『お市?輿入れ顛末記 ⅲ 』
『お市輿入れ顛末記!』
今回でとりあえずの完結です。← 続き書きました。
ではどうぞ、
そして、いつの間にか私は眠っていました。
旅立ちの門出で、はしゃぎすぎたようです。
「……あれ?」
「おきて、おきてお○ちゃん!」
「お○って、言わないで、酷いですぅ~」
じたばた暴れる妹ちゃん。
激烈な反応である!よほど名前にイヤな思い出があるのだろうか?
「わかったわ、じゃあ私の名前をあげる♡」
”ガバッ”
「良いんですか、お姉様!」
はい、威勢よく起き上がりました。
「いいのいいの、別に名前なんて何でも良いのよ」
「そりゃぁ、お姉様はいいよぉ……」
「もう、だからホントにあげるってっ!!」
「ほんとにほんとぅ」
「ホントにホントッ」
「わぁ~い (ノ^^)ノ~ やったぁ~」
「というわけで、よろしくねっ、おいっちゃん」
「うんうん、よろしくぅ!…でもお姉様はなんて呼ぼうかしら?」
「いちが付けて!」
「じゃぁ、に!」
「却下!」
「へへへ、じゃあ、おミツ?」
「3じゃない! 真面目にしてよ、ヨンもいやぁよ」
「じゃあ~、伊吹は?」
「あなたにしては良い命名ね、気に入ったわ、これから私のことは『伊吹』と呼んでねっ」
「じゃあ!本当にわたしが、いちでいいのね~」
「ええ、そうよっ!」
「わぁ~い、やった~うれしい~」
(……不憫な子、お兄様があんな名前を付けるから……
『伊吹』ねぇ~近江に行くんだし、いいんじゃない)
休憩をする一行の目の前には、『伊吹の山』が、なにも言わずに佇んでいた。
― こうして、市が知らぬ間に運命の歯車が廻っていった。 ―
計画通り!(ニャッ)
そう呟く黒い声が、何処かであったことを彼女は知らない。
お輿入れの一行を追う影の姿に気付いたものは、誰もいなかった。
あれっ、いつの間にかナレーションを忘れてた~ (妹ちゃん)
ごめんごめん
それでね、私もついでに小谷まで行くことになったんだ~。
やっぱり、お姉様の旦那様がどんな方か、見て見たいじゃない?
変な人だったら、お姉さまを連れて逃げ出さなきゃ。
『伊吹』お姉様が、尾張からの荷物の警備をしている人に頼んでくれたんだって。
「おいっちゃんにも見せたいの」と言われちゃった~。
「わたしも、見たい見たい!」
興奮しながら、旅を続けました。
近江の国は、意外と山深いところでした……と思ったら視界が開けてきました。
けっこう、広々とした中に小高い山々が点在しています。
そして…あっ、琵琶の湖が見えました。
わ~っ、あれが湖だなんて信じられません、お水が飲めるんですよ~。
街道や、町並みも思ってた以上に整備されていました。
スゴイスゴイ。
それに、……
「「「「「「わ~っ、姫様~っ、いらっしゃいませ~、おめでとうございま~す。」」」」」」」
「「「「「「 ようこそ江北へ、ようこそ浅井へ 」」」」」」
街道沿いに大勢の人が集まって、私たちを歓迎してくれています。
スゴイ歓迎振りですぅ。
わたし感動しました~。
そうして、私たち一行は、大歓迎のムードの中、小谷城下へと入っていきました……。
と、その時です。
「ぬら~まっとくりゃ~せ、いかんといてちょ~だにゃにゃ」
ものすごい大声と剣幕で、輿入れの行列に飛び出してきた男がいました。
「慮外者!」
「神妙にしろ」
「ひてててっ……」
一時騒然と成りましたが、すぐに警備の者に取り押さえられたようです。
「まっとくりゃ~せ、いかんといてちょ~にゃにゃしゃん、やもめはいやだぎゃあ~」
ああっ、せっかく高ぶっていた感動が台無しですぅ!
なんなんでしょう、あの貧相な小男は~むぅ!
せっかく高揚した、わたしのおめでた気分が台無しですぅ。
何だか気が抜けたまま、城内へと入りました。
わたしが先ほどのことについてお姉様に申し上げると…。
伊吹お姉様は、笑っておられました。
他のみんなも、同様に微笑んでいました。
なぜか、オロオロしている侍女がひとりいます。
(もしかして…関係者かな?)
それならば、酷いことになっていなければ良いけれど。
こうして、お市御寮人の輿入れは、多少の騒ぎはあったものの、つつがなく小谷城に到着いたしましたとさ。
めでたしめでたし。
― おまけ ―
「御休息の所、失礼いいたします。お市さま!」
浅井家の方が声をかけてきました。
そろそろ、式場へ移動の時間ですかね?
「いち、呼ばれているわよ」
「はい?」
「お市さま。ささ、こちらへどうぞ」
「え」
「お召し替えを」
「あれ」
「ささ、こちらへ」
「あれれ」
― 小谷城下の浅井家の屋敷の大広間にて ―
『浅井賢政どの と 織田お市さま』の祝言が、厳かに執り行われた。
「「「お二人ともお似合いでござる」」」
「「まこと、美男美女とは、この事よ!」」
「賢政殿は、『三国一の幸せ者』で、ございますなぁ~」
「「「「ほんに目出度い」」」」
皆が口々に褒め称えた。
皆は、既に宴会モードに入っていた。
『婚姻の儀式』というものは、主役はお飾りなのである。
まあ、絵になるお飾りではある。
上座の方には、見目麗しい『織田の姫君が鎮座ましましていた』
噂通りの『絶世の美少女』であった。
彼女ならば、美男の賢政とも釣り合いが取れる。
(……まさにおひな様状態だ。)
そこには
侍女として傍に控える『伊吹』に、なにやらこそこそと相談する、『お市』の姿があった。
(「お姉えさま!謀りましたね~」)
(「お犬などと、たわけた名前を付けられた、自分自身の生まれの不幸を呪うがいいわ~ぁ」ほ~っほっほっ)
― さらなるおまけ ―
座敷牢では、なにやら声がこだましていた。
「出してくりゃ~せ、どえりゃ~腹が減ったがや~」
それにしても大きな声である。
いかがでしたか?
『お市?輿入れ顛末記!』
やっと本タイトルが、出せました
気の強そうな、お市がでてきた時点で判った方は、ひさまさ検定準一級です。
どさくさ紛れに佐治家との縁談を潰したのに気付いた方は、さすがです。
「おいぬ」と「おいち」一字違いで大違いですね。
次回
『 偽コイ 』
なんちゃって!
しばらくは、書きません、いったん本編に戻ります。
しかし、織田家のお話は、キャラが立っているので話が転がりますね。
浅井だと、けっこう難儀かも、そういう意味で良い子達が来てくれました。
ナゾ(?)の小男も、手に入れねば。




