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いい加減、連日投稿は限界。精神的にも肉体的にも。
あと、いつまでもつか。
あっ、今回ちょっと短め。いや、これぐらいが普通か?
おはよー。えっ、誰に挨拶したかって? 樹にだけど何か?
あれから半日以上は経っただろうか?。
寝起きで働かない頭でしばらくぼーっとしていた。
あ、ああ、アレだ。 俺、異世界に来たんだった。
こうして座り込んだときの視点の低さ、そして馴染みのない床壁天井がひとつ繋ぎになってる丸っこい木目の部屋。あと、天井から生えてる果物みたいな照明。
どれも俺が現代社会で過ごしてきた日常では見たことの無い光景。
まだふわふわとした気分が抜けきらないが、この身体の感覚は今が夜だと告げている。
貴重な今の俺の活動時間だ、無駄には出来ない。
四方の木目の壁の一面に、すぼまった様な凹みがある、そこへ四つん這いで這って進むと、その壁の手前の床が一段凹んでおり、そこに幾つかのパーツを組み合わせた様なシンプルな皮靴がある。俺の靴だ。
それにノロノロと足を通し靴紐を結び、「よっこらせっ、と」立ち上がり、壁の凹みに手をかける。
するとその行動に反応して、今の今まで硬く閉じていた木目の壁がいっきに丸く開いた。今の自分ほど小柄なら屈まずに通れるくらいの大きさに。
夜特有の冷たい空気がその巨大な樹の虚から入り込んできた。
完全に目が覚め、意識が鋭くなる。
けして夜風だけではない、夜になってこの肉体が悦び始めたのだ。
今の俺の瞳の色は変わっているだろう。文字通りに。
外へ一歩、踏み出すときに夜潜を発動。
これで俺を認識出来るのはこの一時の仮宿になってくれてる黒い大樹だけだ。
外に出ると黒い大樹の電柱より太い枝の上に出る。俺が今朝一休みしていた場所だ。
すると既に傍らには、まだ本体の幹から生えたままの木材で組まれた洗面台に新しい水が張られていた。
後でお礼に魔力あげとかなきゃな~、と思いつつ有り難く使わせてもらう。
バシャバシャと冷たい水で顔をゆすぐたび、ショボショボしていた目元口元がスッキリとしてきた。
ついでに口もゆすいで、そのまま飲んで喉を潤す。
ふと、水面に映る自分を見つめた。
相変わらずの幼くも妖艶な美貌。
その両の眼球は黒く、瞳は満月のような黄金に輝いていた。
俺が女になったことを改めて認識し、あまりの喪った物の喪失感にうちひしがれた、夜明けの直前。
あの後も、幾つか状況が動いた。
初めて今の自分の顔を確かめたときに気が付かなかったのが不思議なのだが、
もう一度水面に顔を映すと自分の真っ黒な眼球と金ぴかに光る瞳が映っていた。
………俺は確か、瞳はエメラルドに輝くような碧の瞳に設定していた。眼球を黒く染めるだなんて、こんな悪趣味なキャラクタークリエイトを行った記憶は無いのだが。
と、不可解な事実に眉をひそめていると、その答えはすぐ訪れた。
遂に夜明けが迫り、段々と辺りが明るくなると黒と金に染まった俺の目玉も、連動して変化してきたのだ。
スーーっと黒かった白目が脱色するように元の色を取り戻し始め、爛々と輝く金が点滅しながら弱々しくなり、俺が元の世界のパソコン画面で設定した覚えのある碧眼に戻った。
………うぅ~ん、状況から察するに、夜の間は眼球に色が変化するんだろう。
アレだけ、夜になると恩恵を得られるんだから、体の一部分ぐらいが変異しても不思議じゃない、か。
そうして暫く考えに耽っていると、身体が長時間寝っ転がった状態から急に起き上がったときのような目眩が一瞬。
何が? 、と思うまもなく感覚的に理解した。
ついに我が身を守る夜潜が解けたのだ。
それは数時間に及ぶ、素人のサバイバルタイムのゴングを意味した。
ふぅ~っと、諦念を含んだ溜め息が漏れる。
このままここでジッとしているか、安全な場所を探しに森をさ迷うか。
来てしまった身の危険に、少しばかり思考に自暴自棄が入り、今後の対策の考えが乱れる。
これでは駄目だ、とこの時は思ったのだが、実はコレこそが俺の命運を分けていた。
で、思考が逸れた俺は取り敢えず、とても助けになったこの黒い大樹にお礼でもしようと考えた。少なくとも今はピンチとかじゃないし、余裕のあるうちに、と。
ふむ、ではお礼に何を送ればいいのか? 、相手は人じゃなくて樹だもんな~。何で喜ぶ?。
やっぱり植物なら養分とかか?。俺の手持ちで栄養になりそうなのは…………………死体…?、
いや駄目だろ。人道的に。
ただでさえ異世界に来てから道徳的な道をガッスガッスと踏み外しまくってるのに、さらに業を重ねるとか勘弁してほしい。
というか樹に死体で栄養を与えるというコトは樹の下に死体を埋めるというコトで死体遺棄ですねわかります!!。
ん?、いや、………なにも形のるものに拘らなくてのいいんじゃね?。
この世界はどうやら、優しくないけどファンタジー。
なら、魔力的なものでも植物の栄養になるのでは?。
俺は、もうずっと昔の事に思える、昨日の短剣の男のときにやった魔力操作。アレを思い出して、もう一度やってみる。
手のひらから、何か目に見えないものが噴き出している感触。よし、成功。
そのまま俺は樹の幹に手を突き、ドックンドックンと注ぎ込む。
片手でウインドウ画面を開き、ステータスをチェック。俺の魔力は280、全部使うのは色々と怖いから、取り敢えず200を切る前に止めようと思っ……………、
ビクッッッッブルルブルルルルルッ
…たところで、樹がメッチャ震え始めた。
揺れるじゃなくて震える、そりゃーもう小刻みに。お前は電マかってレベルで盛大に。
あまりの展開について行けず唖然としていると、気が付けば樹の幹から手を離していた。
すると樹の振動が止まる。
……………、
…………………まさか、
樹の幹に魔力を送る。
樹が震える。
魔力を止める。
振動が止まる。
魔力を送る。
振動、再開。
魔力を止める。
止める。
送る。
再開。
止める。
止まる。
………、
…………………、
………………………超、面白い。
こ、この黒い大樹は、俺にどれだけのモノを与えてくれるんだろう。
休憩場所からはじまり、食料、現状認識、そしてエンターテイメント。もうこの黒い大樹に足を向けて寝れないんだけど。
視界の端に映るステータス画面の魔力残量はとっくに200を下回っていたが、全然構わない。むしろもっと魔力があれば更にあげたかった。
まあ、まだ魔力をあげるのが正解だと決まった訳じゃないけど。………嫌がってる風じゃなかったし、大丈夫かな?。
ああ、そうだ。もう呼び捨てじゃ駄目だろ、次からは愛と親しみと感謝でもって『大樹さん』と呼ぼう。
そうやって、俺がひとり決意をあらわにしていると、大樹さんの幹の一部、ちょうど俺が手を突いて魔力を送った所に、ポカリと穴が開いてた。
…あれ?、なんかまずった?。
焦る俺をよそに、大樹さんに開いた穴は段々と広がり、最終的には、みょ~~んって感じで規模を拡張。大樹さんの幹のど真ん中に巨大な樹の虚が出現した。
…とにかくデカイ。普段、野鳥なんかが巣に使っているイメージのとは文字通りスケールが違う。
入り口だけでも直径1,5メートル以上はあるぞ。
俺は恐る恐る中を覗くと薄暗いがちょっとしたテントよりも広い空間がお出迎え。
すると、天井にあのナスみたいな形の激ウマ果実のミニチュア? みたいなのが、数房ピョコリっと生えてきたて照明のようにペカーッっと、橙色に光り出した。
…何気にクオリティ高くね?。
なんだろう、こんな部屋とも言えない樹の穴が、とんでもなくお洒落に見えてきた。
そうやって感心していると、トンッって後ろから優しく押される感触。
後ろに顔を向けると、あの細い方の樹の枝が器用にサムズアップしていた。…あ~、この世界にもあるんだね、そのジェスチャー。
俺は細い枝――これも大樹さんの一部だから、まとめて大樹さんでいいや。――の真意をはかりかねていると、大樹さんが枝によるジェスチャーで何かを伝えてきた。
えぇ~っと、力を抜くような動作のあと、後ろの穴を指し示し、最後に枝をしならせ畳み、ゆっくりと上下に揺れる。
うぅむ、多分だけど――
「えと、この穴の中で、休んでってコトかな?」
大正解!!、と言わんばかりに楽しげに枝が舞っている。どうやら大樹さんは余程の世話好きらしい。
ん~、じゃあ、いく宛もないし、御言葉に甘えようかな?。
それに、恩を返すのもさ、魔力なんて適当なもんじゃなくて、もっとしっかりした物で返さないと。
そうと決まれば、ステータスをメキメキ鍛えてさっさと強くなって、恩を十倍、いや、百倍で返さないきゃぁ!!。
ひゃ く ば い が え し だぁー(半沢風)
そうして、
思えば、元の世界も含めれば、24時間以上も寝ていなかった事に気付いた途端、眠気が襲って来て、
なんとかギリギリ意識を繋ぎつつ、大樹さんの穴に入り、入り口付近で靴を脱ぎ、なんとかアイテムボックスから初期のジャケットを3枚取り出し、それにくるまったところで、爆睡開始。
ちなみに、夢は見なった。
次回、遂に魔術スキルが炸裂!!!。
………あと、運が良ければ水浴び回かも?