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兆兆発止  作者: ぱんろう
精鋭暗殺部隊来襲編
92/150

92話:自殺の極意

十兵衛はボートに乗り込むと、ノアの腹部に強烈な拳を打ち当てた。

「ぐはぁっ!」

「まずは一人…」

「まずい!ボートが消える!ギベリン!マグマオーシャンを解除しろ!」

ウェーバーが叫ぶ。それと同時にボートが消滅した。ギベリンは焦った様子でオーラを収束させる。すると、辺りに立ち込めていた溶岩が一瞬にして消え去った。その瞬間、十兵衛は、壱極集中のパンチをギベリンの腹部に命中させる。ギベリンはその場で倒れこんだ。

「これで二人…」

ウェーバーはスノーエンジェルで応戦しようとする。

「ふん。コピーしても、使いこなせなければ意味がなかろう。」

十兵衛は、壱極集中のパンチをウェーバーにぶつようとする。しかし、ウェーバーはそれをかわす。

「馬鹿にするな…」

ウェーバーは辺り一面に雪を出現させた。

「!」

「僕はあらゆる兆能力を使いこなすことができるさ!」

辺りの雪はそれぞれ集まって、塊となった。


「これぞ、スノーエンジェルの技『雪塊済殺(せっかいずせつ)』!」


塊はメンバーを狙って降ってくる。十兵衛はそれをかわしながら言った。

「だからなんだね?」

十兵衛はいつの間にかウェーバーの懐に潜り込んでいた。しかしウェーバーはほくそ笑む。

「今だ!お前の姿、そしてテレパシーを模倣してやる!」

仲居の姿をしていたウェーバーの体がぐにゃぐにゃし始めた。すると、ウェーバーは十兵衛に変身した。

「!ミスター・リードが2人いる!?」

周囲の人間があたふたしている中、当の十兵衛本人は冷静であった。

「正解だ。おそらく、お前さんがやる最善手だ。だが、お前さんごときに、テレパシーを扱えるかな?」

「!言ってるだろう!僕はあらゆる兆能力を使いこなせると!」

十兵衛はオーラを纏わせた拳を打ち当てようとするが、ウェーバーはかわした。

「読める!読めるぞ!お前の攻撃が...」

ウェーバーは高笑いする。だが、しばらくして頭を押さえ始めた。

(!なんだ?頭がズキズキする!)

十兵衛はにやりとした。

「テレパシーは、聞きたくもない声を拾うことになる。私は長年の付き合いゆえ、慣れているが、お前さんの脳みそで処理できるかな?」

ウェーバーは頭をずっと押さえ、その場で屈みこむ。周囲にいる人間の心の声が、激しい川の流れのように、流れ込んでくる。

(どっちが本物なの!?)

(厄介だわ!)

(ミスター・リード首都警総監が2人か...気苦労も2倍だな...)

(さっきの仲居さんの方がよかった...)

ウェーバーはその場で動けない。そんなとき、十兵衛がウェーバーの両足をがしっと掴んだ。

「ここで爆発されてもらったら困る。」

そう言って十兵衛は、ウェーバーを、できるだけ上空に飛んでいくように、旅館の外に投げ飛ばした。

十兵衛は旅館にいたメンバーに言った。

「あとの連中も私が片づける。お前さんたちは救助活動を頼む。」

そして、急いで旅館を出ていった。


「デュルケーム…!あとは…任せたよ…!」

そう言い残して、空中に放り出されたウェーバーは爆発した。善俊に殴りかかろうとしていたデュルケームは、足を止め振り返った。

「ウェーバー!まさか…お前までもが負けたのか…!」

爆発音に驚き、善俊は目を開いてしまった。デュルケームはそれを逃さなかった。善俊の首を掴み、目を見る。

「少年よ。自殺しろ!首を絞めてな!」

善俊はじたばたしていたが、デュルケームの催眠にかかり手足をぶらんとさせた。

「…善俊!」

デュルケームは善俊を手放す。すると、善俊は自らの首を絞め始めた。

「とっしー君!」

地面に液体が散らばっているのも気にせず、みつねが善俊のもとに向かおうとする。それを、ゲルフが聖水で邪魔しようとするが、七郎次の蹴極足裂破によって妨げられる。

「ダメだよ!とっしー君!」

みつねは、聖水によって発生した炎や、水たまりのようにできた覇王水をくぐり抜けながら、善俊のもとに着いた。そして、善俊の手を強く握る。それでも、善俊は首を絞めようとする。

「ふふ。無駄なことだ。今度は君の番だよ。」

デュルケームはみつねに手を伸ばそうとする。それに気がついた七郎次がデュルケームに蹴極足裂破を放とうとする。しかし、それをゲルフに邪魔された。

「さっきはよくも邪魔してくれたな!」

「くそっ!逃げろ!三島さん!」

みつねは動けない。

(ダメ!ここで逃げたら、とっしー君が死ぬ!)


(くっ!うちが止めたいところやけど…!)

伊里は、自殺しに行こうとするアダムスを糸で制止するのに精いっぱいだったのだ。みつねを助けに行こうにも、それをする余裕がなかった。

「みつね!」

雄康が液体をくぐり抜けながら、みつねの方に行こうとした。

「園田はん!無茶はしたらあかん!」

「…伊里…お前はアダムスを頼む…」

雄康は一直線に走っている。足元の液体に目もくれず。


(刀がないからなんなんだ!…仲間を救うためなら、素手だけでも戦え!それが侍だろ!)


「ほう。液体も気にせず向かってくるか。面白い。」

デュルケームは、雄康の方に視線を向けた。

雄康はとにかく走る。真剣を持っていないため、オーラを発生させることができない。つまり、壱極集中すら使えないのである。

(…やってやる…!)

デュルケームに拳をぶつけようとするが、容易にかわされた。

「慣れないことはするもんじゃないな。」

「!」

デュルケームは雄康の首根っこを掴む。雄康は目をつむる。

「園田はん!」

「ヤス君!」

デュルケームはもう片方の手で、雄康の目をこじ開けようとする。みつねは、善俊を止めるか、雄康を助けるかで迷っていた。

(まずい!このままじゃヤス君まで!でも、とっしー君も放っておけない!)

「…自殺には、4つの類型が存在する。自己本位自殺、集団本位自殺、宿命的自殺、アノミー的自殺だ…仲間のために自己を犠牲にできる君は、集団本位の自殺が近いかな?私が君を殺すのではない。かといって、君自身が殺すのでもない。社会だ…社会が君を殺すのだ!」

「…ぐぬぬ…!」

雄康は限界を迎えていた。目が開きそうになったそのとき、

「!」

どこからか物体が飛んできて、デュルケームは手を放した。

「お前は…!」

デュルケームはある男が立っているのに気がついた。


その場にいた全員がその男を見る。そこに立っていたのは...秀助であった。


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