95話:直前ミーティング
秀助がデュルケームを倒したとき、アダムスと善俊の催眠がとけた。しかし、2人とも意識を失っている。一部始終を見ていた伊里はぼそっと呟いた。
「なんなんや…あの人…」
一方で、ディノニクスをいつの間にか倒していた七郎次は、秀助に賛美の言葉を送った。
「さすがだね。五味川秀助君。」
そんなとき、十兵衛がやって来た。
「秀助…」
「じーさん、敵は倒したぜ。」
十兵衛は辺りを見回しながら言った。
「怪我人が何人かいるな。とりあえず近くの病院に運ぼう。」
その後、メンバーは倒れた人たちを担ぎつつ病院に向かった。先ほどの騒動で病院は大忙しであった。旅館での怪我人を担いだ中原たちも、病院に到着する。十兵衛たちを見つけ、声をかけた。
「ミスター・リード首都警総監…って、五味川!?なぜここに!?」
中原が秀助を見て混乱していた。
「中原首都警部、落ち着いてください。」
秀助が苦笑いしながら言っていると、突然誰かに抱きつかれた。菊千代である。
「うわっ!急に抱きつくな!」
「しゅうちゃん!よかったよぉぉぉ!」
菊千代は涙を流しながら言った。近くにいた善治が呟く。
「諌山首都警部は、一番お前のことを心配していたんだ。全く、何やってたんだよ…」
十兵衛が発言した。
「どうやら、師匠とやらに会いにいったらしいな。」
「!」
「詳しい話は後にして、今日はもう寝ない?皆へとへとよ。」
トレイシーがそう言ったのを聞いて、十兵衛が頷いた。
「ああ、そうだな。近くの宿が避難所になっている。皆、そこで休みなさい。」
くたびれたメンバーは、言葉を交わすことなくその宿に向かっていった。それほど、疲れていたのである。
秀助と十兵衛だけが病院の待合室で座っていた。
「秀助、お前さんのあれは…」
「あれは、レベルΖへの布石さ。」
秀助は静かに言い放つ。十兵衛は下を向きながらぼそっと呟く。
「まさか、お前さんがここまで強くなるとはな…」
十兵衛はしばらく間を置いた。
「秀助、頼む…頼むから無理だけはしないでくれ。」
「!」
秀助は十兵衛の方をばっと見た。意外な言葉に驚いたのだ。しかし、首を横に振る。
「それは無理な話だ。皆と一緒に戦う以上、俺は自身に無理難題を課し続けてでも、戦い続ける。」
「!」
秀助は真剣な表情をしていた。それを見た十兵衛は、何も返すことができなかった。
「俺もそろそろ寝るぜ。疲れた。ここまで来るのに。」
そう言って、秀助はその場を後にした。
「私は…あの頃から変われていない…」
十兵衛は何かを思い出していたようだ。その内容はわからないが、少なくともよい思い出ではないらしい。暗い病院の待合室で、曇った表情をしていたのだった。
それから数日が経ち、怪我をしていたメンバーも全快した。本拠地襲撃の日が迫る中、十兵衛らは近くの宿に集まっていた。
「皆が無事でよかった。あれから敵襲はない。ひとまず、危難は去ったと考えてよいだろう。」
中原が口を開いた。
「救急対応も順調に進んでおります。応援の首都警察も集まっておりますし、ここを本拠地襲撃の仮拠点にすることもできましょう。」
十兵衛はこくりと頷きながら言った。
「ああ。だが、優先すべきは人命救助だ。ここを仮拠点とするのはやめておこう。それよりも、重要な話がある。」
その場にいた全員が十兵衛の方を見た。
「明日は、ついに作戦実行の日だ。」
皆が唾を飲む。まだ作戦も始まっていないのに、緊張した空気だ。
「それでは、改めて計画を説明しよう。」
そうして、十兵衛は本拠地への襲撃計画について説明した。フェルナンド伯爵が暴れている間に、建物に侵入すること。基本2人以上で行動すること。あくまで五味川茉莉を探すことに集中すること。それでも、ある程度の交戦は免れ得ないため、別行動をとる可能性が高くなること...それらの説明が一通り終わると、十兵衛は質問がないか確認した。
「何か質問は?」
善俊が手を挙げて尋ねた。
「応援の首都警察はいつ襲撃に参加するのでしょうか?」
「ああ、私たちが侵入して、少ししたら襲撃するように命令してある。」
善俊の質問に答えた後、皆の顔を見渡しながら、十兵衛は重々しく口にする。
「皆、これだけは言わせてくれ。絶対に死ぬな…!そして、首都警察本部で祝いのパーティでもあげようじゃないか!…短いが私からは以上だ。」
その場にいた全員が覚悟を決めた表情で頷く。しかし、誰一人として怯える者はいない。それは、皆が生きて帰れると心の底から信じあっているためだ。
そして、本拠地襲撃の日となった。十兵衛を筆頭に、首都警察官たちがSOCIOLOGIの本拠地に向かっている。
同時間帯、フェルナンド伯爵がデイヴィッドに連れられ、SOCIOLOGIの本拠地となる建物に入った。四方を壁で囲まれ、見張り台が数か所設置されている。まるで砦のようだ。
「随分と厳重だな。」
フェルナンド伯爵は、建物を見上げながら言った。
「当然だ。ここには、No.1がいるのだからな。さあ、来い。No.1と幹部が待っているぞ。」
デイヴィッドとフェルナンド伯爵が建物の内部に入っていく。内部にはSOCIOLOGIの構成員が立っている。しばらく歩いていると、一際構成員の数が多いの場所があった。大きな扉があり、そこを見張っていたのだ。
フェルナンド伯爵はそこに案内される。その扉を開けると、数人の幹部と、顔が見えない男がいた。




