序章
閑散とした薄暗いリビングで、一つの封筒を開け中を確認していた。
いつもと何も変わらない一日の始まりだと思っていた。しかし、それはただの思い込みだったとすぐに気付く。
何故かって? 簡単だ。さっきまでリビングにいたはずの俺が今は空にいるのだから。
俺とともに地上へと落下する影が二つ。 一人はちっこい男の子で、もう一人はいかにも「お嬢様です」みたいなオーラをまとった美少女だった。
俺たちはなす術もなくただただ落ちていた。そして、強い衝撃とともに意識を一気に持って行かれた。
気がつくと全身を濡らした状態で地面に寝っ転がっていた。隣には、湖が見える。どうやら俺は湖に落ちたあと地上に引き揚げられたらしい。
では一体だれが?
その答えは上から降ってきた声でわかった。
「意識が戻ったようですね。無事こちらの世界へ召喚することができてよかったです」
「……」
「どうしましたか?」
どうしましたかって言われても、今の状況を見てどう答えろと? そもそも、さっきまでリビングにいたはずの俺が気がついたらよくわからない世界に呼び出され、気を失ってたら見知らぬ少女に膝枕されている状況でどうしろと? 突っ込みたいところはいくらでもあったが、それは今までもよくあったこと故にこのくらいの事態は扱いなれている。だから、とりあえず質問した。
「ここはどこだ? 少なくとも俺にとって異世界であること以外に何もわからないんだが……」
「ここですか? ここは全世界の原点にして始まりと終わりの世界[Last Warld]です。まあ、私たちは精霊界と呼んでいますけどね」
「俺たちは何故呼ばれた? そして、あんな高度から水に落っこちて何故生きている?」
「何故呼んだのかは後々話すとして、何故生きているかって話ですがそれはあなたが才能保持者になったからですよ」
「SEED Holder? 何だそれは」
「それも合わせて本拠地に戻ったら、この世界の仕組み、何故皆さんを呼んだか、SEEDについてすべてお話しいたします」
そうか、と言って息を吐いた後
「本拠地に行くのはいいがその前にお前の名前を教えてくれ。知らないやつに付いて行くのは真っ平ごめんなんでね」
「わかりました。私は極東地区第一校所属、一組の委員長で片桐・真奈美です。あなたは?」
「俺は四十九院・恭弥だ。よろしく、真奈美」
「こちらこそよろしくお願いします。それでは、そろそろ日も沈みますし早く本拠地へ向かいましょう、恭弥」
これが、変わらない毎日を過ごしていた俺の新しい人生の始まりだった。