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『おんみつ姫 と 猿面冠者』

久しぶりの投稿です。

お待たせした方は申し訳ございません。

初めての方は、ほのぼのとしたギャグとして笑ってください。


『おんみつ姫 と 猿面冠者』



 伊吹は、今朝もご機嫌であった。


「お姉ちゃんが何とかしてあげるからね、まってておいちちゃん!」

姉として、侍女としてヤル気を見せていた伊吹であった。


 伊吹には、腹案があった。

今想い出すだけでも甘酸っぱくなる、そんなとっておきの経験が伊吹にはあるのであった……。


「そうと決まれば、準備だわ」


伊吹は清水谷にある、浅井屋敷を駆け回った。


 ある程度必要な物は揃えられたが、今の伊吹には協力者が居なかった。

たぶん、他の侍女達に命じても云うことを聞いてはくれまい。

困ったことに、伊吹がアテにしていた池田恒興は、輿入れのあと逃げるように帰ってしまっていた。


「も~っ、使えない男ねっ」

頬をぷっと膨らませ文句を付けようにも、侍女に聞かれる訳にもいかずイライラしている。


(案外そういう姿は、可愛いらしいものがあった。)



 そんな折、屋敷の入り口でとある男とばったりと出会った。

もちろん伊吹には、見覚えがなかった。


しかし……


「あ、あなたは…おお…、おいちさ…… ”ぐへっ” 」

不用意にいらないことを口にしそうになった男の腹を思いっきり、蹴飛ばし物理的ぼうりょくでに口をふさいだ。


「ひててて、ヒドイでござる」

猿顔の小男が、不満の声をあげる。


まあいきなり蹴られたので当然とも云えるが、この男にはどうやらご褒美だったようである。

その証拠に顔が妙に、にやけている。


愛嬌のある顔ではあるが、猿顔であった。残念!



「そなた、尾張の者か?」

自分のことを知っているらしい男を警戒し、尋ねた。


「へえ」


あやしい、とぼけているのかしら。仕方が無い確認しよう。


「おみゃあさん、ひつまぶし知っとりゃあすか?」 

伊吹が、尾張共通語なごやべんで尋ねた?


「どえりゃ~うまいでかんわ!」 

藤吉郎が、すかさず返した。



 間違いなく尾張の人間である。


「ああ、確かに尾張みかた人間モノですね」

「ははっ」

平伏する、猿男。


「して何用じゃ、私のことを知っているとはただ者ではあるまい」

相手が尾張の人間である以上、おいぶきはご主人様である。

エッヘンと胸を張って偉そうにした。(いつも通りであった)


「織田家家中、足軽組頭 木下藤吉郎と申します」

ふたたび這いつくばるように平伏する、藤吉郎。


「であるか。 して。」

「はっ、姫様のお付きの侍女ねねに所用があり、まかり越しました」


「なんとねねにか? ねねを知っておるのであれば、よもや偽りもあるまい」


「ははっ、ねねはそれがしの許婚にございます」

こいつ何言ってやがるんだと、おいぶきの顔が歪んだ。


”どごっ”


”ぐはっ”


「嘘を申すでない」

「真にございます」


「その方、鏡を見たことがあるのか?」

「ございます」


「わらわに偽りを申すか」

「本当ですって」


「まあ良かろう、ねねに聞けば判ること。どちらにせよ不審者として処刑すればよいだけのことだしのう」

とても物騒なことを、気軽にのたまうお市。(やはり彼女は、信秀のお嬢ちゃんである。)


「あのう、仮にでも認めてもらえたのは嬉しいのでありますが、後半の科白は……」

お市のご褒美は嬉しいが、藤吉郎だって死にたくはない。


「気にするでない、苦しまぬように頼んでやる」

「いえいえそこは、気にしましょうよ」

彼なりに必死である。まだ死んだことはないが、多分死ぬと思うのだ。


「なんとも贅沢な、あい判った武士らしく切腹でよかろう」

いぶきは、寛大さを見せ、織田家的に最大限の譲歩をした。


「すみません、なんでもいうことを聞くので勘弁してください」


「であるか、ならば今日よりそちは、わらわに使えよ」

「ははっ」


「で、ねねには会ったのか?」


「いえそれがその。尾張に帰るよういわれまして」

「なぜじゃ」


「実は、ねねに会いたいあまり、輿入れの行列を遮ってしまい牢に入れられておりました」

頭を掻きながら弁明する。


「ほほほ、それは愉快。そういえば見苦しい尾張弁の猿が居たような……」

「勘弁してくだせい」


「まあよい、ついて参れ。それと私のことは伊吹と呼ぶのじゃ」

「伊吹様ですか?」


「左様」

「わかり申した、伊吹様。誠心誠意お仕えいたします」

藤吉郎は揉み手をしながら大仰におじぎをして、お市あらため伊吹に取り入った。


「で、あるか。オホホホ」



 かくして伊吹は、最高の手駒(藤吉郎、のちの秀吉)を手に入れたのである。

もはや、天下の半分はったも同然であった。



信長の天下取りの野望は、墨俣を前にして終わってしまうのかもしれない。



ひさびさの投稿です!


ご存じない方のために説明いたしますと。

この作品は、『 弱小浅井はハードすぎ!!』の桶狭間以降の”別ルート分岐世界”

『長政はつらいよっ!長政の逆襲』のギャグ作品です。


当時は、「弱小」「逆襲」等を同時進行で書いておりました。


ですから、『弱小』だけをお読みの方には、とんでもない違和感があるとおもいます。

気になる方は、『長政はつらいよっ!長政の逆襲』をご覧ください。


『 弱小浅井はハードすぎ!!』『長政はつらいよっ!長政の逆襲』『ひさまさじゃ』本作『エセコイ』

『長政は、ファンタジー転生をお断りします!』の5つを同時に書いておりました。

すべてが、連動していたので単体で読むと、時々訳の分からない話が出てくるというわけです。

読みにくい仕様でスミマセン。m(_ _)m


意外にも、長政の転生の秘密は『長政は、ファンタジー……」の最後の方に書かれております。

(ご存じの方は少ないと思います。)

秘密は秘密! それでいいのです。


                         ひさまさでした

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