81話:変幻自在
No.5は宙に浮き始めた。
「!パイロキネシスでも、雷之為神でも、ウインドユーザーでもない!?」
アダムスが驚く。No.5は宙に浮いたまま、あぐらをかき始めた。そして、独特なポーズをした。すねとすねを重ね合わせた坐臥をし、体を前方に倒している。それを見て、五郎兵衛があることに気がついた。
「あれは、薪のポーズ、アグニスタンバーサナですよ!」
「アグニ…なんだって?」
善俊が困惑しながら聞いた。
「ヨガです!ヨガ!それのポーズです!」
「なんにせよ、危なそうだ!」
アダムスが包丁を出現させ、アグニスタンバーサナのポーズをしていたNo.5めがけて発射した。しかし、No.5はそのポーズの状態でかわした。
「!それで、かわせるのかよ!」
No.5はポーズを維持して、目をつむっていた。瞑想をしているかのようだ。しかし、次の瞬間目を見開いた。すると、炎の弾がNo.5の背後から飛んできた。
「!」
五郎兵衛がコレクターを発動し、炎の弾を集める。
「お返しします。『反射蒐集壁』!」
五郎兵衛の技、反射蒐集壁は、引き寄せたものを発射し返す。炎の弾はNo.5のもとに向かっていく。No.5はポーズを変えながら、それをかわした。
「今度はなんのポーズだ!?」
No.5は、足の裏をくっつけた坐臥をし、手を合わせている。
「ヴァジュラーサナです!雷のポーズ!」
No.5が目を開くと、雷が落下してきた。3人はそれぞれかわす。
「ヨガのポーズに合わせて攻撃をする兆能力か…聞いたことないね。」
善俊が雷をかわしながら言った。
(何よりも、ビジョンジャックが使えない。彼は基本目をつむってしまう。)
善俊は、アダムスや五郎兵衛のように遠距離で攻撃するのは難しい。だからといって、懐に潜り込んで戦える相手ではなさそうだ。善俊はただ攻撃をかわすことしかできなかった。そうしている間にも、No.5は別のポーズをとっていた。それは、猿神のポーズ、ハヌマナーサナだ。両足を前後に開き、合わせた手を挙げていた。
「今度は、猿でも呼び出すつもりですかね!?」
結論から言うと、そうであった。しかし、3人が想像していたような可愛らしい猿ではなく、体長およそ10mにもなる巨大な猿であった。3人は愕然としていた。
(想像してたのと違う!)
猿はその巨大な手を3人に振りかざした。3人はそれをかわす。しかし、五郎兵衛がかわした先に、No.5が新たなポーズをしていた。
「!」
「お前は、どうもヨガに詳しいらしい。標的でもないし、攻撃が読まれてしまう以上、邪魔な存在だ。」
そう言っているNo.5は風を放つ、ヴァーユ・ニシュカサナのポーズをとっていた。すると、強風が吹き、五郎兵衛は遥か彼方へ吹き飛ばされていった。
「五郎兵衛君!」
善俊が五郎兵衛の方を見るが、猿が攻撃してくる。
「くっ!」
善俊はビジョンジャックを発動し、猿の視界をジャックした。そのまま猿の死角に潜り込み、壱極集中のパンチをぶつける。
「ぐぉぉぉぉ!」
猿は痛みに苦しむが、それでも倒れる様子はない。
「固いね…壱極集中なら象や熊くらいは一発で倒せるんだけど…」
猿は辺りを見回して善俊を探す。だが、真っ先に目に入ったのはアダムスだ。猿はアダムスにハエを叩くように、手を振りかざす。
「近づくな。」
アダムスはただじっとしていた。すると、猿は振りかざす手を止めた。そして、猿は、あちち、と言わんばかりに手を振っていた。
「ふむ。兆能力範囲の温度を急激に高める技『ブロードボイル』か。」
アダムスはブロードボイルという技によって、猿が近づけないようにしていたのだ。この技は、兆能力範囲の温度を100℃近くにまで上昇させる。料理における茹での技だ。
(通常、茹でるという作業は食材を柔らかくするために行う…ブロードボイルは、同様に敵の体を柔らかくすることができる!)
アダムスは、猿の手に壱極集中のパンチをぶつけようとした。が、そのとき、アダムスはNo.5の不穏な動きをしていたのに気がついた。
No.5は再びヴァーユ・ニシュカサナのポーズ(風を放つ)をとろうとする。しかし、アダムスは包丁を投げてそれを阻止する。
「おっと、そうはいかないよ。」
「手際がいい料理人だな。」
No.5はそれをかわす。
「でも、周りをもっと見た方がいい。」
すると、善俊がアダムスめがけて飛んでくる。どうやら、猿に掴まり、そのまま投げつけられたらしい。
「としちゃん!いつの間に!」
(さっきまで、俺が相手していたんだよ!?一瞬のうちに対応するとは、なんて素早い猿なんだ!)
アダムスはそれを受け止めるが、その隙をついて猿が回し蹴りをしてくる。もうダメかと思ったそのとき、遠くから水が勢いよく噴射され、猿の動きを止めた。その場にいた皆が噴射してきた方向を見る。
「よくも…よくも俺の弟に攻撃してくれたな…」
そこに立っていたのは、善治とトレイシーであった。




