナルは異世界への扉につながる終着駅みたいな大きな謳い文句が存在するがそれはゲームを盛り上げるための一要素みたいなもので、異世界へ行くミッションなどは存在していない
毎月アップデートされて、新たなミッションやストーリーが実装されるのでは、いつか来るんじゃないかと俺は期待していたりもする
ちなみにターミナルのこのゲームにおける三大都市の一つである
もう二つは大陸の西岸にある始まりの街に近いファウスト、そして大陸中央に位置する王城や職業ギルドの本部など存在する国の中枢部としての役割を持つセンターコアという名の都市だ
本来なら大体のミッション活動などはセンターコアから始めるんだが、今回アップデートにより実装された新ミッションはターミナルの治癒師ギルドターミナル支部で受注しなければならないということなので赴いた次第である
「しかしターミナルだから魔族が多いな」
このゲームはファンタジーゲームの1面も持つので様々なファンタジー種族も存在する
このゲームのタイトル「トリニティ」も人族、獣人族、魔族、三つの種族が仲良く暮らしている三位一体の関係であることを意味している
魔族というのはエルフやドワーフなどの種族の総称であり、ゲームの設定上ターミナルは魔族が治めているということになっている
最果ての都市というイメージは確かに魔族の街っぽい感じもするしな
ちなみに俺のクロエはバリバリの人族である
『あ!クロエちゃん見つけたよ、ここで会ったのも何かの縁だし今度オフ会どうかな??』
いきなり現れたログに俺は堂々と舌打ちをする
『街まで出てくるのは久しぶりだったよね?リアルは忙しかったの?』
画面上にクロエに対面するように立つイケメン金髪のエルフ、ちなみにプレイヤー名は神楽坂天魔という、いかにも名前だ
こいつは俺が主要な都市に顔を出す度に話しかけてくるプレイヤー......もといストーカーの1人だ
俺のクロエというキャラクターはトリニティ界隈では結構有名なキャラクターなのである
見た目は美少女、このゲーム内に一つしか存在しないユニーク装備を多数所持、実力も最トップ層であるなど、色々な面でクロエは目立つのだ
本当にこういう時だけはネカマプレイをしていて嫌になる
当たり前だけど俺は男にちやほやなんかされたい訳では無いし、女になりすまして女性プレイヤーと交流を持ちたいわけでもない
ただ自分の理想の美少女を創って、プレイしたいだけなのだ
いつもはあまり街に顔を出さないで、フィールドで遊んでいるんだが、やっぱり今日ばかりは街に顔を出さなければいけなかった
『おーい、聞いてるかな?オフライン?』、
「俺の心はいつもオフラインだよ、まったく...」
俺はため息をつきながら、ゲームに接続してあったタブレットでチャットを打ち込む
『すいません、今急いでるんで』
見た目通りクールな感じで返信しないとな
ほんとは『きもい、死ね』と返信したいところなのだが、死ねはNGワードだし、何より俺の理想のクロエ像を壊したくないのだ
目の前の天魔というキャラクターをキモイとか言ってるが、俺も十分キモイな
まぁ俺は自覚している分だけマシだよな
『そっか、だったらゆっくり話したいし、今度2人でオフ会でもどうかな?』
「..................」
俺は何も言えなかった、この神楽坂天魔というアホキャラを使ってるやつは本当にアホなのか?
クロエを操っている中の人がクロエみたいな美人だと思っているのか?思っていたら、まじで気持ち悪いし、思っていなくてもそれはそれで気持ち悪い
まぁこんなの無視ってもゲーム内のクロエの評判は落ちないだろうし、問題はないか
俺は『それでは』とだけ返して、治癒師ギルド支部を目指した
『クロ!!やっぱり来たのね』
治癒師ギルドにつくと、新たに俺向けのログが現れた
俺は一瞬またかと思ったりもしたが、すぐにその考えはなくなった
『久しぶり、ナタ子』
『ちょっと、しっかりナターリアと呼んで』
『ごめんごめん、久しぶりナタ子』
画面内で『ヽ(`Д´)ノ』と絵文字を永遠に俺に送り続けてくるナタ子ことナターリア、俺の数少ないトリニティ内で交友があり、そして俺のことを男だと知っているプレイヤーの1人だ、ちなみにナタ子はリアルでも女性である
ナターリアというキャラクターは赤髪でくせ毛の混じったショートヘア、マフラーで口元を隠している癖に無駄に露出度の高い装備をしている
彼女のジョブはアサシン、盗賊から派生する上位ジョブの一つだ。ちなみにトリニティ内では裏職業と呼ばれる職業の一つである
そしてナタ子にはトリニティ内では様々な顔がある、その一つが情報屋だ。一流のアサシンプレイヤーでもあり、一流の情報屋でもあるナタ子はクロエと同じくらい有名なキャラクターの1人である
『それで、どうしてここに?』
『ここにいればクロに会えると思ってね、いつもフィールドにいるクロがここに来たってことは昨日アップデートされた新クエストを受けに来たんでしょ?』
やはりこいつは俺のことをよくわかってるな、2年間トリニティ内で俺と交遊をもっているから俺の行動がわかっているわけだ
『とりあえずクロに今回の新クエストの情報を教えてあげようと思って来たのよ』
『......対価はなに?』
『私も同行させて欲しいのよ、まだ誰も今回クエストを成功させてないみたいなのよ、だからわかるでしょ?』
なるほどな、一番にクリアすれば何らかの特別報酬が貰えると踏んでるわけか
しかしまだ誰もクリアしてないか、かなり気になるな
『とりあえず話聞いてからにする』
『OK!!今回の治癒師クエストはね、なんでもモンスターが超強力らしいのよ、ボスはもちろんボスに行くまでの道中の通常モンスターもかなり強力なんですって』
『どんなモンスター?』
『悪霊系とかアンデット系を中心としているらしいわね』
なんか僧侶系のギルドのクエストみたいだな
一応治癒師とか治癒騎士も聖職系ではあるけど、お祓いとかだったらやはり僧侶や神官といったジョブの仕事となる
『これがどうして治癒師のクエストなのかはわからないけど、治癒師の何らかのスキルが必要になってくると私は踏んでるわ』
『モンスターが強力ならレイドを組めばいけるんじゃないの?』
『今回に限ってはクエストを受注して組めるメンバーは1人だけという制約があるの。そしてフィールドに入った瞬間レイドを作ったパーティはすべてバラバラに分断されたという話よ』
なるほど、クロエみたいな治癒師騎士ならいざ知らず、攻撃がまじでヘボい治癒師が1人しかパーティが組めないとなるとクエスト攻略はかなりきついかもな
しかしレイドを分断するシステムまで働いてるとなると、今回のクエストはかなり難易度が高いかもな
『で、今回のクエストにあたしをパーティとして誘ってほしいというわけ。二つ名が「死神」のクロだったら2人でも余裕でしょ?組んでくれたらもっと詳しい情報を教えるわ』
『「死神」呼びを金輪際しないと約束してくれるなら考える』
『OK!!じゃあ交渉成立ね!死神クロエ!!』
「............全然わかってないだろ」
クロエが有名なのにはもう一つ理由があるんだ、それはクロエにつけられた二つ名だ
「女神」とかなら、考えられるのだが。治癒師なのに二つ名は「死神」である
.........まぁその理由ははっきりわかってるんだけどさ
ナタ子は話聞いてないけど、どうせ誘おうとは思っていたつもりだし、別にかまわないか
俺はクロエを操作して、ナタ子から出てくるモンスターなどの情報を聞きつつ、クエストを受注する
『本当にクエスト名が「悪魔の子供を解放しろ」だった』
『でしょ?で、場所はターミナル内にある教会の地下で合ってたでしょ?』
『うん』
確かにさっきナタ子に聞いていたクエスト情報を聞いたとおり、今回のクエストの場所はターミナル内にある協会の地下であった
クエスト内容を簡単に要約すると、悪魔崇拝の邪教徒たちが悪魔の魂を宿った赤ん坊を協会の地下に匿っているから、邪教徒たちを抹殺してその赤ん坊に巣食う悪魔の魂を浄化して救え、という内容であった
どう考えても僧侶系職業のクエストだと思うんだけど、治癒師のスキルがどこで必要になるんだろうか?
『とりあえず私とパーティを組んで協会にいきましょう』
俺は了解とログを送り返して、メニュー画面のフレンドリストからナタ子をパーティ誘う
そして俺たちは件の教会へと向かう
『それじゃヘッドセット接続するわね』
『OK、こっちも接続する』
俺は返信をしてから、ヘッドセットを接続する
「あーあー、クロ聞こえる?」
「聞こえる聞こえる、久しぶりだなナタ子」
「そうね、久しぶりのナターリアお姉さんに興奮した?」
「いや、特に何も思わないな」
いつもの自称お姉さんであるリアルナタ子さんと会話をする
俺はなんでもない感じで返してるけど、実は地味に緊張している
初めてナタ子と音声チャットを繋げた時の話だけど
ナタ子はずっと自分がネカマだと言ってから、俺は男だと思ってたわけだ。だからこそ自分も男であるとナタ子に話したのだが
蓋を開けて音声チャット繋げてみれば、女の声が聞こえてくるから初めてした時は本当に驚いたってわけだ
「よーし!じゃあ行っちゃおー!」
どうやら酔っ払ってるようだな......現在は午前の2時、こんな深夜に酔っ払ってるお姉さんとはかなり心配になる話だぞ
俺も今飲みながらやってるわけだし人のことは言えないしな
「酒飲んでるのは構わんが、途中で落ちるなよ」
「大丈夫だってー、私酔っ払ってる時の方が動きいいの知ってるでしょ?......クロ...ザザッ...久しぶり...ザザザッ...テンション上がっちゃっ...ザザ...もん」
「あ?ん?なんて言った?」
ノイズが走ってたな。接続がまだ悪かったのか後半部分がよく聞こえなかった
......接続を確認して...OK、これで大丈夫だな
「悪い、こっちの接続が悪かったみたいだ。で、後半の方なんか言ったか?」
「えっ?...まぁ大したことは言ってないから。ほら、行きましょう」
「そうか...えっと、祭壇を壊せば地下にいけるんだけっけ?」
「話を聞いた限りそうみたいね。ということでお願いね」
「了解」
教会に入った時点で、武器使用可能となっていたので教会内もフィールドとして適用されてるみたいだな
俺はクロエを操作して、祭壇に通常攻撃を仕掛ける
そして、2回ほど攻撃すると祭壇の崩れて消えるエフェクトが発生し、地下へと続く階段が発生した
「ここは私の出番ね、ほいほいっと、はい、「ナイトアイ」かけたわよ」
「サンキュー」
下位闇属性魔法「ナイトアイ」は通常松明などを使わないと見えないような暗闇などでも、昼のような明るさでまわりが見えるようになる魔法だ
アサシンは上位魔法を覚えれないが、風と土と闇の三属性の魔法を覚えることが出来る
この種類の多さは近接戦闘系の職業の中じゃ一番だ
アサシンはそれに加えて技能系のスキルも多数覚えられるから、かなり使い勝手の良い職業だ
それでも人気が高いかと言われたら、そういうわけでもない。
アサシンなどはいわゆる裏稼業を専門とする裏の職業だから、街で受注可能なフリーなクエストなどは受けることが出来ないなどの制約もあるので、アサシンとか盗賊に転職する人間は少ないのだ
「それじゃ進みましょっか」
「ういー」
そしてクロエとナターリアは地下へと続く階段を降りていく
「へー、地下はダンジョンになってるわけね」
「たぶん、今回のアップデートで実装されたんだろうな」
地下へと降りてみたら、そこには広大な地下遺跡が広がっていた
何かを崇拝してるような祭壇があったり、銅像がおいてあったり...まるでインディなジョーンズの映画みたいだな
最近のゲームは画質がとんでもなく良くなってきてるが、本物にしか見えないんだよな
ここ最近の映像技術の発展はすごいな、やっぱり
「お、早速お出ましだな」
「あれは...リッチね、聞いていたとおり序盤から強力なモンスターが出てきたわね」
リッチというのは幽霊系モンスターの上位にあたるモンスターだ、序盤に中ボスとして出てきたりもする
リッチはアストラル系モンスターであるため
物理攻撃半減などの能力を持ち、攻撃面でいえば手に持っている鎌は闇属性や即死能力がついてる、属性攻撃だけでもかなり強力だが、即死も即死で確率は低いが通常攻撃でもたまに一撃死することがあるのでかなり厄介である
.........まぁ普通でいえばだけど
リッチが持つ鎌が俺たちを襲う、ナターリアは後方回避で避けるがクロエは「神速抜刀」のモーションに入る
案の定クロエに直撃するが、クロエのダメージは減らない。
それもそのはずだ、俺が装備している防具の闇属性被ダメージの減少率を足すとちょうど-100%なので、闇属性の被ダメージはすべて無効化される
すなわち通常攻撃でも闇属性が付与されているリッチの攻撃は俺には効かないわけだ
そして、このゲームの仕様上ダメージが0の場合は相手の攻撃に当たり判定はないので「神速抜刀」がキャンセルされることは無い
「ということで安全に「神速抜刀」」
約1秒...5SP溜めたので2.5倍のダメージとなる
ちなみに聖刀・雫の効果で聖属性攻撃となるので、闇属性のリッチに対して2倍のダメージになり、防具の能力で聖属性ダメージ+150%なので2.5倍も追加され、「一撃二斬」で2倍となり、最後に斬撃系武器の攻撃は1.5倍となるので
総じて......あ、クリティカル率も発生したからもう2倍追加だな
というわけで総じて
2.5×2×2.5×2×1.5×2=75倍のダメージとなったわけだ
改めて正確に計算してみると通常攻撃でもえげつないダメージだな
無論攻撃をくらったリッチは光の粒となって消えていく
「相変わらず闇属性に対してえげつない攻撃力ね」
「そうだな、今回のクエストは俺のためにあるようなものかもな」
後方回避していたナターリアがこっちに来ながら話しかけてける
実際今回のクエストは俺のためにあるようなものだ
だって今回のクエストで出てくるモンスター、全部闇属性モンスターなのだから
ありがたいことにモンスターが強力になればなるほど通常攻撃などにも自身の属性が付与される傾向にあるので、このフィールドで出てくる全てのモンスターは俺にダメージを通せないわけだ
笑いしかこみ上げてこない話である
「ほかのプレイヤーが可哀想な話よね、クロはまったく苦戦をせずにクリアできるんだから」
「俺は装備集めとか転職とかで苦労したんだから、こういう時に甘い汁が吸えないと頑張ってきた意味が無いんだよ。それに苦戦せずにクリアできるかどうかはまだわからない話だろ」
「まっ、それもそうね。とりあえずモンスターは全部クロに任せるから頑張ってね」
「ほいほい、ナタ子も俺のサポートとかしっかり頼んだぞ」
「了解〜」
というわけで、クロエとナタ子がサクサクとフィールドを攻略していく
リッチやらデミリッチ、アンデッドドラゴン、ヘルゴーストなど、悪霊系アンデット系の準ボス級クラスのモンスターがわんさか出てくる
出てくる度にナタ子は退避して、俺が全部タゲ取りを行い、相手の攻撃に無視を決めての「神速抜刀」の超倍率攻撃でモンスターを屠っていく
「お、分岐点だな」
フィールドを進んでいくと、二股に別れた道に辿り着く
こういう時にナタ子がいるんだな
「ほいほい、「サーチアイ」発動〜」
アサシンのアクティブスキルの一つである「サーチアイ」は足跡などの様々な痕跡を可視化する能力だ
「お、右の方に足跡が続いてるから右の方ね」
「ってことは、左はパニックルームというわけか」
「集めた情報によるとそうみたいね〜」
パニックルームというのは、モンスターが大量に出てきて全部倒しきるまで脱出ができなくなるトラップ部屋のことだ
やられら事は無いが、時間の無駄だし疲れるからなるべく避けたかったんだ
「やっぱりこういう時頼りになるな」
「当たり前よ、トリニティ1のトレジャーハンターって呼ばれてるもの」
「だったらトレジャーハンターギルドに加入しろ」
俺たちにはこんな軽口が叩けるくらい余裕があった
まぁ半分作業ゲーみたいな感じになりつつもあるから、おしゃべりでもして気を紛らわせてないと飽きが来そうなわけで──
「思ったけどクロは最近どこ行ってたの?」
「ん?最近?黒の森と灼熱の砂漠を行き来してたな」
「その二つってことは運搬系のクエストだっけ?」
「そうそう、雫の強化にかなり大金使ったから金を稼ぐ必要があったからな」
ちなみにクエスト内容は黒の森にある湖の水を組んできて、灼熱の砂漠に住む民族に水を届けるというクエストだ
途中でモンスターなどにダメージを食らうと水がこぼれてはじめからやり直しという地味にきついクエストだ
俺は「天脚」で空から歩くというズル技でいつもクリアしている
毎回わざわざ黒の森の水である必要はないんじゃないかと思うが、そういうクエストだから仕方ない
ゲームってそんなもんだよな
「インしてるなら街に来てチャット送ってくれてもいいじゃない」
「めんどくさいから嫌だ。知ってるだろ?俺が街に出ると絡まれるってことを」
「そうねぇ、今でも掲示板じゃクロエ女神派と死神派で対立してるわよ」
「えっ、あれまだやってたのかよ...」
「まぁどっちもいつも最終的にはクロエちゃん可愛い!!でおさまってるけどねぇ...クロが男だって知ったらみんなどう反応するかな」
「やめろ、俺がこのゲームにいられなくなるだろうが」
そんなことしたら、ゲームにインしている間はずっと襲撃され続ける未来しか見えない
「でも、まだ男プレイヤーとかに絡まれるんでしょ?私はそういうのが嫌だからネカマだって嘘ついたりもするし」
「まぁそうなんだけどなぁ、なんつーか、クロエのイメージを壊したくないっていうか」
「でたでた、クロの変わった性格、どんだけクロエのこと好きなのよ」
「世界一愛してるという自信はあるな。ってか、お前チャット送れ言ったけど最近インしてなかったろ?」
この話題をしてると不毛な会話となるのはいつものことなので俺は話題を変えることにした
「あー...うん、あはは、ちょっと忙しくてね」
「そうか、お互い色々大変なんだな」
「クロは性格いいよねぇ、こういう時興味本位で聞いて来ないから」
「まぁな、ナタ子が聞かれたくないかもしれないからな。まっ、お前が話したいなら別だが」
「うん、じゃあ話したいから聞いて」
「へいへい」
ナタ子が1週間以上インしてない時は大抵プライベートで何かがあった時だ
仕事先の先輩のパワハラがウザいとか、そんな感じだ
「それで聞いてね、前に話した絡んでくる同期の男の話したじゃない?」
「あぁなんだっけ、高身長イケメンの?」
「そうそう、そのむかつく男がね?なんか私と付き合ってるとかいうくだらない嘘を会社で流し始めたのよ。信じられる?」
「そういうやつって案外いるもんなんだな」
「ほんとよ、まぁそれくらいだったらくだらない嘘ついてんじゃないわよ!!ってバシンとビンタ1発なんだけどね」
なかなか豪快なことをしますね姉さんは
「残念ながらそれじゃすまなかったのよねぇ、その絡んでくる男が私のパワハラ上司のお気に入りでねぇ」
「あー...なんか見えてきたな」
「そうそう、最悪コンボもいいところよ。元から私のことが気に食わなかったみたいなんだけど、今回の件でさらに気に食わなくなっちゃったみたいでねぇ、嫌がらせがほんとに最悪だったのよ」
ちなみにパワハラ上司というのは会社のお局のことで、何かとナタ子に嫌味を言ったりなどの嫌がらせをしてくる女上司のことだ
ナタ子は会社で結構苦労をしているみたいだな
「うん、それでね昨日悩んだ挙句会社を辞めてきたの」
「......は?」
「うん、だから全部嫌になって会社を辞めてきたの」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
ドン!!と壁を叩かれる音がする
やばいお隣さんがお怒りのようだ、深夜3時に叫び声はやばかったな
「1回落ち着こう......会社辞めたの?」
「うん、辞めちゃった。あそこで働きたくなかったから」
「お前なぁ......」
今回も悩みを聞いてある程度ガス抜きさせてはい、おしまいだと思っていたが...
まさかそんな大きな話題が出てくるとは...
「いいのよん別に、どっちみちいつか辞めてただろうし、にゃはは〜」
「相変わらず思い切りのいいやつだよ、まったく...」
「でしょでしょ?......あ、ストップ、その先の空間何かあるわね」
突然ナタ子のストップがかかったので、クロエの動きを停止させる
色々ときになるはなしだが、こっちから色々と聞くとナタ子の機嫌が悪くなるかもしれないから、いつか話してくれるのを待つとするか...というか、かなりできあがってるな
1週間ゲームにインしてなかったのも、色々と悩んでたからだろうしな
とりあえず今は目の前のクエストに集中するか
アサシンのパッシブスキルには画面左の縮小マップに敵の存在がマークされる能力が存在するから、そこから判断したのだろう
「それじゃ私がチョロッと確認してくるわ。たぶんここまで来たのは私たちが始めてだから、警戒しといた方が良さそうだし」
「そうだな、んじゃ任せたよ」
ナターリアの姿が段々と希薄になり、かろうじて見えるくらいに透明になる
ナタ子が使ったのは中位闇属性魔法「ハイド」だ。簡単に言えば暗いところで使うと姿が消える魔法だ
そしてアサシンのパッシブスキル「隠密」があるので、ナタ子が本気でスニーキングすれば、下手のことさえしなければ相手から気づかれることはない
待つこと5分──
「ほいほい、しっかりマーキングしてきたわよ。どうやらこの先の空間にいるのが邪教徒たちみたいね。何人かキルしてきたけど、あとはバレそうだったからやめてきたわ。もう一つ奥の部屋があったんだけど、そこはたぶん全員倒さないといけないみたいね」
このゲームでは人間も敵となるのだが、ミッションの中には人間の敵に発見されずにすべて倒すと追加の報酬が得られることがあるから、ナタ子はそれを予見にしてのことだろう
「相手は人間か、だったら俺の出番だな」
「そうね、私は巻き込みくらいたくないからここで待機してるから終わったら教えてちょうだい」
「うい〜」
俺はカチャカチャとクロエを操作して、件のフィールドへと入っていく
「確かに邪教徒だな...」
始末する前にちょっとどんなものかと見てみたら、黒い修道服を来てフードをかぶった奴らが巨大な祭壇に向かって儀式をしていた
「いかにもって感じだな...早く終わらせるか...」
俺はメニュー画面を開いて装備を変更する
聖刀・雫から魔剣・死神の脊椎へと変更する
もう一度言おう、魔剣・死神の脊椎だ
クロエが手に持っているのは1本の長い骨、そう脊椎だ
ちなみに脊椎のステータスはこんな感じだ
魔剣・死神の脊椎 攻撃力1 レア度6
特殊スキル「死神化」
特殊スキル「聖魔反転」
死神の脊椎とはいってもやはりただの脊椎だ、攻撃力は無いに等しい
だがその付与される効果は絶大である
まずは「死神化」、これは装備者をアストラルボディ化させるパッシブスキルである
アストラルボディになると物理攻撃はすべて無効化される
そしてもう一つの「聖魔反転」は闇属性と聖属性対象の効果が反転するという能力だ
俺の装備でいえば闇属性被ダメージが聖属性被ダメージに変わると言ったところだ
しかしこのスキルにはとんでもない仕様があった
なんと回復魔法にもこの能力が適用されるのだ。すなわち、俺が回復魔法を使うと回復される代わりに回復量の分だけダメージをくらうというものに反転させられるのだ
最初はバグかと思って運営に報告してみたんだが、それはそれで面白いですねと返されてそのままになったのだ
俺としては嬉しいんだが...運営よ、それでいいのか
そして、これがクロエの二つ名「死神」の由縁である
なんと「死神化」と「聖魔反転」のスキルはクロエのビジュアルも変化させるのだ
白を基調とした全ての防具が黒く染まり上がり、銀髪までもが漆黒に染まっていく
よし、最後を締めに装飾装備をスペルリングから呪われた邪眼に変えて......
クロエの白目が黒く染まり、黒目は紅く染まりあがっていく
はい、これで死神クロエ完成ですね
アストラルボディとなったのがいいアクセントとなっております
ちなみに呪われた邪眼は見た目変更のために装備した訳では無い
呪われた邪眼に付与されるスキルは「回復無効化」だ
すなわち自分を回復魔法の対象から外すという能力だ。
本当だったらゴミ能力もいいところなんだが、現在の俺の回復魔法はHPを奪う魔法となってるから、俺にとっては万々歳のスキルである。
この能力がないと回復魔法の対象に自分も入っちゃうから自爆することになるんだよね
魔法を跳ね返すスキルとか存在するんだけどねぇ、回復魔法を跳ね返えせないからね。俺の回復魔法は回避不可避の攻撃となるわけだ
例えば体力を全回復させる上位聖属性魔法「パーフェクトヒール」なんか使えば、相手は即死するというわけだ
回復魔法は人間相手にしか使えないから対人戦の時のみしか使えないから限定されるといえば限定されるんだが、どう考えてもゲームバランスを崩壊させる能力だ
まぁ死神の脊椎はユニーク武器だから、俺しか持っていないのが救いだな
「死神化」も「聖魔反転」も死神の脊椎を持ってないと使えないスキルだし
まぁそのせいで俺のクロエに「死神」なんていう悲しい二つ名がついてしまったんだけどな
「よしよし、それじゃ終わらせますか......「フィールドハイヒール」発動〜」
上位聖属性魔法「フィールドハイヒール」
フィールド全体の人間に対してハイヒールをかける能力だ、超大型モンスターとのレイド戦などに重用される戦略級回復魔法の一つだ
消費MPは(フィールドに存在する人間の数)×(ハイヒール1回分の消費MP)となるから、一回使用すれば結構な消費量になることぐらいがネックかもしれないな
ちなみに回復量は通常のハイヒールより、フィールドハイヒールが適用される人間が多いほど回復量が増えるボーナスが存在する
今回でいえばフィールド全体の人間にハイヒールの回復分より少し多いのダメージを与えることになる
しかも治癒騎士のジョブスキルにより回復量は2倍...反転されてダメージ量は2倍となる
治癒騎士のジョブレベルマックスの俺の「フィールドハイヒール」はレベルマックスの俺でさえ7割くらいHPを回復するのだからレベル140ほどの邪教徒なんて一撃で沈むだろう
そして魔法のエフェクトが終わると、邪教徒全員が倒れていた
「やっぱりこの能力は対人戦最強だよな」
俺は装備を元に戻しながらしみじみと呟いた
音もなく地面にエフェクトが発生したと思ったら気づけばHP0になってるんだもんな、えげつないことこの上ない
最初これをやった時は本当にびっくりしたよな、変身目的でおふざけで装備してて
ナタ子を含めて数人でクエスト言った時に「フィールドハイヒール」使ったら、俺も含めて全員死んでたからな
最初はなんなんだと思ったんが、ナタ子と色々検証してやっと回復魔法がダメージに変換されるということに気づけたわけだ
そして俺は俺の死の回復魔法の効果を受けない一つ前のフィールドにいるナタ子の元へ戻る
このゲームはオープンワールドゲームといっても区分けされていて、その区分けされたフィールドが繋がってオープンワールドとなっているのだ
区分けされてなかったら「フィールドハイヒール」なんてこの世界の全部に影響することになるからな
「はい、終わったぞ〜」
「あ、うん、声は聞こえてからフィールドハイヒール使ったんだね」
ヘッドセット繋げてあるから別フィールドにいても音声は繋がってるのを忘れてたな
ナタ子基本戦闘とか偵察してる時は掛け声以外は無口だからな、ヘッドセットの存在が抜けてたな
「それで、奥の部屋行けそうだった?」
「あぁ、扉の前にあった魔法陣が消え去ったから、鍵は解除されたみたいだな」
「ってことは......ボスかな?」
「たぶんそうだろうな、しかし今回出てきたモンスターを考えると...」
「かなり厄介よね、徘徊してるモンスター準ボス級、ボス級だったから...二人でどうにかなるかな?」
「相手が闇属性なら、俺のワイサイドゲームになるな。闇属性じゃなくてもクロエの回復魔法さえあれば、大抵は大丈夫だし。ヘイト管理とかサポートは全部ナタ子に一括することになるけど」
「それは全然問題ないわよ、ボスの方はクロに任せるわ」
「OK、ボスの可能性が高いし扉前で俺からの支援魔法かけるとするか」
「ほいほい〜」
そして邪教徒の死体が溢れる祭壇を通り、扉の前にいく
「んじゃ、「ハイリジェネレーション」「ホーリープロテクション」「ポイズンドール」「サクリファイス」をかけてっと」
ちなみにこの4つの魔法効果は......
中位聖属性魔法 ハイリジェネレーション
消費MP150
HPリジェネ 100HP/S
効果時間90秒リキャストタイム150秒
上位聖属性魔法 ホーリープロテクション
消費MP300
被ダメージ-30%
効果時間180秒リキャストタイム 360秒
中位聖属性魔法 ポイズンドール
消費MP200
状態異常を一回肩代わりしてくれる
効果時間 120秒 リキャストタイム 180秒
上位聖属性魔法 サクリファイス
消費MP1000
死亡状態から1度だけ復活
効果時間30秒 リキャストタイム 540秒
さらに俺のジョブスキルで効果時間は全て二倍となるわけだ
この4つをしときゃ、初見殺しされる可能性は格段と下がるわけだ
「んじゃ行くぞ」
「そうね、効果時間がもったいないから急ぎましょ」
俺はMPポーションを連打してMP回復させてから扉の近くでアクションボタンを押す
するとムービーが始まる、ムービーの時間は効果時間に含まれないからゆっくりムービーを眺めていよう
その聖堂には黒いモヤみたいな瘴気が流れていた
聖堂内に響き渡る赤ん坊の鳴き声、その赤ん坊は聖堂奥にある台座のゆりかごの上で泣いていた
とりあえず今の感想は......
「「これなんてホラゲ?」」
俺とナタ子の声が一致する
え、これってファンタジーゲームだよね?......超怖いんだけど...
俺たちの感想はよそに、ムービーは進行し続ける
俺たちと台座の間に現れる白いドレスの銀髪の女性、赤ん坊を眺めているのかその表情は見えない
『あ、あ、あ、...あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
突如苦しみ始め甲高い悲鳴が鳴り響き、白いドレスは黒く染まっていく
「まるでクロエみたいね」
「やめてくれ」
確かに白から黒への変身は俺のクロエと同じだけど、あんなヤバイ感じじゃないぞ
『あぁ...殺して...殺してぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
陶器のような白かった肌は砂のようにボロボロに崩れ落ち、骸骨の顔が画面いっぱいに映り、バトルフェイズへと移っていく
「来たな、名前は...『邪神の花嫁』か」
「たぶん途中で変身するパターンよね?」
「そうだなぁ」
こういう人型のボスは第二形態に変身するパターンがありがちだ
今回もそのパターンだろう、大抵は巨大モンスターに変わるんだけど
的が大きくなってやりやすくなるか、とんでもなく強くなってるかのどちらかだ...前者であることを願いたい
「初太刀の初見殺しはなさそうだな...あとはハメ技さえ来なきゃいいんだが」
「だったらまずは私が相手してくるから支援お願い」
「あぁ任せた!!」
アサシンの方が基礎アジリティとかが高いから、ナターリアの回避などの能力はクロエの治癒騎士より全然高いし、後方支援はクロエのスキルじゃないと出来ないから、ナタ子の案が最善だ
「んー...ほいほいっと、そりゃそりゃ」
酔いが回ってくると戦闘中饒舌になるナタ子の軽快な掛け声を聞きながら、様子を見守る
ナターリアが使っている武器は爪だ、いかにもアサシンっぽい武器だ
爪はネタ武器として扱われることが多いんだが、普通に攻撃力はほかの武器と比べて大差がないので使っていて特に問題は無い
ビジュアル的な面で考えれば、武器を装備するモーションが、手にはめてる篭手みたいなものから爪が出てくるというモーションなのでめちゃめちゃかっこいいんだ
爪が斬撃系武器として設定されていたならば、俺もクロエの武器スタメンに入っていただろう
そしてボスが持っている武器は骨が原型である蛇腹剣みたいな武器だな、まるで俺がさっき使った死神の脊椎みたいだ
相手との距離によって広範囲攻撃のムチと近接攻撃の剣の二つのモードを使い分けているな
それと炎の魔法を使ってるな、こっちも何回か飛んできている。火炎放射の広範囲魔法と追尾型の火球の魔法か
黒炎なのを見ているあたり、火属性に加えて闇属性がありそうだな
この場合火属性も含まれてるからは闇属性被ダメージ-100%がついていても、ダメージをくらうことになる、せいぜい闇属性の付与ダメージが軽減されるくらいだ
「クロ、相手の動きはだいたい把握したわよ」
「流石だな、それでどうするんだ?」
「剣攻撃はパリィができるから、パリィしたら私が一回下がるからクロがコンボを決めて、それで相手がのけぞったら私が行くから」
「OK、合図頼む」
ナタ子は器用に喋りながらも相手の攻撃を避け、たまに反撃をしつつタイミングを伺っていた
「今!!お願い!!」
「あいよ!!」
俺はクロエを前方向へステップをさせて一気に接近し、スキルコンボを決めていく
まずは下位刀スキル「蛇突」刀スキル唯一の突き攻撃スキルだ。
蛇のようにジグザグに突き攻撃をして間合いをさらに詰めるついでにダメージを与える
そして次は中位刀スキル「飛龍」、ジャンプをしながら敵を斬りあげるスキルである
さらにコンボを繋げ、中位刀スキル「崩龍」を発動する。崩龍は飛龍とセットのスキル技で空中にいる状態から降下して相手を叩き切るスキルである
最後に叩きつけた直後のキャンセルポイントタイミングに合わせて、上位刀スキル「朧」を発動させる
少し溜めがあるが、崩龍には一時的にスタンさせる効果があるので余裕はある
朧の高速二十連撃が邪神の花嫁を襲う
「のけぞりきたぞ!!頼んだ!!」
「うん!!」
のけぞったのは大量のダメージが入り、大幅に敵のHPが削られた証拠だ
俺は後方回避を利用して後ろに下がり、ナタ子と場所をチェンジする
「おりゃおりゃおりゃー!!」
アサシン特有の高速攻撃が邪神の花嫁を襲う
さっきの俺の合計コンボ数は30ほどだったが、既にナタ子のコンボ数は50ほどに上っていた
「紫樹ちゃんトドメの〜「パイルバンカー」!!」
上位爪スキル「パイルバンカー」を発動させる
パイルバンカーという巨大な杭を撃つ架空の武器を模したその一撃は邪神の花嫁を穿つ
.........本名言ってたのはスルーしておこう、ナタ子の名前ってシキって言うんだとか思ってないからね?ほんとだよ?
「「おっ?」」
俺とシ...ナタ子の声がかぶる
邪神の花嫁が顔を抑えて悶え苦しみはじめる
そして黒い瘴気を放ち花嫁は自らの身体を包こむ、瘴気を徐々に収束し繭となる
「何が来ると思う?」
「巨大化に一票」
「ん〜...私はドラゴンね」
さてさて、何が来るやら
黒い繭はまるで心臓のように脈を打ち、ドクンドクンと波動を放つ
「出てくる前にもう一度魔法をかけておくな」
「うん、ありがと」
ボス戦前に使った支援魔法と同じ四つの魔法をナタ子と自分にかける
「「来る」」
また俺とナタ子の声が被る
脈を打つスピードが急に早くなり、繭にヒビが生え始める
そしてその時が来る
繭が爆発を起こし、黒い瘴気をあたり一面に撒き散らす
「気をつけろよナタ子!!」
「ナターリアって言ってるでしょ!!」
黒煙のようにフィールドに漂った瘴気が視界を遮る
「っ!!飛んでクロ!!」
「へ?...のわっ!?」
急に巨大な腕が瘴気の中から現れた
ナタ子の声がなかったらくらってたところだったな...
こういう動体視力とか反射神経はナタ子の方が俺より全然上だな、ちょっと悔しいぞ
そして振るわれた巨腕の風圧により瘴気が晴れる
「巨大化だったな、後でフルポーションおごれよ」
「それはさっき助けたのでチャラだから」
「確かにな」
画面に映る、そいつを見つめながら俺はナタ子に返す
繭があった位置には上半身だけになった巨大な骸骨、頭にはウェディングヴェールをつけてるかは死神の花嫁に間違いない
『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
骸骨は巨大な叫びをあげる
そして地面からいくつもの黒い穴が現れた、そこから大剣を担ぎ鎧をまとった骸骨が数体現れる
「うわ、ボーンジェネラルが何体も来たわね」
「どうするナタ子?」
「私が邪魔な兵隊ドクロと相手するから、クロがボスお願い」
「それが妥当だな、広範囲攻撃の時は教えるから気をつけろよ」
俺はそう言いながらクロエを操作してボスに接近していく
巨大化した花嫁はいわゆる場所を動かないタイプのボスとなっていた
やりやすいにはやりやすいんだが、多分一撃一撃の攻撃が広範囲でかつ致命傷になる可能性になる場合が高そうだから、ナタ子のことを気づかないながら戦わないとな
ターゲットマークが両腕にしか出ないところを見ると、両腕を破壊→顔を攻撃できるというパターンなのだろう
身体の方にも攻撃はできるが大したダメージが与えられなかったのでそういうことなのだろう
両腕は常に持ち上がった状態で叩きつけなどの攻撃を避けた後にこちらが攻撃などをするボス戦の典型パターンっぽいな
俺はその典型パターンにハマるつもりはないけどな
クロエを操作し、特殊スキル「天脚」で空を走らせる
クロエはまるで透明な階段を駆け上がっていくように巨人の右腕へと接近をする
空中を走るはできるが立っているということは出来ないので空中でうまくスキルコンボを決めていくしかない
「蛇突」、「飛龍」とお決まりのコンボを決めいていく
「飛龍」を使ったことによりさらに飛翔したクロエは「神速抜刀」の溜めモーションにはいる
落下時間を利用した1、2秒間溜めた分のダメージが右手を襲う
そしてそこからは「蛇突」「飛龍」「神速抜刀」の無限ループを繰り返す
突き、斬り上げ、抜刀、突き、斬り上げ、抜刀...
「ねぇ、ちょっとクロエが気持ち悪いGIFみたいになってるんだけど」
「うん、俺も思ったわ......ん?なんか来るな...」
突如俺が知らない巨人の攻撃モーションが始まる
光が巨人の口元に収縮していく、絶対やばいやつだ
「くるぞ!!」
「わかってるわよ!!」
ビュゥン!!...チュドーン!!
レーザーが通っていったところが地面に断裂を作るかのように爆発を起こす
「うわ、あれくらったら一撃で沈んでもおかしくないわね」
「というかあの速度の攻撃を避けたナタ子がすげぇよ」
「あれくらい私だったら余裕よん」
本気で余裕とか言ってるけど、あんなジャストで回避できるやつはそうそういないだろ...
やっぱりナタ子の方が俺より全然上手いな
「あれを何度も撃たれたらやばいよな、ちゃっちゃっと決めるか...ってことで「朧」!!「椿」!!そして...「夢幻」!!」
空中でSPフルポーションを使ってから
上位刀スキルのフルコースをお見舞いする
「朧」の二十連撃からはじまり、「椿」の十二連撃につなぐ
そして最後に奥義スキルにあたる上位刀スキル「夢幻」のゲームバランスを崩したと言われるプレイヤーのレベル分の連撃という最凶の連撃をかます
すなわち二百連撃というわけのわからないとんでも技をくらわせ右腕を破壊する
『おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
右腕を破壊されて苦しむ巨人
「クロ!!骸骨たちは終わった!!」
「まじか、なぁ左腕の破壊任せちゃっていい?俺"溜め"に入るから」
「あ、もしかして久しぶりにあれやっちゃう感じ?」
「そうそう、あれやっちゃう感じ」
「OK!!絶対成功させなさいよ!!」
「任せな!!」
巨人の攻撃パターンは巨腕を使った薙ぎ払いと振り下ろし、あとは火炎放射とごくたまに出る殺戮ビームの四つしかない
ありがたいことに第二形態で無駄にでかくなって弱くなったパターンだな
俺は攻撃がくわらないであろう巨人の右側にクロエを移動させ、「神速抜刀」の溜めモーションに入る
ヘイトは完全に攻撃しまくっているナタ子に向いてるから俺に向くことは多分ないだろう
SPバーが減っては増え、減っては増えを繰り返す
これは失敗とかしてるのではなく、クロエの装備の一つにSPリジェネがついてるので消費しては回復をしてを繰り返しているのだ
「神速抜刀」の溜め中のSP消費速度は加速していくので、長時間溜め続ければいつかリジェネが追いつけない速度でSPが消費されることになる
「そりゃそりゃ!!危なっ!おりゃおりゃー!」
ナタ子が左腕に攻撃をしまくっている声が聞こえてくる
俺はただボタンを押し続け、タイミングを待つのみ
「こっちに攻撃しないでくれよ...」
溜め中はスーパーアーマー状態でもないのでくらえば技がキャンセルされることになる
既に結構溜めている、だからキャンセルなんてされたくない
そして気づけばSP消費速度がSPリジェネを上回っていた
徐々にだがSPバーの黒い部分が大きくなっている
相対的速度的に30SP/Sくらいの消費速度だ
あ、やばいさらに早くなった
もちろんSPゲージがゼロになったら強制発動だ
ナタ子がそれまでに左腕を破壊してくれないとクロエの攻撃は空を斬ることになる
結構苦戦してるっぽいな、頭が降りてくるだろう予測地点にいるんじゃなくて普通に攻撃が通る身体の地点にいればよかったかも......
「これでどうだ、「パイルバンカー」!!」
『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
「「来た!!」」
またしても俺とナタ子の声が被る
巨人が悶え苦しみ頭部が下降してくる
俺のが予想した地点とほぼ一緒だ、これなら当たる
「決めちゃいなさい!!」
「わかってるよ、「神速抜刀」からの......「夢幻」!!」
クロエが刀を抜く瞬間のキャンセルポイントを見極め、その瞬間に奥義「夢幻」を発動させる
すると何が起こるだろうか?
なんと「神速抜刀」の倍率攻撃が引き継がれたまま「夢幻」が発動されるのです!!
すなわち「神速抜刀」が二百連撃決められることになる!!
既に感覚で5000SPほど消費されている状態だから「神速抜刀」一撃で2500倍
そしてそれが二百連撃だから2500×200=500000倍となっている
さらにそこから通常スキルの倍率が加わり、最低でも2000000倍のダメージが与えられている
倍率抜きの1倍のダメージが簡単な数字にすると2000くらいだから
軽く200億ほどのダメージかな、これでも最低数値を予測しているからもっとすごいだろうけど
こんなダメージボスであろうとなかろうとくらったら一撃だろう
ほら、その証拠にボスも───
『ぐおっ!!ぐおぉ.........ぐぉぉぉぉぉ!!』
二百連撃が終わるった直後にムービーが始まり、巨人は叫びをあげ瘴気を撒き散らし、崩れ落ちていく
「勝った?」
「勝ったんじゃね?」
特に何も起こらないな...OK、終わったみたいだな
「いやぁ、クロのあれはやっぱりやばいわね」
「だてにトリニティ最凶の一撃って言われてないからな」
某動画サイトでも一時期有名になったくらいだからな
「さーて、これであとは赤ちゃんかしらね?」
「そうだな、赤ん坊のところに行けっていう表示が出てるしそうだろうな」
「ふぁ〜...今何時...?げっ、もう4時じゃない」
「結構長かったからな、そろそろ終わりだろうしチャッチャと済ませるか」
「賛成〜」
クロエとナターリアが階段を上がり、赤ん坊がいる台座まで向かう
「ん?赤ん坊を治せって書いてあるな」
「見て見て赤ちゃんの上にHPゲージがある」
ナタ子が言った通り赤ん坊の上には赤線で示されるHPゲージがあった
しかし大半が黒くなっている、ということは瀕死状態ということだ
「赤ちゃんは取り憑かれてないのかな?」
「んー...話の流れ的にさっき倒したボスが赤ちゃんについてた悪魔ってことじゃないのか?邪神の花嫁とか言ってたしそれっぽいだろ?」
「それで悪魔から解放されたけど、赤ちゃんの体力はかなり限界に来てた...ってことね、治すために治癒師が必要だから治癒師のクエストだったのかしら?なんかおざなりじゃない?」
「確かにそうかもな、トリニティもそろそろネタ切れなのかもなぁ...」
約2年間俺たちプレイヤーを飽きさせず運営し続けていたこと事態がすごい話なので、ここらでマンネリ化してしまっても仕方のない話だ
「ねぇねぇ、ちょっと面白いこと思いついちゃっんだけど?」
「え?いきなりどうした?」
なんかワクワクと言った感じでナタ子が俺に話しかけてくる
この状況で面白いことってろくな事じゃない気がするんだが
「この赤ん坊さ、回復できるってことはさ、クロエを死神化させて回復させたらどうなるかな」
「お前なぁ......」
こいつは何を言ってるんだ、本当に...
それは──
「それは超面白そうだな!!」
「でしょ!!」
すいません僕もこういう悪ノリ大好きなんです
通常のルートにのらない、バグ技裏技を発見するのが大好きな好奇心旺盛な紳士なのですよ、僕は
「ってことで早速早速そうび変更〜」
この時の俺はまったく知らなかった、きっと酔いの勢いというのもあったのだろう
「よーし、じゃあやっちゃいますか!赤ちゃん倒しちゃうことになるけど全然いいよな!」
「だいじょぶ、だいじょぶ!!ミスったならもう一回やり直せばいいし、どうせ私は無職だから明日も仕事ないし!!」
「俺も明日は休みだからミスっても続けられな!!」
まさかこの時の悪ノリがあんな結果を生み出すなんて──
「にゃははははは!!やれ、やれー!」
「よっしゃ、景気よく「パーフェクトヒール」!!」
回復魔法の光が黒い輝きを放つ
赤ん坊のライフは通常の回復するところだが、今回は聖魔反転の効果で体力が削られる
赤ん坊が体力が徐々に徐々にゼロへと帰着していく
「え、ちょっ!?なにこれ!?え、きゃぁぁ!!!...ザザ......ザザザザザザ...」
「おい、ナタ子?...ったく通信が切断されてる」
画面にはDisconnectの文字
クモかゴキブリでも出てびっくりしてコード抜いちまったのか?
ある意味あるあるなハプニングではあるな、初めてそんな人見たけど
そして気づけば赤ん坊のライフがゼロになっていた
「......ん?動かない?フリーズした?...あっちゃー...完全にやっちゃいけないことをしてバグったな」
コントロールを操作するがまったく反応がない
「一回電源落とすしかないか...」
俺はため息をつきつつ、パソコンの主電源ボタンを長押しする
しかしなかなか画面が消えない
その代わりに──
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ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!! ERROR!!
画面にびっしりと映る「ERROR」の文字
画面の光はどんどん、どんどん強くなっていく
「くっ──なんだよ、これ!!ポリゴ〇ショックか!?」
ちょっとふざけたことを言ってるが、明らかに頭はパニック状態であった
俺はついに光が強すぎて目を開けられなくなる
そして一瞬だけ目を閉じると「ERROR」の代わりにこう書かれていた
『Welcom to Trinity ,Chloe』
俺は意識を失った──
お読みいただきありがとうございます