表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷が溶ける、その日まで  作者: 海道 蓮
一章 願いを叶える力をこの手に
9/81

開け、イノセントゲート!

今は順調にアイデアが湧きでてきてくれてほっとしてますw

小説内で矛盾が起きないように頑張りたいです!




「和真は、天魔戦争のお話を知っていますか?」

「あぁ。地上じゃ、一応常識扱いされてるからな」

「なら話は早いです。ソルクエ・アーディンクールによって、私たち天上人は技や術を使えなくなりました。簡単に言うと人間と変わらなくなったのです……


ところが六年前……

人間たちがサデリンの悲劇と呼んでいるあの日に、何ものかによってソルクエと四刃(シジン)が施した封印が一部解けてしまったのです。 天上人たちは自力で自分の力は振るえません。ですが、振るうのが自分たちでなければ、いつでも本来の力が出せるようになったのです。……よく分からないって顔してますね。


つまり、代行者として人間と契約を交わせば、契約者の人間が天上人の力を一時的に得られるってことなんです。その事に気付いた天使たちによって、天魔戦争が再開されたのです……」

「……事情は大体分かった。だけど、そんな危険な戦争に自分から加わる奴なんて、戦争できるくらいいるのか?」

「もちろん、そんな人は殆どいませんよ。当たり前じゃないですか」

「どういうことなんだ?」


イルシテアはにっこりと笑みを浮かべて言った。


「簡単なことです。私たちに協力し、その軍に勝利をもたらせば神や魔王のお力であなたの願いを一つだけ、叶えて差し上げるのです」

「まさか、人間を騙してるのか!?」


悲鳴のような声を上げる俺を見て、イルシテアはクスッと笑う。


「いえ、本当ですよ。あなたにもあるでしょう?

どうしても叶えたい願いが」


俺はハッとして顔を上げる。

(こいつ、一体俺のどこまで知ってる……?)


イルシテアはそんな俺の思いを知らずに手を差しのべる。


「どうでしょう和真?その願いを叶えるために、私の代行者になりませんか?幸い、あなたと私の力はかなりシンクロしているようですし。悪くない話でしょう?」


イルシテアは妖艶な笑みを浮かべる。今まで関わってきた友達、先輩、後輩、両親に妹。それらの人たちの顔が次々と浮かんでは消える。俺は決して友達が多い方ではない。でも、もし俺がある日消えたら、その数少ない彼らは心配するだろうか。彼らに心配をかけたくないと思う一方、はるかにそれを超える願いが俺の中にあった。俺の顔には迷いが浮かんだだろう。だけどそれは本当に一瞬で、次にはもうそれは消えていた。


「分かった。契約しよう、イルシテア」

「あなたなら、きっとそう言ってくれると信じていました」


俺とイルシテアは軽く握手をする。


「早速、契約してしまいましょう」

「分かった。思い立ったら吉日、だな」


和真がそう返事すると、イルシテアはどこからか杖を取り出し、和真の周りに慣れた手つきで魔法陣を描き出す。イルシテアはリズミカルにステップを踏みながら魔法陣を書き上げた。彼女は魔法陣の左側にある月を指す。


「和真はあそこに立って下さい」

「分かった」


俺が言われたとおりの場所に立つと、イルシテアは逆側の太陽の位置に立っていた。


「これから契約の儀式を行います。和真は、私の質問に正直に答えてくださいね」


俺は無言で頷く。それを確認して、イルシテアは両手を一気に前へ突き出した。魔法陣が青い光を放つ。


「我は汝との契約を希望する天使、イルシテア・F・アンルエイテア。汝の名を述べよ」

「飯塚和真だ」

「和真よ、汝は我を受け入れるか?」

「ああ」

「必ず神に勝利をもたらすと誓うか?」

「ああ」

「よろしい。汝に我の力を自在に振るえる許可を授けよう」


イルシテアがそう呟くと、彼女の両手から光が飛び出し、和真の右手の甲に吸い込まれていった。一瞬、体中に雷が走ったような痛みを感じる。その後、右手の甲に謎の模様が浮かび上がった。


「神に勝利をもたらした暁には、必ず汝の願いを一つ叶えることを約束しよう。」


とたんに魔法陣は光を失う。よく見ると、イルシテアの左手の甲にも同じ模様が浮かび上がっていた。


「それでは和真、天上にご案内しますね」

「はっ?」


事情が飲み込めずに戸惑う俺の腕を掴み、イルシテアは誰が見ても惚れそうなくらい可愛らしい笑みを浮かべる。きっと俺の顔は赤くなっているに違いない。


「しっかり掴まってて下さいね」


そういうや否やイルシテアは翼を広げ、勢いよく地を蹴って飛んだ。一気に地面が遠くなる。


「ちょっ、イルシテア、タンマタンマ!速すぎだって!」

「そうですか?これでも遅めに飛んでいるつもりなのですが。」

「つもりだろ!?お前は天上人で、俺は人間なんだよ!!」


止めて欲しくてわめき叫ぶと、イルシテアは急に止まった。


「……イルシテア?」


俺が心配そうに名前を呼ぶと、彼女は声を潜めて俺に耳打ちした。


「誰かがつけて来てます。和真、解呪してもらえますか?刀を力に変えて、和真の名前を氷の模様に変えて唱えて下さい。」

「あ、ああ。

 極寒の地の氷よ、

 封じられし力よ、

 氷の模様の下に

 今、永き眠りより解き放たん

 イルシテア・F・アンルエイテアよ、

 我の力となれ!

 解呪!!」


呪文を唱えると、イルシテアと俺のそれぞれの模様が輝き、青の光を帯びた。


「これで和真は私の氷の力を自在に操れます。ただし、使うときはグラザヴァーの名を呼んで下さい」


それだけ言うとイルシテアはまた高速で飛び出した。後ろを振り向くと、藤堂のとはまた違うタイプの水が追いかけてきているのが見える。確かグラザヴァーって神話の氷をつかさどる神だったよな?俺は右手を水に向かって突き出し、名を呼ぶ。


「グラザヴァー!」


手の甲の模様の光が一瞬、より強く輝いた。と同時に水は空中で凍りつく。


「行きます!」


それを感じ取ったイルシテアは、速度を最高へと上げる。あっという間に、凍りついた水ははるか彼方へと消えてしまった。


「開け!イノセントゲート!!」


イルシテアがそう唱えると目の前の空に亀裂が走り、裂け目が出来る。彼女は一切速度を落とすことなく、その裂け目に飛び込んだ。


「ちょっと、イルシテア!これはまずいっ……」


俺の叫びも虚しく、イルシテアは聞く耳も持っていない。激しい風圧と雨にさらされ、めまぐるしく変わる景色の中で俺の意識は途絶えていった。




次回から天上界ですね~

何人か新キャラ出る予定です!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ