『信長の書状』
昨日はいろいろどうもでした。
続きをどうぞ。
― 翌日、式典三日目 ―
爽やかな朝の空気の中、小谷の町が目を覚ます。
信長からの使者.前田利家は、昨日の昼過ぎには小谷に着いていた。
意気揚々と、城へと乗り込んだ利家であったが、……。
駆けつけ三杯の後 城にあがる前に家臣の屋敷の宴会に紛れ込んでしまっていた。
すっかりと酔いつぶれ、気付いた時には侍長屋で寝ていた。
「ん! ここは何処だ?」
随分と呑み、賑やかに騒いだ記憶が残っている。
「楽しい酒宴であった」
素直にそう言える
小谷城は宴会たけなわで、朝から祝賀ムードに包まれている。
「やべ~っ」
慌てて飛びおきる利家であった。
結局、池田恒興の元へ手紙が届けられたのは、今朝になってのことである。
「上様からの手紙にござる」
「おおっ、待ちかねたぞ!」
信長からの手紙に、恒興が小躍りしたのは言うまでもなかった。
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・
― 屋敷にて ―
婚儀三日目、ようやく最終日だ。
「おはようお市」
「おはようございます、旦那様」
御崎の報告によると、昨日お市は風邪をひきかけたそうだ。
深窓のご令嬢だけのことはある、あまり無理をさせてはいけないな。
「無理はするなよ」
後ろから優しく肩を抱き寄せ、耳元に囁いた。(人に聞かれては恥ずかしいからな。)
「ひゃっ、はっ、はいですうぅ 」
可愛いなあ、お市にもしもの事があったら、俺は信長に殺されるだろう。
「大切にするからな」
「きゅうぅ~ (もうこのまま死んじゃってもいいですうぅ)」
賢政の腕に抱かれ、昇天しかけているお市であった。
― 信長の書状 ―
小谷城下浅井御殿にて、俺は使者と面会していた。
信長殿から書状が届いたのだ、使者は前田利家であった。
「早朝に届けるとは、使者殿も大変だな」
疲れた顔をした利家というのも、変なものだ。
「いえ、…(実は昨日から来てましたなどとは、言えないではないか)」
「ご苦労である、済まぬが内容を吟味したい。下がって宴席に加わってくれ、返事が必要なら追って伝える」
使者の手前で迂闊な顔はできない、利家には悪いが一度下がらせた。
「ははっ(疲)」
俺は些か、二日酔い気味だが背筋を伸ばして拝読した。
「何かあったのであろうか?」
『 拝啓、賢政殿。
お市との挙式の件、つつがなく済んだこと誠に目出度く思う。
お市を末長く幸せにしてやって欲しい。
これで、儂たちは義兄弟だ何でも遠慮なく相談して欲しい……。
たとえば、たとえばの話じゃが、お市が 『噂と違っていて幼いなあ』 とか思ったとしよう。
大丈夫、仮定の話だ。
気にしないでくれ。
そんな時は、儂のことは気にせずに、お市がゆっくりと成長するまで待っても別に構わんぞ、ハハハ。
儂も同じ男じゃ、お主の気持ちはよく判る。
人それぞれに、好みというのもあるしな。
もし、仮にじゃ、これも仮の話じゃが……、
お市の侍女で気に入った娘がおれば、賢政殿のご自由にして構わんぞぉ、
そのつもりで見目よい娘を選んだのだからな、ははは。
まあ、何じゃ! お市達や侍女の全員が儂の妹みたいなもんじゃ。
そのつもりで、接してくれると儂としても非常~に有り難い。
好きな子を選抜してくれ、そして、ついでで良いからお市も頼む。
ははは、妹離れ出来ずおかしなことを言うアニキと笑ってくれ。
良いな賢政、皆がお市だ! くれぐれもそこんとこヨロシク!
お義兄ちゃんの信長より 』
うむうむ、やはり信長公はお市を大切にしているな~。
可愛い妹を護るためにお市の侍女を全員、俺の夜伽候補に仕立てていたとはな。
なるほど、合点がいった。
賢政は、ねねの件をようやく思い出し独り合点していた。
(ああ、あれはそう言うフリだったんだ、ねねも大変だなぁ~。)
しかし、すさまじい執念だな、さすがに、天下を取りかけた男!
浅井との同盟成立に全力を賭けているんだな。
これが戦国大名の心意気というやつなのだろう、俺もそう云うところは見習わないとな。
しかし、お市に手を出しいて良いのか悪いのか判らなくなってきたな。
どちらが、信長公の本心なのだろうか?
まあ、気にしても仕方がないな、もう嫁だし。
思っていたイメージとは良い意味で違っていたしな。
「すっごく、可愛いじゃないかぁ!! 」というのが、素直な印象だ。
まさに俺の好みにドストライクだし、俺の相手に妹たちの中からお市を選んだ信長は流石だと思った。
まさに、信長恐るべしである。
深読みしないで、有り難く頂戴するとしよう。
まずは今日の式典を乗り越えることだな。
「(今日の式典を) 二人で乗り越えような」
お市にそう声をかけた。
「はい……ついて行きます」
顔を赤らめて、可愛いではないか。
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・
式典の始まる前に…旦那様ったら…。
「(これからの人生を共に) 二人で(イロイロ)乗り越えような」
なんてもう、最高に素敵ですぅ!
うれしくて恥ずかしくて、もう顔から火を噴きそうですぅ。
「はいもちろん、もう一生旦那様について行きますぅ!」
しっかりと寄り添います。
旦那様からのプロポーズもいただけましたし。
ホントもう最高に幸せな『妹ちゃん』改め『お市』なのでした……。
(ふふっ、今晩が愉しみですうぅ。)
「ん? どうしたお市」
「あはは、なんでもない なんでもないんですぅ~」
はい、明日に続きます。