凪楽 煉
投稿遅れて済みません。
もう1つのほうはまだです。
これからも投稿が遅れると思いますが、宜しくお願いします。
時刻は午後8時38分。
3つの影はゆらゆらとその姿を崩しながら、獲物を探してさまよっていた。
影の正体は男だ。筋骨隆々のいかにも強そうな輩共だが、纏っている服は所々破れており、どう見ても裕福そうには見えない。
スラム街のボス、が数人歩いている、といった感じだろうか。
このご時世に珍しいことではないが、彼らは銃をそれぞれ一丁ずつ、先頭を歩く男はライフルの様なものまで持っている。
この世界には最早秩序なんて物は存在しない。
この世界の誰もが知っている当たり前の事実。
だから銃は簡単に手に入ってしまう。
法という鎖が存在しないからだ。
秩序の無さ=制限の無さ という数式に従い世界が崩れていることが見てとれる光景だ。
彼らが求めている物とは、食糧である。
彼らは、自分たちが食する肉を求めているのだ。
当然獣の肉…………
ではない。
彼らが求めているのは人肉である。ここらで手に入る肉はそれしかない。
ここらの食糧はほぼ壊滅しており、移動手段がない限りは僅かな生き残りの肉を喰うしかない。
人間とはここまで非情になれるものなのか。
ザッザッ、と靴の擦れる音が響く。
「いやせんね」
「もう暗いし。何処か安全な所にでも隠れてンだろ。まっ、そんな場所そうそうねぇけどな」
「お2人さん、誰かいやすぜ。」
「は?まじか?」
数メートル向こうで揺れる影。その影はゆっくりと男達の方へと歩いてくる。
「1人………か。絶好のカモだな」
「俺が行きやす。銃はいらねぇ」
男の1人が前へ出る。
ーーーー見たところふらついていやがるし、アッパーでいける。
男はそう思っていた。
が、彼らがこの後ボコボコにされることは、近付く影自身以外、知りようがなかった。
ーーーーーーー
目の前に男が3人…か?
あ、1人だけ出てきたな。嘗めてやがんのか。
凪楽煉はそんなことを考えながら数人の男達に向かって歩みを進めていた。
凪楽煉は、マオウが落とした隕石により、母親を失っている。彼はここらでマオウらしき人物を見掛けたとの情報をききつけ、この地へとやって来たのだ。
彼の目的は復讐。マオウへの復讐である。
しかし。
実は、彼は目が見えない。生まれつきの盲人である。目に水晶体が形成されていなかったのだ。お陰で彼の目には明るさしか映らない。
が、彼は何不自由なく暗闇の中を歩いている。
彼は感覚が異常な程に鋭かった。
3歳になると何不自由なく障害物を避けて歩ける様になり、5歳には他人との会話を容易とし、小学校の体育はオールA。
その皮膚は空気の流れを捉え、その鼻は微細な匂いの変化を感じ取り、その耳は微小な音まで漏らさず聞き分ける。
だが、彼の才能は平和な世の中では役にたたなかった。
普通の人と同じ様なことが出来ても誰も気にしないのだ。
「あいつ運動出来すぎ。目ぇ見えねぇなんて嘘なんじゃねぇか?」
なんて言われることはあったのだが、本当に見えないのだ。現に紙に書かれた絵や文字はわからない。
何はともあれ、
この世界で彼の能力はかなり発揮された。
例えば、この状況下で言うと、今、辺りはかなり暗い。科学社会や都市魔法国家辺りだと幾分か明かりがある分マシなのだろうが、ここは旧インドの辺り。壊滅していて明かりなど残っていない。
男達はある程度目が慣れているのだろうが、それでも所々つまづいている。
対して煉の方は………………っと、男が仕掛けて来たようだ。
ぶんっ、という音を起こしながら男の腕が空を切る。煉が海老ぞりのような体勢になり、避けたからだ。当然、その体勢のままバランスを保っている。
唯でさえ煉の方が有利な上、音を出したら、煉に当たる訳がない。煉には素晴らしい耳があるのだから。
「何っ!?」
何故だ!?何処へ行った!?と男が表情を情けなく崩しているうちに煉は攻撃を加える。
下から狙いを定めて男のみぞおち(辺り)を……………
ずどん!
男が仕掛けてから煉が一撃を喰らわせるまで、5秒と掛からない。
それほどの力量の差である。
ぐぼはぁああっ!!!
男ががくりと膝を折り、両手をつき、土下座の体勢で逆流した内容物を吐き出す。
いい具合に入ったようだ。
「お、おい、どうした!?何があった!?」
恐らく後ろで傍観していた2人には何が起きたか到底理解不能だろう。
辛うじて仲間が1人倒れた、という事実を知るのみだ。
続いて煉は軽くその場でステップを踏むと、目の前の獲物の狩りを開始した。
ミイラ取りがミイラになる瞬間であった。
ーーーーーーー
寒い。冷たい。
痛い………
!
ここはどこだ?
少年が1人、椅子に縄で縛り付けられていた。
辺りにはほとんど何もない。ほとんど、というのは辺りが暗すぎてほぼ見えないのだ。
実はこの部屋はそこまで広くないし、どちらかと言えば狭く、出口も少年の近くに有るのだが、少年にそれは解らないだろう。
何故僕は此処に居るんだ?
何があったんだっけ………………?
少年は少し前に自分に起きた出来事を思い出すべく頭を抱える(実際は手を縛られている為唯の比喩であるが)。
と、
辺りに轟音が鳴り響き、少年の右側の壁が崩れ去った。
ドゴォーーーン!
轟音の中から1人の影が現れる。
「あいつらが言ってたのは此処か?」
目が灰に濁った、青年だ。
もう少し書きたかったんですが……