90話:2種類の液体
「!」
五郎兵衛は反射蒐集壁で、ライオンの液体をデュルケームらにめがけて発射し、飛んできた別の液体を引き寄せた。
「危ねぇ!」
ライオンが反射された液体をかわす。その液体は、近くにあったあらゆる物体を溶かしていた。
「…!…なんでも溶かす液体を生成する『覇王水』か!五郎兵衛!…その液体が何かわかるか!?」
デュルケームに目を合わせないようにしていた雄康は、ライオンの兆能力を特定した。そして、五郎兵衛がコレクターした液体についても分析しようとした。
「これですか!?とても澄んだきれいな水です…試しに反射してみます!」
そう言って、五郎兵衛は水をライオンにめがけて発射した。
「危ねぇ!なんか俺ばっかり狙われてないか!?」
その水は、地面についた瞬間激しく燃え、そのまま消え去った。
「!…『拝聖水』だ!…触れた瞬間に燃えるぞ!」
「おやおや、とんでもない兆能力博士がいたもんだ。私たちの兆能力があっという間にばれてしまったよ。」
デュルケームがやれやれといった感じで言った。横にいたゲルフが笑っている。
「兆能力勝負は、ばれてからが本番ですぞ!」
ゲルフが紫色のオーラを発しながら、聖水を生成する。
「無駄ですよ…何度やっても。」
五郎兵衛が眼鏡をくいっと上げる。
「ふふ。レベル2のコレクターごときが…レベル3の拝聖水をなめるな!」
聖水が五郎兵衛のもとに向かっていく。五郎兵衛はそれを引き寄せるが、量があまりにも多い。引き寄せきれていなかった。
「ま、まずい!」
聖水に飲まれそうになったとき、「永」が飛んできた。
「永」の②勒が五郎兵衛を引っ掛けて、そのまま智子のもとに飛んでいった。五郎兵衛が立っていた位置には聖水が飛びかかり、激しい炎をあげていた。
「大丈夫?」
「ええ、なんとか…ありがとうございます。」
「ゴローちゃん、助かってよかった!」
「こらこら、よそ見はダメだよ?」
「!」
アダムスが五郎兵衛の安心をしていたとき、懐にデュルケームが潜り込んでいた。動揺したアダムスは、ついデュルケームの目を見てしまった。
「しまった!」
「君は、高い崖から飛び降りて、自殺するのが似合いそうだ。そうしなさい。」
「!」
周りにいた皆が焦燥した。アダムスはしばらくぼーっとしていたが、じきに口を開いた。
「そうだな。死んでくるよ…」
「!しっかりしろ!アダムス!」
周りの制止も聞かず、アダムスはどこかに向かおうとする。すると、糸がアダムスに絡まった。伊里のストロング・ストリングだ。
「アダムスはうちが止めとく!」
伊里はアダムスの目を見て驚愕した。
(!なんちゅう目しとんや!)
アダムスは、死んだような目をしてどこか遠くを見ていたのである。
雄康が叫んだ。
「…完全催眠は使い手を倒せば解除できる…!皆、集中的にあの男を狙うんだ!」
それを聞いたみつねは、クラウチングスタートの姿勢をとるが、あることに気がつく。
(!聖水や覇王水が辺り一面に!これじゃあ、迂闊に行動できない!)
「僕の出番だね!」
「私の出番よ!」
七郎次は兆能力を発動させ、蹴極足裂破を使った。同時に、智子が①側によって、一画目の点を銃弾のように発射していた。それらはデュルケームを狙っていたが、2種類の液体がデュルケームを防御した。
「!」
「俺たちの液体は、防御にも使えるんだなぁ!」
ゲルフとライオンはそれぞれ液体を発生させ、辺りに散らす。覇王水は、あらゆるものを溶かし、聖水は激しく燃える。五郎兵衛が可能な範囲で引き寄せるが、やはり全ては難しい。メンバーの行動範囲は限られていた。
それぞれがそれぞれの兆能力で防御しながら、デュルケームを攻撃しようとする。しかし、真剣を持っていない雄康は、何もできない。
(...刀を中原首都警部に預けたままだ...!...今の俺はただの荷物だ...!)
どうしようもないと思ったとき、伊里の糸が雄康を捉える。糸はそのまま伊里の方に引き寄せられた。
「園田はん、うちの側におり!うちが守ったるけん♪」
「…すまない…頼む…」
伊里は明るい表情をしていた。七郎次は対照的に暗い表情をしていた。
「伊里!僕もハイレッグだけで身を守れるか不安だ!」
「あほ。蹴極足裂破でなら、かろうじて守れるやろ。」
善俊は辺りを見回していた。
(くっ!皆自分の身を守るので精いっぱいだ!辺りは危険な液体が散らばっているし、動けない!)
すると、一人の男が口を開いた。
「やれやれ、どいつもこいつも…」
久蔵であった。久蔵は一枚のカードを掲げ、声高に言った。
「プテラノドンを召喚!」
カードが光り、翼竜・プテラノドンが出現した。




