『エセコイ』 或いは、二人のお市 恋の物語01
続きを投稿しますです。
浅井目線が入ります。
今日は、尾張より信長の妹のお市さまが輿入れして来る。
現状ではこちらの方が格が上であるし、同盟の必要性も織田の方が急務であったろう。
だから、本来であれば側室の輿入れごときに、身構える必要はないのだ。
だが、俺には前世の記憶がある。
『織田家』、『信長』、『お市』は、俺にとってはとても重い言葉なのである。
とても気軽に接することが出来ない。
雲の上の存在というのが、正直な気持ちだ。
しかし、そんな事は誰にも判らないであろう。
俺に近しい、お雪や縁であっても俺の心の中までは覗けまい。
でも、なにか感じるのか、輿入れが近づくに従い彼女たちが妙に俺を求めてくる。
ここ数日は三人共が……いややめておこう、口は災いの元である。
「朝日が、きいろいなあ~」
俺は、疲れた身体にムチを打ち、花嫁を迎える準備に取りかかる。
すでに迎えの一行を尾張へと派遣している。
爺の弥左衛門と安養寺氏種にお市の受け取りを任せた
剣の達人、渡辺右京(了の父)を念のために付けておいた。
浅井家とは国境を接してないので、他国を通ることとなる。
俺が、西美濃の氏家や不破そして、北伊勢の本願寺(願証寺)に話をつけて、迎えの軍勢の通過の許可を取った。
信長は敵が多すぎて面倒くさい。
家臣も、何故に織田と婚姻を結ぶのか不思議に思っているようだ。
「やはり賢政殿も男でございまするなあ」
「織田の姫は美人で評判だとか」
「いやはや、血は争えませんな」
「馬鹿を言うでない、久政と殿を一緒にするな!」
「そうじゃそうじゃ、若の悪口を言うでない男は甲斐性じゃ」
「いや、それがしは3人もの美しい奥方がいらっしゃるゆえ羨ましゅうて」
「お主の家には鏡がないのか?」
「そうじゃ、美男な殿と比べてみよ」
「さぞかしお綺麗な方でござろうな」
「モチのロンであろう」
「「「「いや、楽しみでございますなあ」」」」
あぁ、頭が痛い!
― おいち(いぬ) ―
それでね、私もついでに小谷まで行くことになったんだ~。
やっぱり、お姉様の旦那様がどんな方か見て見たいじゃない?
(変な人だったら、お姉さまを連れて逃げ出さなきゃ。)
近江の国は、意外と山深いところでした……と思ったら視界が開けてきました。
けっこう、広々とした中に小高い山々が点在しています。
そして…あっ、琵琶の湖が見えました。
わ~っ、あれが湖だなんて信じられません、お水が飲めるんですよ~。
街道や、町並みも思ってた以上に整備されていました。
スゴイスゴイ。
それに、……
「「「「「「わ~っ、姫様~っ、いらっしゃいませ~、おめでとうございま~す。」」」」」」」
「「「「「「 ようこそ江北へ、ようこそ浅井へ 」」」」」」
街道沿いに大勢の人が集まって、私たちを歓迎してくれています。
スゴイ歓迎振りですぅ。
わたし感動しました~。
そうして、私たち一行は、大歓迎のムードの中、小谷城下へと入っていきました。
― 賢政 ―
城下で歓迎の声が聞こえる、どうやら無事に到着したようだ。
先ずは一安心と言ったところか。
「ふぅ~う」
思わず息が漏れる。
やばい、緊張してきた。
あの信長の妹の『お市』だぞ、緊張もするわっ!
いいか、俺のお市のイメージは、『信秀のお嬢ちゃん』 だ!
姫として、我が侭に・大切に育てられたに違いないと踏んでいる。
俺のイメージ的に、『タカビーなお嬢様』だと思う。
もしくは、『ツンとすました美人さん』かな、まあどちらにしてもハードルがけっこう高い!!
初夜でしくじれば、一生言われ続けそうだ。
ましてや俺的には、『お市って人妻(子持ち)じゃん!』というイメージがあってたぶん萎えます。
「困ったもんだ。(勃つかどうか心配だなぁ)」
(まあ、浅井長政である以上避けては通れない運命だと思ったのと、『恒ちゃん』を見殺しに出来ない俺の甘さが招いた悲劇だな。)
まあ、婚姻がかなり早まったので、彼女の年齢も16歳だし、そこまでスレてはいないかな。
(史実では、行き遅れ手前だったしなぁ~。)
さあぁ~て、覚悟を決めますか!
窮屈な花婿衣装に着替え、花嫁の到着を待った。
― 輿入れ御一行 ―
何だか気が抜けたまま、小谷城城内へと入りました。
かなり、立派な建前です。
お兄様もお金持ちですが、姉上の旦那さんの方が一枚上手かも?
噂では、優柔不断で守銭奴そして種馬?だそうです。
高利貸しをして、みんなから嫌われているのかな?
でも、城下ではそんな感じはしなかったけれど……。
変な小男は絶対に尾張の人間ですし……。
あの、”みゃぁみゃぁ”では、言い逃れができません!
でも、あの人って、警護の人とことばがつうじるのかなぁ?
わたしが先ほどの出来事についてお姉様に申し上げると…。
伊吹お姉様は、笑っておられました。
他のみんなも、同様に微笑んでいました。
なぜか、オロオロしている侍女がひとりいます。
(もしかして…関係者かな?)
それならば、酷いことになっていなければ良いけれど。
お姉様がいらっしゃるから、たぶん大丈夫なのでしょう。
休息用に通された部屋は、とても立派なお部屋でした。
落ち着いた雰囲気で、調度品もセンスが良いですねぇ。
この様子であれば、お姉様はお幸せになられるでしょう。
私も少しホッといたしました。
お茶もお茶請けのお菓子も最高ですぅ。
「御休息の所、失礼いいたします。お市さま!」
浅井家の侍女の方が声をかけてきました。
そろそろ、式場へ移動の時間ですかね?
「いち、呼ばれているわよ」
「はい?」
ああそうでした、私が市でした慣れないものですね。
早く慣れるようにいたしましょう、お姉様から譲っていただいた大切な名前ですからね。
「お市さま、ささ、こちらへどうぞ」
(へぇ~この方がお市さまなんだ、声をかけて良かったです~、わたしはてっきり隣の美人さんだとばかり思っておりました。他の侍女にも伝えておかないといけませんね)
出来る侍女.御崎は勘違いしてしまった。
「え」
「お召し替えを」
可愛い姫様ですね、お世話のしがいがあります。この御崎に全てを任せて下さい。
「あれ」
え、なになに?ああ、白無垢は乙女の憧れですもんね、一度は着てみたいものですぅ。
でもそれはお姉様のものですよ?
「任せて下さい」
「はあ?」
ああ、そうか、お姉様がこのひとにお願いして、私に試着させてくれるんだ。
私の結婚はダメになったし、気を使ってくれたんだね。
うれしい、今日は最高な日です!
『うれしい、今日は最高な日です!』
初々しい花嫁さんに、そう言っていただけてよかったですわ。
ひと仕事を終えた後、御崎は皆に語るのであった……。
「お市さまは、可愛らしいお方です」
「ささ、こちらへ」
愛しの旦那様が、お待ちかねですわよぉ~。
「あれれ」
あれ、なにか変だ。
こんな格好で、どこへ行くのかな?
― 小谷城下の浅井家の屋敷の大広間にて ―
『浅井賢政どの と 織田お市さま』の祝言が、厳かに執り行われた。
「「「お二人ともお似合いでござる」」」
「「まこと、美男・美少女とは、この事よ!」」
「賢政殿は、『三国一の幸せ者』で、ございますなぁ~」
「「「「ほんに目出度い」」」」
皆が口々に褒め称えた。
皆は、既に宴会モードに入っていた。
『婚姻の儀式』というものは、主役はお飾りなのである。
まあ、絵になるお飾りではある。
上座の方には、見目麗しい『織田の姫君が鎮座ましましていた』
噂通りの『絶世の美少女』であった。
彼女ならば、美男の賢政とも釣り合いが取れる。
(……まさにおひな様状態だ。)
そこには
侍女として傍に控える『伊吹』に、なにやらこそこそと相談する、『お市』の姿があった。
(「お姉えさま!謀りましたね、どうするんですかぁ~」)
(「お犬などと、たわけた名前を付けられた、自分自身の生まれの不幸を呪うがいいわ~ぁ」ほ~っほっほっ)
― 賢政 ―
(すっごく、可愛いじゃないかぁ!!)
思っていたイメージとは、良い意味で違った。
『ツンとした美人』と思っていたが、『可愛い感じ』だ。
性格もおとなしそうだ、よかった~。
まさに俺好み、ドストライクだ!!
流石は信長!恐るべし。
予想よりも幾分幼いので、先に入ってきたお付きの侍女と一瞬、間違えかけてしまった。
よかった、これならば新婚生活も問題無さそうだ。
案ずるより産ませるが易しだな。
― おいち ―
どうしよう?
ばれたら殺される?
”ぐさぁっ”てやられちゃうのかな。
痛いのいやだよ!
ごめんなさい、なんでもいうこと聞きますぅ。
殺されないよね、旦那様は優しそうだし…って、いうかぁとても、お男前ですぅ。 (そう、賢政はイケメン設定なのだ。)
もう、このままで、いいかも……奥さんですぅ!
こうして、とりあえず輿入れは無事に終わったのであった。
いかがでしょうか?
お気楽にお読みください。
細かいことは気にしないでネ。
渡辺右京が、剣豪なのは『渡辺了の父が弱いハズがない』と、いう思い込みで。
賢政が地獄の特訓を彼に科したからなのです。
師匠はもちろん剣の鬼『アイスマン』です。
海北友松のパタ~ンです。




