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欠片小話  作者: 鏡野ゆう
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女帝様はかく語りき - 僕の人魚姫 より -

松下日和様ご降臨w



 あら、こんにちは。


 もしかして新人かしら、珍しいわね、ゴシップ記事ばかりのこの雑誌に新人さんが抜擢されるなんて。そんな汚れの無い状態なんてそんなに長続きしないわよ、心しておきなさい、そのうち真っ黒クロスケよ、貴方。信念があるうちに転職をお薦めするわ。


 で・も。


 貴方みたいな子が取材に来てくれて気分が良くなったから、今日は追い返さずにちゃんとお話してあげる。そうよ、取材、お受けするわ、だから聞きたいことをちゃんと質問なさいね。そうしないと答えてあげないわよ。ストレートすぎる質問もNGよ。ちゃんとオブラートに包んで上品に質問なさい。さ、始めましょうか?


 先ずは基本的なプロフィールからね。いいわよ、そこは基本ですもの。ちゃんとお答えするわ。事務所が公表している通りだけれど、名前は松下まつした日和ひより。日和って字は書ける? そうそう小春日和のヒヨリよ。年齢は45歳ね。そう、今年でデビュー35年になるの。貴女が生まれる前から女優をしているってことね。お父さんがファン? あら嬉しい。そういうリップサービスを聴き手が言うことも大事よ。


 デビュー作はドラマの子役からね。今は大御所って呼ばれている里山将さん主演の刑事ドラマがデビュー作よ。そう、里山さんの娘の役柄。子役デビューとしては遅い方じゃないかしら、一緒に共演した彼方君は赤ちゃんの時から大河ドラマに出ていたって話ですもの。年齢イコール芸能活動年数ってのも凄いわよね。


 今までで一番印象深い作品? そうねえ、色々な役柄を演じたけれど初めて悪女役をやった時かしら。面白かったわよ。相手の女優さんとの掛け合いとかね、リハーサルでも二人でノリノリで罵倒し合ったりして。意外とストレス解消になるわねってアドリブをたくさん入れたりして楽しかったわ。そうよ、あの武蔵野ユリさんとの罵倒シーンよ、見たことある?


 長いセリフを覚えるコツはね、リズムで覚えるの。歌ってどんなに長くても歌詞を覚えられるものでしょ? あれと同じ要領なのよ。だから作家さんの腕が大事なの。文章にもリズムってのがあってね、読むのも覚えるのも、正しいリズムに乗って書かれた文章ってすごく読みやすいし覚えやすいのよ。これって小説でも同じ。読みやすいって思う本は自分に合ったリズムの文章ってことなのよ。一度、本屋さんで試してみなさい、私の言っていることが分かるから。だから貴方もそういう人に読んでもらえるような文書のリズムを身につけることが大事ね。精進しなさいね。


 私の私生活? あら、そんな知りたいの? 皆、“女優松下日和”の素顔なんて知りたくないと思うわよ? あくまでもテレビの向こう側にいる私を見たいんだと思うわ。だって45歳よ? お化粧を落とせばそれなりのシワもあるし、贅肉だってこの辺りについてくるもの。頑張ってジム通いをしているけど、なかなかついたお肉って落ちないものなのよね、イヤになっちゃうわ。そういうのは世間のオバサンと大して変りないのよ、御愁傷様♪


 え? 彼方君との関係? そういうストレートすぎる質問はNGって言ったのに仕方のない子ね。まだ遠まわしに質問するってことが出来ないのね。こればかりは経験が必要かしら。あら、噂をすれば本人が登場したようだわ、彼に尋ねてみる? あら、イヤなの? でも一緒にお茶ぐらい構わないわよね? 彼方君が入れてくれるお茶は美味しいわよ? 緊張して味わうどころじゃないです? そんなほっそい神経じゃ、この世界で芸能記者なんてやってられないわよ? チタン合金並みの神経じゃなきゃ。


 チタン合金の記者? そうねえ・・・デイリー東都の坂口さんなんてチタンそのものじゃないかしら。芸能界から政界まで幅広く取材してるから切り込み方が独特で記事は面白いわ。え? たまに読むわよ、私も。オバサンですもの。あの人は芸能リポートより社会面の記事を書いていた方が良さそうよね。あ、そうだ、貴方、東都に転職しなさいよ、坂口さん、遣いっぱしりが欲しいって言ってたから引き受けてくれるかもしれなくてよ? なんなら私が口をきいてあげる。


 あら、彼方君、ありがとう。彼方君、紅茶も日本茶も煎れるのがとっても上手なの。私なんかティーバッグでもまともに煎れられないのにね。彼方君と出会ってから天は二物を与えずなんて嘘っぱちだってことが分かったわ。彼、腹が立つくらい本当に何から何まで出来るんだもの。


 ああ、彼方君との関係ね。どうしようかしら、もうちょっとスマートな質問の仕方をしてくれたら答えてあげるんだけど。意地が悪い? そりゃそうよ、ここの前任記者にどれだけ私達が嫌な思いをされられたか忘れたの、彼方君。今日だってこの新人さんじゃなかったら塩まいて蹴っ飛ばして追い出していたんだから。


 けど、そうね。今日は気分がいいから特別に教えてあげる。私と彼方君はね夫婦なのよ。いつから? 私の25歳の誕生日に入籍したの。だから雑誌で言われているような不倫でも愛人関係でも事実婚でもないの、正真正銘の夫婦。ついでに言うと彼方君が同性愛者だなんてのも出鱈目ね。私達はプラトニックな関係じゃないんだから。あらあら、目が落ちそうだし顎が外れそうよ、気をしっかり持ちなさい。


 なんで話す気になったかって今日は気分がいいからに決まってるじゃない。私達の娘がね、帰ってきたのよ20年ぶりに。色々と事情があって手元では育てられなかったんだけど、とってもいい子に育っていて嬉しかったわ。貴方も親になったら分かると思うけど。あら、子供のことも知りたそうね。けどこれはまだヒ・ミ・ツ。本人にもまだ話してないんだから、ちゃんと落ち着いたら各社にサプライズFAXを送ってあげるわ。だから、子供のことはまだオフレコよ。


 それで、どうする? 東都の坂口さんに口をきいてあげるって話。 そう、だったら貴方が帰ったら連絡しておいてあげる。彼から電話があると思うから楽しみにしてなさい。但し、彼、仕事に関しては妥協しないから覚悟はしておきなさいね。じゃ、今日はこれでお仕舞い。次に会う時にはデイリー東都の記者になってることを期待しているわ。ま、才能があれば芸能記者じゃなくて政治記者として取材活動をすることになるかもしれないから、その時は会えないでしょうけど。



娘じゃと(´・ω・`)

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