88話:近づく影
デュルケームらは、ただひたすら、女性陣についていく。すると、女性陣は一つの部屋に入った。しばらくその部屋周辺で待機していると、今度は男性陣が部屋に入っていくのが見える。No.7らは顔を見合わせ、その場を後にした。
デュルケームらは近くの部屋に入っていく。そこには、他の宿泊客がゆっくりしていた。
「な、なんなんだ!?あんたら!?」
宿泊客たちは動揺していたが、No.7はそれを意に介さず歩み寄る。
「警察呼ぶわよ!」
一人の宿泊客が電話を取り出した。すると、デュルケームが呟くように言った。
「今からここは私たちの部屋だ。お前らは、人知れないところで自殺していなさい。」
すると、騒いでいた宿泊客は黙り込んだ。そのうち、一人が立ち上がる。
「そうだな。行こうぜ、皆。」
一人が部屋を出ると、他の皆もそれに続く。
「さて、あとの3人もここに連れてきてくれ。今からここを拠点としよう。」
あとの2人が頷いて部屋を出た。
ウェーバーらは十兵衛と中原を観察していた。彼らは温泉街にあった茶屋で休憩していたのだ。
「SOCIOLOGIの本拠地が近いというのに、茶を飲むか。能天気な男たちだね…」
ウェーバーが呆れていると、3人のもとにゲルフとノアがやってきた。2人はウェーバーらに耳打ちをする。それを聞いたウェーバーらは席を立った。そして彼らは茶屋を離れ、デュルケームがいる部屋に向かうのであった。
「やあ、デュルケーム。いい部屋がとれたね。」
デュルケームがくつろいでいた。
「ああ、ウェーバー。ミスター・リードはどうだった?」
ウェーバーが笑いながら言った。
「まだ僕たちの存在に気がついていない。だが、彼のことだ。無色オーラ状態でテレパシーを発動しているだろう。やるなら今夜だね。」
デュルケームが深く頷いた。
部屋に入った首都警察たちは談笑していた。一般の客を装うようにしていたのである。しばらく談笑していると、仲居が部屋にやってきた。
「ご食事の用意ができました。今お運びいたします。」
そう言って、部屋から離れていった。ウェーバーは、その中居についていった。
しばらく待っていると、今度は数人の仲居が部屋にやってきた。豪勢な食事とともに。メンバーの皆はかなり興奮していた。その様子を、十兵衛は孫を見るような表情で見ていた。
「失礼します。」
仲居たちが部屋を出ていく。出ていった仲居の一人は、デュルケームらがいる部屋に入っていった。
「おお、板についているじゃないか。ウェーバー。」
デュルケームが笑いを堪えながら言った。
「勘弁してくれよ…女になるのは初めてだよ…」
ゲルフが感心しながら言った。
「相手の姿形、さらには兆能力まで模倣する『フルコピー』。さすがですね。」
「ああ、相手を目視するだけで、模倣が可能になる。写真でもOKな、兆便利な兆能力だ。」
ライオンが興奮した様子で言う。
「姿形を!?って、ことは…その着物の下は…!」
「何考えてんの…気持ち悪いよ。」
ウェーバーがドン引きしながら言った。ライオンの横にいたノアが、不思議そうに聞いた。
「あれ?それじゃあ、本物の女はどうしたんですか?」
「ん?ああ、今頃温泉でのぼせているだろうなぁ…それより、デュルケーム。どういう計画でいく?」
デュルケームが手で招くようなジェスチャーをして、皆を集める。そして、静かに計画を語り始めるのであった。
食事を終え、メンバーの数人は就寝し始めた。十兵衛と中原らはまだ起きていた。中原が辺りを見回しながら言った。
「ミスター・リード首都警総監、私たちを狙っている敵は確認できたでしょうか?」
「ダメだ。やはり、無色オーラだと、雑音が多すぎる。その中には、SOCIOLOGIの構成員らしきものもある。もはや、全員敵だと思った方が、気が楽になりそうだ。」
2人が話し合っていると、仲居が部屋にやってきた。仲居になり変わっているウェーバーだ。しかし、十兵衛らは、それがウェーバーであることなど知る由もない。
「夜分遅くに失礼します。当館のスペシャルサービスを紹介したいと思いまして…」
「スペシャルサービス?そんなのあったっけ?」
十兵衛が不思議そうな顔をした。仲居に扮しているウェーバーがにやっとしながら言った。
「ええ、当館の源泉を直接体験していただきます。温度1000℃超えの大サービスです。」
すると、部屋に溶岩が流入してきた。
「!なんだこれは!」
起きていた善治が水を発生させ、それを食い止める。騒ぎを聞いて、寝ていたメンバーたちも目を覚ます。
「敵襲か!皆、私たちが応戦するから逃げろ!」
十兵衛がメンバーを逃げ道を用意する。首都警察一年目のメンバーは言われた通りに逃げようとする。出入口は溶岩にやられているため、窓から逃げだした。
「相手は6人だ!うち2人は幹部のようだぞ!」
十兵衛が周りのメンバーに叫ぶように言った。
「今更気がついたのかい?」
雪を発生させていた仲居がにやけながら言った。どうやら、雪を操る兆能力らしい。さらに、溶岩の上をボートがやってきた。そこには、2人の男が乗っている。ウェーバーもそのボートに乗り込む。
「さあ、暗殺決行だ。」




