01 発露
1章から01、02、とカウントしようかと思い立ちました。
晴れ渡る空!心地よい風!
辺りに転がる瓦礫……
全然清々しくねぇーーーー!!
この辺りに広がる大量の瓦礫。原因は魔物の出現による爆発だ。
まぁもっとも、その魔物なら俺の一撃で死んでしまっまったのだが。
俺の名前は凪楽煉。
母親はマオウというクソ野郎に殺され、父は祖国のマオウ討伐作戦の最中訪れた少年によって殺された。
多分その少年がマオウであったのだろう。
その少年により、部隊は全滅。マオウに一矢報いる等という愚かな目的でこっそり部隊に忍び込んでいた俺は命からがら逃げ出した。
俺は自分の無力さを悔いた。
だから、今まで以上に感覚の研ぎすませ方を体得し、ある魔法も手にいれたのだ。
俺は魔法のことはよく解らないので、下位の魔法なのか上位の魔法なのかすらよく解らないが、まぁ問題ないしいいだろうと割り切っている。
魔物とかの事は行く先々で人々に聞いた。
結構役に立つ情報が多かった。そこは現場で生きる者達の知恵、といったものなのだろう。
いやでも実は何時の間にか魔法を体得してたんだけどね、なんでだろ。
「そういえば煉はさ」
「うん?なんだ?」
少年が話し掛けてくる。
この少年は多岐将太と言い、俺が謎の男達から助けてやった奴である。
話した結果日本を目指していることが分かり、俺も日本を目指していたので一緒に行く事になったのだ。
「本当に目がみえないのか?」
「うん。だって目で言ったら今あそこが明るい、あそこが暗い、位しかわかんねーもん」
実は俺は生まれながらの盲人だ。
眼に水晶体が形成されておらず、更に細かく言うと、視神経の一部も未形成だった為、俺の目には明るさしか映らない。
軽く答えたのだが、多岐には
「あ、じゃ完全に見えないって訳でも無いんじゃん、なんだ」
と言われてしまった。
ぐぬぬ……。多岐め痛いところを突きやがって……。
とは思った物の、事実なので反論の余地がない。
まぁでも明るさが分かってもどうにもならないことも事実なのだ。だから他の奴と違い視力に頼らず生き、他の感覚を鍛えたのだ。
それが俺の命を助けているとも言えた。
「あと煉ってさ、黒目の真ん中の部分…」
「瞳孔な」
「……が白いよね。なんで?」
そう、俺の瞳孔部分は白い。
その理由は突き詰めると水晶体が無いことに由来するのだが、多岐に墾墾と説明しても唯エネルギーを消費するだけなので、
「目が見えないからだ」
と誤魔化しておいた。
と、そんなことを考えていると、目の前に一匹の緑色の小人みたいなのが現れた。
目の前、と言っても3m位離れているし、小人、と言っても50cm位ある。いやそれは小人か。
耳が尖っており、頭には一切の毛髪が見受けられなかった。それから服装は腰巻きのみだった。
何なのか考えても解らなかったので多岐に訊いてみたところ。
「え、何?あれが何かって?
魔物かなんかなんじゃないの?僕にそんなの解ると思ったワケ??」
あ、知らんのね。そう言えばいいのに。
これが世に言うツンデレか!?等と愚考してしまったのはナイショである。多岐に限ってそれは無い。
まぁ、そんなことは置いといて、この目の前の奴が襲ってくるなら始末して、何もしないなら放っておけば良いのだ。
「むむむ………、ん?」
あまり使わない頭を使っていると、緑の小人がこちらへと走って来た。
結構この場所は歩きにくい。瓦礫が大量に転がっており、道が平たくないからだ。
だが、その緑の小人は全くつまづく様子もなくこちらへと疾走して来るのだ。
よく見るとその右手には何処から持ってきたのやら大きな棍棒が。
「ねぇねぇ多岐、なんか緑の奴がこっち来てるんだけど……」
「それを言って僕にどうしろと?もぅ一回言っとくけどさ、僕に魔物が倒せるワケ無いでしょうが」
思った。
多岐って、俺に順応し過ぎて逆に相当失礼になってないか?一応年上だぞ俺?
多岐には年上の方を敬う、といった感覚が欠けているのでは無かろうか?
と、とうとう目の前まで緑の小人が達する。
さて、どうするか。敵対意思は今のところ感じられないから手出しするのは気が引ける。何しろ、人の姿形をしているのだ。
殺してしまった場合、罪悪感に苛まれそうで怖い。
夢に出てきそう、といったら解りやすいだろうか。
取り敢えず知性の有無を確認しようと思う。
知性が有るのなら唯人を襲うだけの魔物とは違うだろうし、色々と話が聞けるかもしれないしね。
というわけで、話し掛ける。
「やぁ、君は誰?」
え、随分と馴れ馴れしいって?
いやぁ、これでも丁寧に対応している方なのだよ、丁寧に、ね!
なんだかうしろから「ぶふッ」という音が聞こえた気がするが、まぁ、なんだ。気のせいだろう。
気にしない気にしない。
すると、緑の小人は何やらヤバイものを見た、という感じで一歩後ずさった。
え、もしかして不味かったか?
と、突然意を決したかのように緑の小人は俺達をじっと見据え、言い放った。
「金を出せ!」
と。
「「――――は?」」
思わず多岐とハモる。いや、本当、意味が解らなかったのだ。
ていうかそもそも知性があるかどうかというのも、
まぁ、あったらいいかぁーーー
程度にしか考えていなかったのだ。
それがまさかの、金を要求される等という、予想だにしない事態になるとは……
潰すのは簡単なのだが、仲間とか居たりすると面倒くさいし。あ、そもそも俺ら金持ってねぇか。
仕方ないので、更に後ずさりつつある緑の小人に淡々と事実を突きつける。
「ごめんだけどさ、俺ら金なんかもってないよ?」
「え?」
「えッ?」
思わず俺までえ、と言ってしまった。
どうやら緑の小人は何を思ってか俺らが金を持っていると思った様である。
「いや、持ってないからご期待には添えない、って言いたいんだが」
「え………」
絶句する小人。まぁ、でも仕方ないよなぁ。俺ら、金なんか持ってないし。要するに天衣無縫の一文無しという奴なのだから。
あれ、ていうか今日生き延びる為の食糧を探さねばならないんじゃ?なんでこんなところで緑の得体の知れない奴と会話してるんだ?
そんな風に考えていると、次に小人は、
「じゃ、じゃあうちの集落まで来て貰おうか!」
とか言い始めた。
は?集落とかあんのか!?まじで!?
なんか興味沸いてきた。ちょっと行ってみたいかもしれん……。
まぁ、潰すのは何時でも出来るし、緑の小人の集落とかいうやつには行くだけならいいかもしれない。
というわけで!このまま行っちゃおうぜ!
と、多岐に笑顔でサインを送る。勿論無言。
俺の意図は一瞬で読み取ったらしいが、明らかに嫌そうにしている多岐はほっとこう。
「仕方無い、行ってやろうジャナイカ!」
「な、なんか態度デカイなお前……」
引きぎみな小人ではあったが、俺達を警戒しつつ集落へと向けて歩き始めた。
ついてこい、ということか。
俺達は小人に続き歩いていく。
ていうか、思うのだが、この小人、俺達から金を奪おうとしたわりには、隙だらけなのだ。今も、棍棒を俺達に向けつつも、余りこちらを振り向かないしさぁ。
思った事を多岐に話してみた。勿論小声で!
「あのさ多岐。コイツって結構隙だらけだよな」
「あ、言われてみればそうだね、うん、はいはい」
軽くあしらわれただと!?解せぬ。
コイツいったい年幾つだ?
まぁそんなことを考えつつ、空を眺める事にした。
じぃぃぃぃぃ………
じぃぃぃ………
爺ぃ………
……
気が付けば空は真っ赤に染まっている。
その小人の集落に着く頃には、すっかり日が暮れてしまっていた。なんということだ。
少々時間を食うだろうな、とは思っていたが、まさか一日の行動可能時帯をあっさりと食い潰されるとは……想像だにしていなかった。
あ、ていうか昼飯も食ってねぇし!腹へったわ…。
なんたるちや!
等と悶絶していると、
「は、早くこい!」
とか、
「ほら、煉さっさと行ってよ、面倒くさいなもう」
とか、まるで人を道具の様に(?)扱うような発言が前後から俺を挟み撃ちにしてきた。
こ、この短期間でお前ら何時の間に口裏を合わせるなどということを…!?解せぬ。当然そんな事は無いだろうが……不安だ…。
小人の集落とやらは、正に『集落』であり、そこまで整備されてないし、他の小人も皆ボロボロの状態である様だった。唯一良いところ(?)は規模だけなら結構ある、という位だろうか。
幾らなんでもこれはヒドイ。
どうやら小人が俺らに金を要求していたのは、結構彼らの生活に関係がありそうだ。
だが、この小人らが、金なんか使う時があるのだろうかと疑問に思う。
あと、これは俺個人で思ってしまったことだが、周りの小人達の視線が痛い。あからさまに、
何だ人間?
今すぐ出ていけよ、糞粕が。
位の威圧があると思うよ。うん……。
対して何故か多岐の方は若干受け入れられている。
所々小人達の表情が柔らかい。
何故だ。
暫くして、一際大きい――と言っても他が小さいので大きいと言うのも躊躇われるが――こんもりとした住居へと連れていかれた。
そして俺らを置き去りにして小人はその中へと入っていった。おい。
無防備過ぎるにも程があるだろ!!
とは思った物の、一応今は連行されているという体なので黙ったままにしておく。
流石に煉でもこの集落にいる小人達全員に襲われたらひとたまりも……あるか。なんとかやれるんじゃ無かろうか。
と、
「……ん?」
なんだろうかこれは。何だか知らないが……その、なんて言えばいいんだろうか。
何かおかしい。足下が。
「ん、どうした煉」
多岐が俺に話し掛けた。多岐が、年上であり命の恩人であろう煉に軽いことはこの際関係無い。
「いやなんかこの地面少しス」
そこまで言ったところで自分達の身に起きた出来事に息が止まる。
そのまま重力に体を持っていかれ、情けなく尻餅をつく。黙ったままゆっくりと立ち上がる。
頭に血が昇るのがハッキリとわかる。
今鏡を見れば、真っ赤に染まった自らの顔が拝めることだろう。残念ながら盲目だが。
「えっ、ちょうわぁッ!?え、何これどうゆう状況これ??」
多岐は俺と正反対で喚いていた。
一体何が起きたのか。説明するのは簡単だ。そんなに複雑な事象が起こったわけでも無い。
唯、『落とし穴にまんまと嵌まる』等という自分の失態に酷く憤慨していただけだ。
ご理解頂こう。
次回は出来れば早めに投稿したいです。