表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

 

 うわぁ。

 

 巨大なストーンサークルの1つによじ登って、天辺からの眺めを見た瞬間の感想が、うわぁ、だった。

 

 はっきり言おう、あの自称神より上位の《何か》のヤツ、惨いことしやがる。

 

 先ず、ストーンサークルの規模。めっちゃ広い。反対側の石柱まで何百メートルあるんだ?

 

 で、人の数。測定不能。滅茶苦茶多い。

 いや、ほんと多すぎじゃね?。

 例えるならそう、夏と冬に開催される日本最大の同人誌即売会、そこに集まる群衆を上空から撮影したのをテレビニュースで観たことがあるが、コレはその倍以上の人数だ。

 

 いや、呼びすぎだろ。本当に惨いわぁ。

 

 んっ?、とそこであることに気付いた。

 人の流れが、変わってる?。

 

 ふと、脳裏によぎった推測に悪寒。

 

 俺は群衆の中央から手前にかけて目を起こらす。

 

 ……やっぱり、人々の行動が変わってきた、中央から伝播するように。

 今までどうしていいかわからず右往左往していた人たちが、明確な恐怖からの逃走に変わってきた。

 上から見ると、お祭りの金魚すくいのポイから逃げる金魚達のように、人の動きが渦巻いている。

 

 確実に中央付近の殺人騒ぎが広まっている。

 あのドラグーンの男が、ザ・殺人鬼な短剣の男を殴って止めてくれたが、

 まだまだ居るんだろう、殺してるヤツらが。

 

 どうして殺すんだろう?、元々そういう願望があったのか、元の世界でも殺してたのか、ゲームだからいいじゃんって思っているのか、はたまた

 

 

 ド ド オ ォ ォ ォ ン ー ー

 

 

 物凄い爆音が響いた。

 

 空気が震える。

 

 俺はびっくりして、石柱から落ちそうになったが、何とか踏ん張る。

 

 なんだぁ、と思い地上を見ると、騒ぎの渦中の中央付近で、巨大な爆炎が上がっていた。

 

 流石に俺もポカーンとなる。

 この短時間で結構な修羅場を経験したつもりだが、こんな映画でしか見ないような派手な場面に出くわしたら、そら唖然としてしまう。

 

 だがそうも言ってられない。

 間違いなく、あの爆炎は人為的なものだ。

 そして、それを可能にする<能力>か<スキル>を持ち、それを持てるだけのポテンシャルをもった上位種族。それも、俺と同格の超激レア種族の可能性も……。

 さらには、それが人の密集した場所でその力を行使するような危険人物だということ。

 

 …早急にこのストーンサークルから離れたほうがいいな。

 

 今の爆炎でパニックの伝播が一気に加速した。上から見るとよくわかる。逃げ惑う人々がストーンサークルの外側に飛び出すのも、時間の問題だろう。

 

 そうなる前に、だ。

 

 

 ストーンサークルの石柱から素早く降りると、ストーンサークルの外側の風景を確認。

 だだっ広い草原だった。見渡す限り~ってヤツ。

 

 多少地面が隆起してちょっとした丘の様になってる場所も、幾つか見受けられるが、ほぼ平野。

 しかもストーンサークルのあるエリアが地味に高台らしく、見晴らし最高ときた。

 

 ピクニックならいざ知らず、離脱という目的の場合この立地は最悪。

 だって隠れる場所がないから。

 

 こんな所で背中を向けてのこのこ走ってて、外側まで出てきた人殺しが俺を見つけたら、

 その人殺しが魔術系スキル等の遠距離攻撃手段を持ってたりしたら、

 俺はいい的だろう。

 

 リスクが高過ぎる。

 

 

 さて、どうしようか。

 

 巨大石柱にもたれ掛かりいい加減疲れてきた頭で考える。

 単純にこの状況どうにかする決定打が欲しい。中途半端な作戦じゃ駄目だ。マジで死ぬ。

 

 何かヒントがないかと、コレまでの事を思い返す。

 

 あっ、あるじゃん。物凄い大ヒントが。

 

 俺は目の前の空中に人差し指を伸ばし、チャックを開けるような感覚で、ぴっと降り下ろす。

 するとソコを起点に半透明の灰色のウインドウが出現した。

 

 ………できるとは思っていたが、実際にやってみると感慨深いものがあるな、ちょっと感動。だからって自称神以上の《何か》には感謝しないけど。

 

 ともかく、今はウインドウ画面のほうに意識を向ける。

 

 

●ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●

 

 [ステータス]

 [装備]

 [アイテムボックス] □

 [マップ] □

 [スコア]

 [特典・ガチャ]

 [転生] □

 [設定]

 [ヘルプ]

 [フレンド]

 [パーティー]

 [クラン]

 [メール]

 [チャット]

 [GMコール]

 [永住]

                   ―[閉]―

●ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●

 

 

 …………………………うん、なんだろ。いや、あのね?。色々と気になるというか突っ込み所満載過ぎるんだが、今は必要なのは[ステータス]のとこなんで、他は一旦無視。

 

 [ステータス]の部分を突っついて見ると、ウインドウ画面に重なる様にステータス画面が出現した。

 

 ええっと、どれどれ~、

 

 

◆―――――――――――――――――――――――――――◆


名前 アーク

種族 深淵(アビス)ダークエルフ

性別 女

年齢 14

称号 外道

職業 死体漁り


生命力 1112/1112

魂力  700/700

筋力  37

体力  37

敏捷  147

器用  67

魔力  280/280

精神力 135

魅力  610

運   -10 ※闇関係限定 +1000


状態 疲労(弱)


<能力>

【深淵の瞳】【常闇の皇族】【暗黒星の寵愛な加護】【魔王候補】【樹海の主】【紋章-闇-】【詠唱声帯】【反射魔力】【精霊化】【不老長寿】【才能-統率-】


<スキル>

【闇魔術Lv1】【土魔術Lv1】【精霊魔術Lv1】【補助魔術Lv1】【幻惑魔術Lv1】【魔力強化Lv1】【魔力増加Lv1】【魔力精密操作Lv2】【身体能力強化Lv2】【大剣Lv1】【大槌Lv1】【大鎌Lv1】【アームLv1】【レッグLv2】【格闘Lv1】【突進Lv3】【隠蔽Lv3】【探知Lv1】【毒薬調合Lv1】


<控えスキル>

〔・なし〕

◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 

 

 落ち着け、俺。

 

 ツッコむな、絶対にツッコな。

 特に外道と死体漁りは、今は全力でスルーだ。

 

 ふう~(深呼吸)。

 

 よしっ! やるぞ!!

 

 

 と、気合いを入れたものの、お目当てのモノはあっさりと発見した。

 

 それがこれ。

 

 

 【常闇の皇族】

 

 闇の眷族達が祭り上げる皇族。常世全ての闇に愛されし存在。闇の本質に近いため、光との親和性が高い。

 

 <能力効果>

夜化(よるか) ーー自らを中心に辺り一帯の空間を夜にする         。夜に使用した場合、さらに夜が          濃くなる。24時間に一度だけ        使用可能。

夜潜(やせん) ーー夜に潜る。他者は認識できない。夜限定。

夜魔法(よるまほう) ーー夜魔法を行使する。夜限定。魂力100消費。

夜爆(やばく) ーー夜を爆発させる。高確率で自爆。

光換(こうかん) ーー自らが干渉する光と闇の相違を等化交換する。      魂力消費。

夜喰(よるぐい) ーー夜を食べる。回復効果あり。

夜狂(ナイト・オブ・バーサーク) ーー夜の間、狂気に身を堕とす。

夜騎士(ナイトナイト) ーー???

光闇混合(ザ・カオス) ーー???

 

 

 

 ………………うん、アレだ。ほら、今必要なのは夜化と夜潜だけだから、あとのは……無視で。

 

 ここでふと、思いの外に希望が見えてきた為か、思考に余裕が出てきて、今まで思考すらしなかった物事に気が付く。

 思えばコレから俺がしようとする行動に、ソレはとても重要なことだった。

 

 単純なことで、誰かと一緒に逃げるべきかどうか?、だ。

 

 今後、誰かと共に行動する上でのメリットは、自らが危機的な状況に陥った際、助けてくれるだろうという、打算。そしてお互いあらゆる状況で助け、助けられるうちに、生まれるであろう信頼。そして、孤独感に苛まれない。

 

 こんなとこだろうか?。

 

 だが、その集団行動の上でのリスク、コレがデカイ。

 特に今の自分には。

 

 そもそもどうやって仲間を募るか、この時点で既に詰んでる。

 こうしている内にも中央から迫る狂騒の波は、あと少しでこのストーンサークルの外側付近まで到達するだろう。

 俺自身、あまりコミュニケーション能力が達者な方ではないのもあるが、まさに地獄と化した場所でのんきに仲間を募集するなど、現代社会のコミュ力お化け達でも無理だろう。そも、ネトゲなんてやってる連中にそんなこと期待するだけ無駄だ。無論俺も。

 

 さらには他の人々と俺の《力》の差、コレも致命的なリスクだ。俺の引き当てた超激レア種族と、その他大多数のヒューマンとの格差は共に行動すれば間違いなく確執を呼ぶ。

 

 そして俺がコレから逃走先に選んだ場所も問題だった。背後のストーンサークルとは反対側の方角の、遥か視界の奥、遠く過ぎて判りづらいが、あの濃い緑色は、森だ。

 俺はエルフとしての特性と<能力>により、予想の範疇を出ないが、かなり快適に過ごせるのだ。森で。

 

 なら、同系統のエルフ系種族を仲間にすれば? ……というわけにもいかない。

 まず、居ないのだ、エルフが、近くに。

 根本的なことで、この場所にくる切っ掛けとなった例のネトゲ、そこで初期に選択できる種族はヒューマン一択あり、初回のキャラクタークリエイト時のみ回せる《種族ガチャ》、そこでヒューマン以外の種族が出るのは滅多にない。

 エルフ、ドワーフ、ビーストといった《転生システム》で成れる基本派生種族でも、ガチャの出現率は2~3%ほどが関の山。

 ゲーム開始直後から課金しまくる猛者も間違いなく少ない部類だろうし、そもガチャを回した結果にヒューマンが出て、ソレが個体差によりスキルスロット数が少なかったら? というリスクにより一回無料ガチャを一度も回さないプレイヤーも多いだろう。

 だからと言うべきか、運が無いと言うべきか、

 

 ちらり、と石柱の影から覗いた限り、やはりエルフらしき姿は見当たらなかった。

 

 でもって、…問題はコレだけではない。

 俺が今から逃走に使おうとしている<能力>の効果、夜化と夜潜、この夜潜のほうが問題なのだ。

 夜化は…、信じられんが太陽が頭上にある真っ昼間が夜になるんだろう。 説明どうりなら。

 で、夜潜だが……どうにも、一人用らしいのだ。

 

 今は夜ではないから不発になるのは理解した上で、少しでも練習しようと何度か発動してみた。

 すると、まあ、あくまで感覚的なものだが、そういうものだと感じた。

 

 

 というわけ、メリット1つに対しデメリット5つもある現状、単独で動いたほうが、単純に生きれる。

 

 頭で理解していても、孤独というのは耐え難いな。

 まあ、元の世界でも一人のときのほうが多かったけどな。

 

 …………さて、覚悟決めよっか。

 

 

 

 そこから、状況は一気に動き出した。

 

 ………主に俺が原因で。

 

 

 

 ふと、俺は先程からもたれ掛かっている巨大石柱に目を向けた。

 で、俺はこう思った、石柱(これ)をアイテムボックスに入れといて、いざというときに取り出せばイイ盾にでもなるんじゃないか、ってさ。

 もたれ掛かったまま、大きさからして内心出来ないと思いつつ、いい加減馴れた《アイテムボックスに収納するイメージ》を行使した。

 

 すると、フッ、と背中の支えが消えた感覚。

 後ろに倒れこむのを慌てて、高い基礎ステータスでもって、力ずくで上体を起こす。

 その上体を起こす勢いのまま、グルッと勢いよく背後に振り返る。

 

 そして視界に入った光景は想像を絶していた。

 

 

 ストーンサークルが、無い。

 

 俺がもたれ掛かっていた巨大石柱だけでなく、ソレ以外も、全部。

 まさか、全部ひとつ繋ぎだったとでも? アイテムボックスに重量制限とか無いの? アレって何千トンって重さだよね? えっ? ええぇ!??

 

 さらに混乱する俺の視界に不可解な光景が映った。

 

 なんで皆、うずくまってんだ?

 

 全員ではないが、見た感じ相当な人数がこけたり、尻餅をついたような姿勢になっていた。

 

 地面を見てみる。

 この辺りは見た通りに草原なので、当然草が生えている。だが、ストーンサークルがあった内側には所々まるで埋まっていた岩を抜いたように、土が剥き出しの段差ができていた。

 どうやらこれに脚を捕られたようだ。

 

 たしか、ストーンサークルの内側には廃れた神殿のように所々に石畳があったはず。

 

 ………そこまで考えれば流石に分かる。

 

 ストーンサークルは全ての石柱と石畳が繋がっていて、それで一つだったんだろう。

 

 つまり、ストーンサークルの内側にいた相当な人数が転けたのは、………………俺のせい。

 

 ……、

 

 …………、

 

 ………………、

 

 ……………………、

 

 ………………………よしっ!!

 

 

 逃げよう。

 

 

 夜にぃーーーなぁーれぇぇーーーーーー!!!!!!!!

 

 

 俺の全身から、黒紫色の粒子が沸々と滲み出てくる。

 まるで自分の中の……、いや、自分の存在の真芯が活性化して何処かへ飛び出したくなるような。

 俺のど真ん中にあるこいつは、魂か?

 

 予想なんてできる筈もない、自分自身の変化に目を見開く。

 

 一瞬、黒紫に輝く粒子がカッ! と一際光る、そこから一筋の光線が空に打ち出され、永遠を思わせる距離感を突き進んでゆく。

 

 空に黒紫の光線が伸び消え、

 

 一拍、

 

 

 ゴパァァァァァり

 

 

 そんな音が聞こえた気がした。

 

 それほどスケールがでかく、そして静かに、

 

 辺りの世界は夜になる。

 

 

 俺はソレを当事者として、ずっと見続けた。

 

 澄んだ水面に墨汁を遠慮なくドバドバと流し込む様に快晴の空が暗く沈む。

 

 まるでCGのような、でも現実に自分が起こした生々しい現象。

 

 俺は、 ああ、ココ地球じゃね~や。って、

 

 理解したというより、納得した。

 

 

 夜になった。

 すると俺の中にこの世界の認識以外の変化が出た。

 

 とても、落ち着いていて、心地がいいんだ。

 

 短剣の男のときのように調子に乗ってる訳でも、さっきのストーンサークル収納みたく気が散ってる訳でもない、

 

 その時より意識が高揚している。なのに隙がない。

 

 周囲の喧騒が、事細かに理解できる。気持ち悪いぐらいたくさんいる人間の感情が、一つ一つと纏めて理解できる。

 

 でも要らない。だって何も脅威じゃないから。

 

 

 ウフフ、

       アハハハハハ、

 

 口角が上がるのが()められない。

 

 笑みが深まるのが()められない。 

 

 

 フフフ、……でもまあ、目的は果たそう。

 

 

 夜潜(やせん)

 

 

 音も無かった。

 何も無かった。

 

 初めて扱うコイツを俺は自然と扱っていた。

 俺が知らなくても、体が知ってた。

 

 …………心の何処か。ソコから、この感覚は大切に覚えとかなきゃダメだって、聞こえた気がした。

 

 今は無視。

 だって楽しいから。

 

 しっかし、この夜潜ってのは面白いな~。

 だってコレ、夜に潜るって言っときながら、追い出してるようなもんじゃん。

 

 

 よし、んじゃココでやることなんてもう無いし~、さっさと森に向かうかねぇ~。

 

 

 

 こうして、俺は駆け出した。

 

 いや、走ると言うよりスキップでもって草原を駆けていた。

 鼻歌を歌いながら。

 

 

 異界からの召喚者はこうして、文字通り野に解き放たれた。

 

 

 ♪~~~~~♪~♪~~~~♪~♪♪

 

 

 

 次回、最終k……んじゃなくて、

 

 ようやくTS要素が活躍するときが来ました。ココまで長かったぁ~。(。-∀-)

 

 あっ、次は難産になるかもしれないんで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ