表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
欠片小話  作者: 鏡野ゆう
4/17

騎士殿はかく語りき - 僕の人魚姫 より -

彼方さんが語っちゃいます。



 あれ、君はもしかしてあの時の。久し振りだね、今はやはりデイリー東都に? そう、良かった、日和がどうしているのかしらって心配していたから。帰ったら知らせないとね。


 ところで、あの時の記事を読ませてもらったけど僕達のことは書かなかったんだね、どうして? あれを書いたら間違いなくスクープだったのに。お陰でこっちはサプライズが出来たから楽しかったけど。ああ、僕の話も聞いてからでないとって思ったのか。そうだね、確かに入籍した時の僕の年齢を考えると色々と勘ぐっちゃうよね。今は時間ある? だったら話しておこうか、僕と日和のこと。その方が君もスッキリするだろう? 日和にインタビューした日に話してあげても良かったんだけど、君、物凄く緊張していたから気の毒になっちゃってね。僕と日和の二人を相手出来る状態じゃなかったし。 


 さてと。


 君は僕の年を知ってるよね? そう、40歳。つまり彼女と入籍した時は僕は20歳だったわけだけど、その時には既に日和は真子を身ごもっていた。本当はね結婚が認められる18歳になったら婚姻届を出したかったんだけど日和が断固拒否しちゃってね。彼女なりに僕の俳優人生を心配してくれてのことらしい。だってあの頃ちょうど僕は売れ始めてたから、そういう問題で躓いて欲しくなかったってことなんだ。


 そこで感心しない。僕とにっては馬鹿馬鹿しいの一言だったんだから。それで売れなかったら僕の実力なんてそんな程度だってことだろ? 愛してる女性と一緒になれないのに俳優を続けることになんの意味がある? んー・・・いつ彼女に好意を持ったのかなんて覚えてないな、共演が続いて気がついたら愛してたから。・・・なんで君が赤くなるの、そこは僕が照れるところでしょ。


 君達のお陰で色々なアイドルや局アナとの噂が流れたけど、僕は16の時から日和一筋だから。ああ、もちろん男の趣味もありません。あの噂は何処から流れたんだろうねえ、一度きちんと話をつけなきゃいけないと思っているんだけど、もしかして君の前の職場かな。え、探ってみる? いやいや、そんなことしている暇ないでしょ坂口さんの下で働いていたら。気持ちだけ受け取っておくよ、有難う。


 え、せっかくだからあの時の日和にした質問を僕にしたい? そっちの時間は大丈夫? OK、じゃあ答えようか。


 先ずは基本的なプロフィールだったね、名前は水嶋彼方。たまにカタカナで書かれるけど漢字だからね。年齢はさっき言った通り40歳。


 デビューしたのは大河ドラマで主人公の赤ん坊の時のシーンらしいけど、僕は覚えてないからねえ、あれをデビュー作と言って良いものか。きちんとセリフを貰うようになったのはその五年後の大河ドラマだったかな。セリフよりも所作で苦労した記憶があるよ。あと着物で雪の中を歩くシーンとか辛かった記憶しかないな。ほんと、俳優って大変だよね。ああ、記者も張り込みで同じ辛さを味わうのか、お互いに大変だね。そうそう、その年に民放のドラマで日和と姉弟役で共演したわけだけど、その時はまさか今みたいになるとは、さすがの僕も考えてなかったと思うよ? え、だって5歳では幾らなんでも無理でしょ。


 一番印象深い作品かあ・・・そうだねえ、15歳の時の学園ドラマかな。あのドラマのお陰でこの業界での同世代の友達が増えたんだ。その時の友達とは今も親しいしね、先生役の郷田さんには色々と相談も乗ってもらったりしていたよ。演技のこともあったけど日和のことも。当時、日和とのことが週刊誌に洩れなかったのは郷田さんやあの時の共演者のお陰なんだ。いい友達だろ?


 セリフを覚えるコツかあ、僕もコツを日和に教えてもらったクチなんで彼女と同じかな。彼女のお陰で長回しが苦にならなくなったからね。やっぱりリズムって大切なんだと思ったよ。


 私生活はね、それこそ知りたくないって思ってる人もいるんじゃないかなあ。だってサプライズの後、ショックでしたってファンレターも来たし。うん、殆どは好意的なものだったけど中には、ね。そういうのもあって秘密にしていたってのもあるんだ。僕達が入籍した時もね、かなり悪質なストーカーが僕に付き纏っていてね。そういうのもあって公表しないことにした。マコのことも同様。他にも色々な事情があわさって養女に出すことにしたわけだけど、いい娘に育ってくれて嬉しいよ。本人はお父さんとお母さんが倍になったって喜んでくれているよ、こちらの事情のせいで手放したのに嬉しい限りだよね。


 だから日和との関係は夫婦。子供はマコしかいないけど、そのうち彼女が結婚して子供を産んでくれたら孫ができるから、今から家族が増えることを楽しみにしてるんだ。え? マコに相手がいるのかって? さあ、僕は聞いてないけど。男親ってそういうところでヤキモキするのに話してもらえないから辛いって話を榊原のお父さんとも話してるんだ。男二人で酒飲みながら愚痴るってなかなか寂しいものだよ、いや、本当に。君も結婚して娘ができたら分かるから。


 あ、メールだ、ちょっと失礼。日和からだね。あー・・・女帝様は西風のケーキが御所望のようだ。買っていかないと。パシリ? そんなふうには感じないな。僕が好きで日和の世話を焼きまくってるだけだから。楽しいよ、結婚生活。君もいい人に出会えるといいね。うん、じゃはこれで失礼するね。あ、そうだ、デイリー東都、うちでもとることにするよ。じゃあ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ