怪奇現象 占い師
天気悪い日って風が強風なのが謎なのですが……
第二十八怪 占い師
占いとはーーなんて語る必要はないだろう。
誰もが知っている占いは人々に希望や絶望をもたらすあくまで予言。
心配や不安と言った感情を払拭するために使う者もいるが、あるいは好奇心に駆られて大金を使って占う者もいるだろう。
「どうぞ」
短い言葉のあとにカーテンで仕切られた別室に移動をし、占い師の前に進む客。
「席に」
「はい」
この占い師は少し変わっていて、対面と言いつつ、互いの顔が見えないように、カーテンで敷居を作っている。
手だけが動いているようにみえるが、向こう側からこちらの様子が確認できる特殊なカーテンだと噂で聞いたことがある。
でないと、実際にカードや手などの位置関係を知って占うことが不可能だからと。
そう、此処まで知っているのはこの占い師が“凄腕の占い師”だと噂になっているからだ。
的中率は驚異の9割越えでほぼ当たると言われている。
使っているのは霊視と呼ばれる手法で、占いの1つだ。
他にも霊的なナニカで占いを的中させたと噂が流れていたが、兎に角当たる占い師なのだ。
「男は簡単なアンケート方式の紙に素性を書いて、占って欲しいこと…の一覧で手が止まる」
正直沢山ありすぎて何を占ってほしければ…と考え込むが、素直に“運が悪くてこの先どうなるのか不安”と書いて提出した。
そのボードを受け取り、カーテン越しにシャッフルする音が聞こえるのは、タロットカードの音だろう。
カードが綺麗に並べられていく様子を見守り、全てケルト十字に並べられ、最後に「お好きなのをどうぞ」とだけ言われる。
「……」
戸惑いながらも引いたカードは“女教皇の逆位置”と言われるものだ。
「なるほど…アンタ最近、感情が揺さぶられる出来事に直面してるね?」
「……はい」
「そしてその人物を知っている…男が見える…疑っているね、彼氏…かい?」
「ッ!?」
当たっていた。
最近彼氏の行いが…浮気のような感じなのだ。
携帯をひたすらに隠すし、無駄に時間が合わないどころか、付けたことがない香水の香り…確定だと思っているもののーー
「信じたい気持ちが優先してるね…つい重要な部分でお互いに本音を隠してしまう」
図星だった。
だってそんなことを直球に聞く事なんてできないのだから。
続けてカードを引くと“隠者の正位置”が出た。
「なるほど…近いうちに、恐らくその彼と向き合わなければならないだろうね、そしてやってくるのは孤独な時間」
「……それって」
「アンタは真理を追究するあまり、タブーを口にしてしまう、だがそれが悪い訳じゃない、慎重に選んだ結果が物事をゆっくり進めて行く…荒波だろうともね」
手を差し出される、引けと言うことだろう。
もう一枚カードを引くと次に出たのは“死神の正位置”だった。
「ッ!!」
不吉な見た目をした骸骨が一瞬こちらを見たような気がしたが、きのうせいだと思い込み占いしの言葉に耳を傾ける。
「死神の絵が不気味かい?だが悪いカードじゃない、見た目で翻弄されないことだ…このカードの意味は“終わりと始まり”を指している」
「終わりと…始まり?」
「恐らく、アンタの彼氏とは破局になる運命ってやつなんだろう、それが終わりーーそして新たにアンタの人生が始まる」
「そう、なんですね…」
「何をお通夜みたいな表情をしている、彼氏だけじゃないんだろう?」
「ッ!?」
何かを見抜かれた女性はびくっと身体を震わせる。
そう、最近…誰かの視線を強く感じるのだ。
盗撮だと思い監視カメラも購入したが、誰も映ってないのに四六時中、嫌な視線が付きまとう。
「大丈夫さえ、全て持って行ってくれる――既に終わりは近づいてる、近い内にアンタは1人の男性と出会うだろうよ」
「男性ですか?」
「ああ、ソイツが全てを終わらせてアンタに新しい道の在り方を教えてくれる、きっとね」
そして最後にカーテン越しから左斜めのカードを開く。
「愚者の正位置、自由や新しい始まり――可能性」
「私は…やり直せるんでしょうか?」
「それはアンタ次第さ、少なくとも人の意志や行動は馬鹿にできやしない、あくまでこりゃ占いさ。
動かない奴には何も起きないよって人生の先輩からアドバイスをしてやる、その上での占いさえ」
そう言うとカードを集め出し、カーテンの向こう側へと収納していく。
女性は感謝の言葉を告げ、先ほど言われた言葉を思い出す。
携帯を取り出し、その中にあるLIMEに保存されている男性のチャットを開き、一文を書いて返信を待つ。
既読にはなっているが、連絡は返ってこない、だが少し時間が経つと返信がきた。
「……これで良いんだよね」
誰に聞こえる訳もなく、女性は帰路に着く。
新しい人生を迎えるために。
「って、有名な占い師が居るんだって」
「へ、へぇ~」
――麗美女子中学校――
隣が男子校と言う特殊な敷居にはなっているが有名な女子学となっているその場所で、5人が1人の席を取り囲んで話していた。
中心にいる人物は決していじめられたとかではなく、比較的に4人とは有効な立場におり、放課後に遊んだりしている。
その中でも、今発言した女子とは幼馴染の1人でもあり、仲が良い。
実は隣の男子校にも1人幼馴染が居るが…最近はなぜか疎遠となっている。
理由は女子と男子で分かれているからという噂や偏差値的にも馬鹿な学校と呼ばれていることもあるが…彼の顔を思い返すと全く違った印象を受けていた。
最近はそんな悩みだけが強くなっている中、中学3年となり卒業を控えた中、思い出になる事を少しでも多くやろうと言うことで、何かないか?っと言う内容だった気がする。
そこで今の占い師の話が出てきたのだ。
「夢莉も行くの?」
この5人の中でも長身の女子が言う、飯塚琴音と言う名前で、番長的な存在となっているがそこまで怖くはない、実際優しい。
夢莉と呼ばれた女子――中心にいた女子は答える。
「う、うん、ちょっと面白そう…かも」
「でしょ!」
元気良く答えるのは幼馴染の星野ひよりと言う人物だ、幼馴染であり心を許せる人物である。
「「じゃいこー」」
声を合わせた2人は双子の双葉里恵と莉緒。
調子が良いと言うかほぼシンクロしており、授業の成績や話も全く同じと言うのが逆に特徴的である。
帰りの支度をして校門を出ると、男子校からも男子たちが出てきた。
「「ゲェ!?男だ」」
嫌そうな顔をしたのは双葉姉妹だった。
何故だが男子を嫌悪している――いや、双葉姉妹だけではなく、この女子校全員である。
唯一抵抗がないと言えば――夢莉とひよりぐらいだった。
幼馴染に男性が居たからだろう、特に抵抗はない。
しばらく眺めていると飯塚が行こうと一言、言った瞬間に出てきた人物に注目する。
『ウニ頭!金平糖!!』
『コロス!』
面倒臭そうな表情をしながら友人と歩いて居る幼馴染の海凪優夜。
と、視線が合ってしまう。
3人は嫌そうな表情をしていたが、ツイテールのメッシュの入った女子、ひよりがダッシュで近づき背中に平手をお見舞いする。
「久しブリー!」
「ってな!テメェ!」
そんな様子を見て微笑ましくなり自然と近づいていた。
「久しぶり、優夜君」
「おう夢莉か、今から友達と遊びに行くのか?」
「金平糖!」
「……お前はあとで殺す……」
「う、うん。そんな感じかな優夜…くん?」
遠目を見ていた。
あの3人を見ているのだろうか?確かに威圧的な目線を向けているから気になるかもしれないけど悪気がある訳じゃないことを弁解しようと慌てて言葉を走らせるも、
踵を返しながら警告にも似たような事を言う。
「あまり…夜遅くまで遊ぶなよ、何処行くかしんねーけど、最近なんか物騒だからな」
「う、うん」
「大丈夫だって!そん時はウニとあの…えーと…なんとかって人が助けてくれるでしょ!」
「テメェもだ、ひより!あまり路地裏に入ってゴミ漁るなよ」
「え?ストーカーとかきっしょ!」
「心配してやってる奴に言う台詞か!?」
相変わらずの様子で安心したけど、最近やはり優夜のこの表情には違和感を感じる。
何か自分達が見えないナニカを見ているような…これから起きる未来を予期してるような表情なのだ。
それがとても何か嫌そうな表情をしているのだ、それが中学になってから増えてきた。
「(あれ?)」
そう言えば、昔同じ様な事があったような気がする。
その時も優夜の表情は…今と同じで、ひよりにも確認したけど、特に問題ないって言われたっけ?
けどあの表情は何時からだろう?なんだかもう――海凪優夜と言う人物は自分達の知る違う人物へと変わって行ってるような気がした。
「行こうよ、もう」
「「そうだ!そうだ!」」
「あ、うん、またね、優夜君」
「おう、気をつけてな」
短く交わし互いに別方向へと歩を進める。
本当は同じ中学に入学して学校も同じはずだったんだけど…どうして変わったか、この時は忘れてしまった。
ある路地裏を曲がると、扉に辿り着く。
中に入るとそこは暗い空間と言うより怪しい空間と言う表現が合っていた。
淡い紫の光りで照らされた室内、飾られた水晶、人の…頭蓋骨のようなもの、偽物だとは思うが、どうしても空間が違うと言わんばかりの空気を出している。
時間は午後7~9時に営業しているようだが、日によって深夜帯に活動することも在り、深夜帯だとかなり高額に摂られる代わりに占いの制度が上がるらしい。
そして特徴的なカーテンで仕切られた部屋、椅子が前に用意されており、カジノで使うようなテーブルで丁度5人が腰をかけても問題ない広さを保っていた。
「なんだい、小娘かい」
急な言葉にみんな身体をこわばらせる。
当然、夢莉も強張ってしまい心臓が止まるかと思った。
「フン、此処はガキのたまり場じゃないんだよ、冷やかしなら出て行っておくれ」
完全に誤解されているようで、誤解されたこちらの雰囲気も悪くなってきている。
「あの~、うち等占いお願いしにきたんですけど~」
ひよりがそれとなく此処にきた理由を説明すると何やらカーテン越してゴソゴソと音を立てつつ、出して来たのは獣の頭蓋骨だった。
「高いよ、ウチは…ガキ共に払える金額あんのかい?1人1万だ」
「い、いち…!?」
流石に高すぎる!
中学生のお小遣いでは大金のようなものだ、それを1人1万なんてだせっこ―ー
「良いじゃんか、割り勘方式でアタシ達全員で1万作って、この中の誰かが1人占ってもらうってのは?」
「飯塚さん?」
「さっきからガキだとかたまり場とか気に食わないんだよ、アタシ達は普通に客として店にきてるだけなのに酷い言いぐさじゃないか、ええ?」
中学生が出せる威圧とは思えない程の迫力、女子校で番長は誰かとか問われれば飯塚さんの名前が出るのも無理もない。
だがそんな威圧にも動じない占い師は飯塚さんの目を見るなり、まるで蝿を払うかのように手で追い払う。
「ダメだね、他はどうか知らないがウチは別に誰でも見てやるつもりはないよ。客はアタシが選ぶ、此処じゃアタシがルールだい」
頑なに占いを断り店仕舞いを済ませようとするお婆さんに飯塚さんは勢いよく1万円札を置く。
「未来ある若者に年寄から助言を頂きたいものでね、それとも若者の未来すら教えられない古い教育体制で育っちまったせいで、性格まで腰と同じく180度ひん曲がっちまったとか抜かすんじゃないんだろうね?」
「い、飯塚さん…」
「こわ…ことっチってキレるとヤンキー全開だよね」
「「ヤンキー琴音」」
「あ?アンタたち!私は――」
「……良いだろう、威勢の良い小娘の未来を見てやるよ」
そう言うと、またあのトランプをテーブルファンさせる。
「好きなのを選びな」
「……これね」
カードを1枚選択し、それを占い師のお婆さんが貰うと裏面を表面に変える。
カードの絵は老人がランプと杖を持っているカードで――逆位置と呼ばれているものだった。
「隠者の逆位置は孤独や迷いを指し示す…アンタは遠くない未来にどうしよもない状況下で閉鎖的になる空間に閉じ込められていくだろうね」
「……そうは思わないけど?」
「今はだよ、さぁもう1枚カードを引きな」
言われた通りカードを引くと同じように表面にした。
逆座に座り剣と天秤を持っている男性のカード、また逆位置だった。
「正義とは名ばかりのカードを引いたね掲げた剣よりも天秤に注目しな、これは“公平”を象徴するアイテムの一部だ、それが逆に出ちまってる…不公平を感じたり、思わない所でアンタは偏見やその判断を誤っちまうことになる」
「何が言いたいの?」
「2枚のカードから分かる通りさね、つまりアンタは何らかの誤解や偏見を持っちまって、それを理由に迷い、孤立していくってことだい」
「んなことある訳――」
「所詮占いだからね、アンタが信じなきゃそれだけの話さ、ただアンタが威勢の良い言葉で助言なんて立派な言葉を口にしたもんだから占ってやっただけさね、最後に1枚引くかい?」
少し迷う素振りを見せたものの、最後のカードを選びそれを捲ると人と犬のカードが出た。
「正位置、力のカードだね、前向きな方向で言えば精神力を鍛えるための忍耐力が必要ってことだい、アンタの内にある優しさが正しい方向に導いてくれるよ——ただし」
「ただし?」
「逆に言えばコイツは自信喪失を意味するカード、突然感情の爆発なんてこともあり得る——あくまで逆位置の話だったらの話だがね」
「……」
「こんな所でどうだい、威勢の良い小娘。まだ実感が沸いちゃいないが、その片鱗は見え始めてるんじゃないのかい?」
「……んなこと」
「焦らずとも答えは出るさね、所詮占いだからね」
そう言って、カードをかき集め本格的に店仕舞いをしようとする店主を慌ててひよりが止める。
「ウチも占いたーい」
「ちょ、ひ、ひより!?」
飯塚さんを押しのけ椅子に座り満面の笑みを浮かべているひより、当然店主であるお婆さんが許可する訳なく――と思ったが、代わりに皺皺の手を出す。
「金」
「ハイ!」
万札を出して占いがまた始まる。
最初はあんなに嫌がってたのにどう言うつもりだろうっと気になってひよりの占いを見ていく。
「女帝の逆位置…アンタは甘えすぎて、周りは甘やかしすぎてるね。それに依存しちまってるからアンタはいつまでたっても停滞したままなんだよ」
「あちゃ~痛い所突かれたかも~」
「一方で愚者の正位置かい、自由奔放、その可能性は無限…新しい始まりはもう芽吹き始めてるのかもしれないね…」
「え?マジ!?」
「付き合いづらい子だよ…太陽の逆位置かい、何が成功するのか分からないが、アンタは遅いなりに成功するから何も心配ない、あるとすりゃその有り余る元気が不足することぐらいだろうね、満足かい?」
「ありがとね!お婆ちゃん!!」
やや疲弊した様子のお婆さんの声と共にカードを戻していくが、今度は双子が占いを申し出て、結局全員が各々1万円札を使ったことになってしまっている。
そして夢莉はこの占いをするべきかどうか悩んでいた。
興味はあるもののこう言ったものを体験したことがない、見てるだけで十分だが、正直将来の自分がどうなるのかは気になる――特に
「(優夜君とはどうなるんだろう?)」
幼馴染の海凪優夜、夢莉、ひよりの3人で良く遊んでいた。
運動神経が抜群に言いながらもどこの部活にも所属しておらず、友人と帰り道でゲームをして帰っているらしい…ことぐらいしか知らない。
昔は公園で良く遊んでいたが子供ながら活気ある子供だなっと思ったことぐらいだった。
「アンタは良いのかい?」
「え?」
そう言われて我に返る。
自分だけ占ってないことに気づいてきまづくなる、流石にみんなの前で幼馴染との関係を聞ける程の勇気なんてない。
そう思っていたら、勝手に財布からお金を抜かれて提出されていた。
「ちょ、ひより!?」
「良いじゃん、この際だから優夜のことでも聞いちゃえば?最近付き合い悪いんだからさ」
「……」
顔が熱くなる、お金を取ったことを怒るべきなんだろうけど、それ以上に此処に居る友人に優夜との関係を口に出されたことの方が恥ずかしい。
っと何故か布越しだがお婆さんの視線を感じた。
しかもかなり直視されているようで余計恥ずかしくなる……はずなのに、その視線は、言い方を悪くすれば不気味だった。
「小娘は良いのかい?学生にしては高いが、保証はするよ、ウチの占いは……」
「……え?」
そこで夢莉は少し奇妙な靄のようなものを見た…気がする。
正確にはお婆さんの後ろに居る何か……のはずだが、その実態を視覚化することも証明することもできないが、一瞬感じた不気味な感じは“あの靄”からだったと確信できる。
そんな気持ち悪さがあった。
「あの、私…」
「別に無理に占わなくなって良いんだよ、金は大事だからね、命の次に……」
店仕舞いを済まそうとするお婆さんを止める事もできずにその光景を見ているだけしかできない夢莉は歯がゆさを感じた。
「(そうだ、いつも私は大事な所で一歩引いちゃう、だから――)」
大切な人から重要な言葉も、何も聞けないのだ。
「ちょいちょい!お婆ちゃんタンマタンマ!夢莉占うから待ってよ!」
「ひより?」
「まぁまぁ、滅多にない経験なんだからやろうよ~!それに――」
耳に口を近づけて小言で伝えて来る。
「優夜のこととか……わかるかも?」
「ッ!?」
一番気になっている人、幼馴染、ひよりもそうだがずっと付き合いがあるから特に気になることはあまりない……けど、流石ひよりも幼馴染だと思った。
きっと顔に出ているのだろう、自分の考えなど分かってるって様子だ。
そんな様子を他の友人も見ており、勇気を出して声に出した。
「あ、あの!お、おねが、お願いします!」
「金」
「あ、はい……」
「……少し、変わった占いでもしようか」
「え?」
急な提案に唖然としてしまう。
「え~贔屓だ!なんで私たちの時はしてくれなかったのさ~」
「アンタたちには何も言われなかったからね、そもそも1万もこっちはもらっちまってるんだ、サービスぐらいするさーー言われればの話だが」
「「夢莉、何も言ってない」」
「ああ、それもサービスの内さ、結局のところアタシの気まぐれさね。どうする?」
急な提案ではあるが……少し変わった占いと言うのは気になる。
了承も兼ねて頷きお願いすると、ニヤリと不気味に笑みを浮かべたお婆さんがトランプのデッキ、束をこちらに渡してきた。
「ハイ&ローを知ってるね?」
「は、はい」
カードを1枚捲り、その番号の数値より高いと思えばハイ、小さいと思えばローを宣言するシンプルなゲームだ。
それを大アルカナを使った22枚カードでやるってことなのだろうか?
「捲りな」
「はい」
出た数は4と比較的な小さな数字だった。
数字が一番小さなもので2、これは4なのでハイを選ぶケースが多いと思い宣言しようとした瞬間、お婆さんは話し始めた。
「確率の話なんてものは学者が話す言葉だがね、どんなに小さな数値でも当たるときゃ当たるもんさね」
「……」
そう、比較的に高い数値が出やすいと言うだけで必ずしも小さな数値が出ないとは限らないのだ。
ひよりとゲームをした時も、確率で10%と言う数値が当たったこともあったが、確率は低い。
と言うより、そもそもこの形式をハイ&ローをして決める占いってどうなるのだろうか?
もしこの場合ハイではなくローを引いてしまった場合、そこでお終いになってしまうのだろうか?
気になってお婆さんに聞いてみることにした。
「あの、もしこれで私が一番小さい、或いは大きな数字を引いたら占いはその時点で終了……ですか?」
「いいや、続行さね。少なくとも2とキングが出るまでやるつもりだよ、だたし!」
「ただし?」
「1枚捲る度に1000円の基準で行ってもらう、つまりアンタは今引いたカードとは別に10回だけチャンスが与えられる」
「せこ~い」
「「ずる」」
「で、他にルールは?」
いつの間にか周りの友人もこの占いに取り込まれたかのように集まってみていた。
「簡単さ、手順はアンタ等と一緒、あくまでルールはハイ&ローだ、その中で好きな数字で止めてそこで占う、気に入らなければゲームは続行、ただし10回を上回る引きはNG」
「チャンスは10回」
その中で好きな数字と言われても正直困る。
だったら適当が一番楽なのだが…と思うと、心を読み取ったかのようにお婆さんは話をかけてきた。
「これは重要なことだよ、アンタが思ってる以上にね、ゲーム形式で場を和ませたつもりだが今後のアンタの人生に間違いなく関係することだね」
「え?」
「どんな時も未来は自分で選択していくものさ、このなんてことの無いゲームだってそうさね、選択することに意味がある」
選択、選ばなかった選択、後悔…夢莉はずっと後悔していることがある。
中学に入った幼馴染の1人、海凪優夜は元々明るい性格だった。
しかし中学に上がると学校の区分でそもそも会う頻度は少なくなり、様子はほんの少ししか伺えなかった。
だが中学2年の時から目に分かるように、彼の表情から笑顔が消えた。
当然話をかければ笑ってくれはする、でもそれが作り笑いだと知った時、夢莉の中で違う人物を見る様な感覚に陥った。
以降、優夜とは疎遠になりつつも、何とか切れそうな手綱で関係を保っているだけだと感じていた。
「ハイで」
「捲るよ」
4のカードの次はクイーンだった。
4と同様今度はローの可能性が出てきている。
「……ローで」
「……7だね」
このゲームの中では一番微妙な数字が出てしまった。
確率だけで言えばハイの方が無難ではあるが、ローも出やすい、たった1つの差でかなり悩む。
いや、寧ろの先ほどのクイーンのカードを選択すると言うのもありであった。
そもそもは占いであり、そこにゲーム要素を含めてきたのはこのお婆さんだ。
早々に終わらせるなら最初の1枚目でカードを決定してしまえば良いだけの話。
「(私は…7じゃない…)」
無難だがここはハイを選択するべきだろう。
「ハイで」
「良いね、清楚な見た目をしてる可愛い小娘かと思いきや、ギャンブル好きだったりしてね」
「え!?」
「冗談さね——良かったね、10だ」
「……」
終わらせるべきか、続けるべきか?
まだ3枚しか捲ってない、お金に換算すればあと7回はリトライできる。
「(ただ、2のカード…多分2がラストならキングもラスト打ちになるのかな?)」
2とキングを引いてしまえばゲームはその時点で終了。
つまり占いは2かキングの13で占うことになる。
強制二択、けどその中で出た数字でも占うことは可能…完全に自分で決めなくてはならない状況下。
「……ローで」
「……運が良いねのか悪いのか、また“7”だ」
「ッ!?」
こうなるともう訳が分からない!
まだ6回、しかももし負ければ――
「(いや…)」
『少なくとも2とキングが出るまでやるつもりだよ』
「(言葉の意味、2とキングが出たら終わりってこと?違う、普通のゲームでも2とキングが出てもゲームが続行だから――)」
終わりがない、打ち止めがない訳だ。
あれ、だんだんと混乱してきた。
「あの、これって意味が?」
「あるさ、さっきも言った通りこれは“選択”だ、それに意味がある」
「選択……」
「アンタは2とキングが出ても終わりじゃないって気づいたんだろう?それに普通なら対戦相手も同様に宣言するのが普通さね」
そうなのだ、だがこれじゃ1人でゲームを続けてるだけなのだ。
「対戦相手の居ないハイ&ロー、自分との闘い、何を緊張してるだい?」
「……」
確かに、だがお婆さんは“選択”と言った。
本当に意味がある内容なのだろうか?
だがその後は気兼ねにコールすることが出来た気がする。
「ハイ。ロー。ロー。ハイ」
ただ自分の好きな数字を出すために動画を再生、停止しているような作業でジャックが出る」
「……あの、これで」
「最後だね、全く苦労をかける小娘だね」
「……すみません」
結局全て使いきり、導きだしたのはジャックのカードだった。
そのカードをこちらに見せた状態でシャッフルし、カードを2枚配り置いて行く。
「これがアンタの過去、そして現在、最後に——」
先ほど選んだカード、それがジャックのカード。
「これが未来だよ」
テーブルファンをした他のカード、その中から好きなカードを選ぶように言われ選択していく。
「……え?」
「おや、珍しいこともあるもんだね」
引いたカードは4、皇帝のカードだ。
「正位置だね、日常的に安定した日々を過ごしてたと見る、この時は責任感が強く、自分で何でもしなきゃいけないって思ってたんだろうね、同時に——支配を意味するカードでもある、誰かを支配していた、或いは支配したくて仕方なかったんじゃーないかい?」
「そ、うですかね」
昔のことだから曖昧だが、確かに過去の日常は今と違って安定していたような気がする。
責任感もあった、親や周囲の期待に応えようとする気持ち、その反面の苛立ちが支配に繋がったのかな?っと考える。
次のカードを引くと、恐ろしいことに7の戦車のカードだった。
これは先ほどのハイ&ローと全く同じカードの種類。
「だからこその失敗、逆位置で出てるよ。思いがけない暴走と方向性の迷いを感じているね…正しさを求めすぎて空回りしている、故に失敗の連続が焦りになっていることから、さっきの皇帝カードと繋がっているのかもしれない、故に“支配”」
「……でも安定していたって」
「見た目はね、でも実際は不安定だからこそ恋人のカードが逆位置で出てる」
「ッ!?」
やっぱりそうだ。
このカードの手順は全部先ほどのハイ&ローで引いたカードと同じなのだ。
7の次に6のカードを引いた、これはその通りの手順なのだ。
「迷い、それに不一致…誰とだろうね…でも重要なことがわかる——関係悪化、一方で正位置で見れば重要な選択に差し掛かってる様にも見える」
「あ、の…」
「ざっとこれがアンタの過去だ、否定するつもりはないが安定って意味が表の顔なら裏の顔は不安定さを出している、アンタは常に笑顔で周囲から悟れない様にその不安を隠していた訳さ」
「もう…」
「——引きな」
差し出された手、カードを選べと…恐怖が勝。
怖い、何故ならこのお婆さんの言っていることは——。
「10、運命の輪——逆位置は停滞を意味している、タイミングが不調のようだね、大切な何かに掛ける言葉が見つからないのか、言うタイミングがないのか…続けて引いたカードは——17の月のカード」
「え?」
「トランプは13枚の数字で構成されてるんだい、たまたまだよ、アンタが引いたカードとさっきやってたゲームは」
「……」
本当にそうだろうか?と言う疑問が残ってしまう、
お婆さんは言葉を続ける。
「正位置で出ちまってるね、アンタ今、不安や迷いが強いね…でもこうなれば~って幻想も抱いている、叶わないんじゃないかって不安、相手を困らせてしまう不安、両方が天秤に乗っちまって幻想になっちまってるね」
「……私はどうすれば……良いんでしょうか」
「さーね、思った様にやれる人生ならこの世に住む人間全員が苦労はしてないよ、さぁ次は未来だ」
緊張した面持ちでカードを選択していく。
「ふむ。力のカードの正位置…過去の今を見て未来は強い精神力と忍耐力が必要になってくるね、もどかしく聞きたいことも沢山あるだろうに、件の人物とは疎遠になるかもしれない」
「え?」
「12、有名なカードだよ」
「吊るされた男」
「の逆位置だね。アンタがハイ&ローでこのカードを選択しなかった意味もわかる、コイツは厄介だ…アンタがどんだけ頑張っても無駄な頑張りで終えるどころか、視野が段々と狭くなって行き詰まりを感じちまってるね…こりゃ難儀だ」
「どうにか!なりません…か」
「安心しな、このカードがアンタを救ってくれる」
「21、世界の…カード?」
「どちらに転がっても良い意味を持つ、正位置で出てるね…完成と達成、何をかは分からない…だが、成就ともある、願いが叶うかもしれないってことさ」
「ッ!!」
「この先もアンタには試練のような、気持ちの悪いモヤモヤとした気分が襲ってくる、けど負けちゃーダメだ。最後まで諦めずにしがみ付いてこそのこのカード、忘れるんじゃないよ…」
多分、そう言うことだろう。
夢莉の中に1つの疑念、海凪優夜との関係…恐らくその関係性がこの先の未来で何か切り開いていくはずだと言うこと。
「が、所詮は占い、だが占いは呪いとの関係も多少はある…占いに呪われて見るのも一興だね」
「……」
冗談でも背筋が凍るような発言は止めて欲しいと思った。
その後はみんなでその場を去り帰路に着いた。
次の日の学校では普通の日常、横には気になる幼馴染が居る学校。
「(中学入って、優夜は変わった…)」
時折誰も居ない場所を見ることがあったり、ボーっとしてることが多い。
そのことを聞こうにも聞けない雰囲気はあの占い通りだなと思った。
でも何時かきっと、それを聞ける機会があるのかもしれない。
『占いに呪われて見るのも一興だね』
「そうかもしれない…」
第二十八怪 呪い師
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