75話:ホーゲル・キュルテン
月明かりに照らされる、ニールスだった男は、自らをホーゲル・キュルテンと名乗っていた。
「な、なんなの!?雰囲気が変わった…」
智子がキュルテンを見て、驚いた様子で言った。キュルテンは、持っていたモノクルを掲げる。モノクルは、月の光を集め始めた。
「充填完了。発射準備OK。」
モノクルがそう言ったのを聞いて、キュルテンはモノクルをティラノサウルスの方に向ける。
「さあ、まずは新月…『月光遺物』!。」
その瞬間、モノクルから光が照射された。光はティラノサウルスに命中し、そのままティラノサウルスを遠くに飛び去っていく蛍のように消滅させた。
「う、嘘だろ…?そんなのありか!」
久蔵が動揺していた。智子も呆然としていたが、「永」をブーメランのように投げることで、キュルテンが持っていたモノクルに攻撃しようとした。
(側ほど速くはないけど、攻撃範囲は広くなる!)
しかし、モノクルがそれをかわす。
「甘い。そのような攻撃に当たるほど、我は甘くないぞ。」
モノクルは再び光を集め始めた。
「まずい!またあれをやる気だ!」
周囲にいた首都警察官が身構えた。
「充填完了。発射準備OK。」
モノクルの準備が整った。キュルテンは、月光が遺した宝物を放とうとしていた。最初に狙われたのは久蔵であった。
「次に上弦…『月光遺物』。」
モノクルから光が照射されようとしたとき、一人の女がキュルテンのもとに駆け寄っていた。ワイルド・スピードを発動させたみつねであった。みつねはモノクルを持っていた手に上段蹴りをした。光は空に向かって照射される。
「!…貴様に月光を照射してやる。」
モノクルが月の光を集め始めた。そのモノクルに、「永」の字がぶつかってきた。
「!ぐはぁ!」
「なるほど。光を集めているときは隙だらけね。」
智子は戻ってきた「永」を受け取りながら言った。
「油断するな、モノクル。多勢に無勢なんだ。」
キュルテンが宙に浮いたモノクルを見ながら言った。その左手は、いつの間にかみつねの左足を掴んで、掲げられていた。キュルテンを名乗っている男は、もともと背の高いニールス...宙ぶらりんの状態になったみつねは、捕まっていない右足でその手に蹴りをいれるが、効いている様子はなかった。
「キュルテン、そなたも油断しただろう。お互い様だ。」
モノクルは再び月の光を集め始めた。智子が、そうはさせない、と言いながら「永」を投げようとする。しかし、モノクルは光集めを中断して、それをかわした。そして、キュルテンがモノクルを手に取り、集めかけていた光を智子に向けて照射した。智子は突然の光をかわすことができず、くらってしまった。
「きゃあああ!」
智子は叫んだ。自分もティラノサウルスのようになる、と。しかし、体は消滅しなかった。
「よかったー!助かった!…って、」
智子は体こそ消滅しなかったが、身につけていた服が全て消滅していた。
「ひええええええ!」
智子はその場で屈みこんだ。
「体は無事でよかったな。」
隣にいた久蔵が言った。
「うるさい!あんたもさっさと何か召喚しなさいよ!」
「わかってる。だが、下手に召喚してもティラノサウルスの二の舞になる。今どうするか考えているところだ。」
そうこうしているうちに、モノクルが再び光集めを始める。掴まっていたみつねは、じたばたするも、やはりどうにもできない。
みつねはふと、モノクルの方を見る。モノクルはレンズを天に仰ぎ、一心に光を集めている。それを見てはっとした。
(そうだ!壱極集中だ!それで相手を倒せばいい!)
みつねは、今まで壱極集中を使ったことがなかった。それをしなくても、ワイルド・スピードで十分戦えてきたためである。しかし、自慢の俊足が使えない今、壱極集中を決めるしかない!
そう考えたみつねは、レンズのピントを合わせるように、右足にオーラを纏わせようとした。すると、右足にオーラが纏った。そのオーラは次第に広がり、いつしか足全体を覆うようになっていた。
「やったぁ!できた!」
「!貴様!モノクル!」
キュルテンが焦った。
「案ずるな。充填完了。発射準備OKだ。」
モノクルは、月光遺物の準備ができていた。
「そうはさせない!」
みつねは、キュルテンがモノクルを手に取ろうとした瞬間に、壱極集中の蹴りをぶつけた。それは、モノクルを粉々に破壊する。
「モノクル!」
さらに、キュルテンの手にみつねの右足が命中し、そこから残留思念が次々と飛び出していっては消滅した。
「すまない…ニールス&ペーター…我の負けだ...」
全ての残留思念が飛び出し、それらが完全に消滅していったとき、キュルテンは灰になった。
「三島みつね…大した奴だな。」
「ええ、そうね。」
久蔵と智子はみつねに目をやっていた。そのみつねは、疲労からか寝そべっていた。
「はぁ…はぁ…やったぁ!」
こうして、ニールス&ペーターによる襲撃は、三島みつねの勝利によって、幕を閉じたのであった。




