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兆兆発止  作者: ぱんろう
精鋭暗殺部隊来襲編
85/150

85話:師匠

10年前―

母の茉莉が失踪したことにより、秀助は児童保護施設に連れていかれた。しかし、ゴミを漁る秀助に、友達と呼べるような存在ができることはなかった。職員も含めて、周囲の人間は避けていたのである。いずれ、秀助は居心地が悪くなり、施設を脱走した。しかし、脱走したところで、秀助に帰る場所などない。しばらく町をさまよっていると、ある男に出会った。男は、ふらふらしていた秀助に興味を持ったらしい。

「お前、こんなところを一人で歩いてどうしたんだい?」

秀助は何も言わない。ただ男の顔を見ていた。すると、周囲の人間が秀助に声をかける。

「坊や、悪いことは言わない。そいつから離れな。」

「ああ、この人の言う通りだ。何をするかわかったもんじゃないぞ。」

男は周囲の人間から疎まれているようだ。子どもの秀助でも、それに気がつくことができた。なぜなら、自身もその立場にあったからである。秀助はそんな男に親近感が沸いたようだ。男の側を離れようとしない。男が歩くと、秀助はついてくる。

「なんなんだよ…お前。」

「やけに懐かれているな。知り合いだったのか?」

「知らねぇよ…おい。ガキ、さっさと家に帰りな。」

それを聞いた秀助は涙ぐみ始めた。周囲の人は騒ぎ立てた。

「あー!泣かせたぞ!」

「お前!何言ったんだ!」

周囲の反応を見て、男は慌てふためいた。

「あー!思いだした!いとこのガキだ!久しぶりすぎて最初わかんなかったよ!さ、行くぞ!」

そう言うと、男は秀助を抱えて走り去っていった。男は、町はずれの山奥まで走り、そこにある山小屋で止まった。

「はぁー。なんなんだよ…お前…」

男は呆れた口調で言った。秀助は何も言わなかった。

「まずいよ…誘拐罪になっちまうよ…お前、両親の名前ぐらいは言えるよな?」

秀助は再び涙ぐんだ。そして、声を枯らすように言った。

「両親は…いない…両親は…うわぁぁぁぁぁ」

秀助は大きな声で泣き始めた。

「ええ!?ちょ、泣くな!」

男は辺りを見回しながら言った。とはいえ、山奥に人っ子一人いない。そこで周囲を気にしても意味はないはずだが、あまりにも大きな声で泣くものだからついそうしてしまったのだ。

「勘弁してくれよぉ…」

男は頭を抱えながら言った。それでも、秀助は泣き続ける。いずれ、泣き疲れたのか、そのまま寝てしまった。男は秀助の寝顔を見ながら言った。

「…そうか…お前も一人なんだな…」


次の日、秀助は目を覚ました。男の姿はない。慌てて外に出ると、男が薪を割っていた。

「おう。起きたか。えーとぉ、少年。」

「秀助だ…五味川秀助。」

秀助は自分の名を言った。

「そうか、秀助。まあ、帰るところがないってんなら、しばらくうちに滞在しな。俺の名前は栃ノ木勝(とちのき まさる)…師匠とでも呼んでくれ。」

「…!師匠!」

秀助は嬉しそうに言った。

「ははは…冗談のつもりだったんだが…」

こうして、2人の共同生活が始まった。勝が秀助に教えてやれることといえば、薪割りを始めとする最低限の生活術と、野生動物を戦うための戦闘術だけであった。秀助は、言われたことをすんなりと実行できていた。

共同生活が始まって5年、秀助が10歳になった頃だ。

「見てくれ!師匠!ゴミが浮いてるぞ!」

「こらぁ!ゴミをいじるなっていつも言ってるだろ!…って、それは…!ダストメイカーか!」

「ダストメイカー…?」

秀助は聞きなれない単語を反復した。

「意外と遅い発動だった。さて、兆能力について教えないとな…」


そして、現在―

「あれから兆能力について教えたんだっけなぁ。懐かしい。」

勝は過去を懐かしんでいた。秀助は恥ずかしそうに言った。

「過去のことはもういいだろ!」

勝はしばらく笑っていたが、改まった様子で聞いた。

「それで、どういうわけで、ここに来たんだ?秀助。」

「ああ、師匠なら知っていると思ってな。」

勝は何か考えのある様子の秀助に尋ねた。

「俺なら知っている?何をだ?」

秀助は即答した。


「レベルΖ(ゼータ)の習得方法だ…かつて某国の軍に所属していたっていう師匠なら知ってんだろ?」


「!」

そのとき、勝は顔色を変えた。


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