72話:恐るべき兆能力
ニールスは、改めて辺りを見回した。
「どうやら、ここにはオーラ感知機はないようですね。不用心です。」
ペーターが口を開いた。
「お前たち、なぜ私たちが兆能力を発動してこなかったか、わかるか?」
「知らねぇし、知りたくもねぇよ。」
久蔵が言った。
「それは、私たちの兆能力が恐ろしいからだ!ははははは!」
「聞いてないわよ!」
智子が怒鳴った。
「まずは、ニールス。任せた。」
「任せてください。ペーターさん。」
ニールスが立ち上がった。智子やみつねは身構える。しかし、何も起こらない。
「拍子抜けにもほどがあるわ…」
智子がほっと一息ついたとき、
「ひっ!?」
腰を抜かした。みつねも同様に腰を抜かす。
「ねぇ、遊ぼうよぉ。」
「熱いなぁ。熱いよぉぉぉぉぉ。」
「!」
久蔵が辺りを見回すと、そこには多くの人々?が漂っていた。やけに遊びたがる子ども、熱がっている女性、ふらふらと動き回っている男性...
「負の残留思念を具現化するという兆能力、『ケアレス・キャスパー』か!」
「ひぇぇ、あれって首都警察宿舎七不思議の一つ、燃える幽霊だぁ!」
智子がかなり怯えていた。久蔵がため息をつきながら言った。
「あれは所詮、残留思念だ…驚かせるだけで害はない。」
「ケアレス・キャスパーへの認識が甘いですね。それはレベル2までの話です。」
残留思念の一つ、やけに遊びたがる子どもが久蔵に近づく。
「ねぇ、遊ぼうよぉ。」
「遊ばねぇよ!」
久蔵は子ども相手でも容赦なくすごむ。
「あっちでピコピコでもやってな、ガキが。」
「遊ぼうよぉ。遊べよぉぉぉぉぉ!」
子どもの残留思念が、黒いオーラを発し、そのまま久蔵に飛びかかっていった。
「躾が必要だな。」
久蔵がその子どもにキックを当てようとするが、すり抜けた。
「!」
「残留思念ですよ。触れられるわけがないでしょう。」
ニールスがにやっとしながら言った。久蔵のキックをすり抜けた残留思念は、そのまま久蔵と一体化した。そう、取り憑いたのである。久蔵はすとんと肩を落とした。
「久蔵君!」
腰が引けていたみつねは、なんとか立ち上がり、久蔵のもとに駆け寄ろうとした。しかし、ナイフを持ったペーターがそれを阻む。
「君の相手は、俺だぜ。」
ペーターは、持っていたナイフを手から放した。ナイフは落ちることなく宙に浮いている。ナイフはそのままみつねに向かって飛んでいった。
みつねはそれをかわすが、飛んでいったナイフは踵を返して再びみつねの方に向かっていく。
「かわすんじゃねぇぇ!」
「ひぃ!?」
突然ナイフが喋り始めた。
「俺の役割はものを切り裂くことだ!その役割を果たすために、お前は切り裂かれるものとしての役割を果たせぇ!」
ナイフが再びみつねに飛んできた。みつねは、それをかわすのではなく、柄を掴んで受け止めた。が、
「放せぇぇぇ!きええええええ!!」
ナイフが縦に回転し、みつねの手を切った。みつねは痛みに耐えられず、手からナイフを話した。
(なにこれ!?物に魂を宿しているの!?)
「みつねちゃん!それは、物に魂を宿す『付喪神』!物にうかつに触れたらダメだよ!」
智子が周りの残留思念から逃げ回りながら言った。智子は久蔵の方に駆け寄る。久蔵は、未だ立ち尽くしていた。
「あんた!しっかりしなさい!」
智子が久蔵の肩に触れようとしたとき、
「ひぃーはっはっははは!久しぶりの肉体だぁ!」
「ひぃ!」
久蔵は明らかに人が変わっていた。子どもの残留思念に、意識を完全に乗っ取られたのである。
「せっかくだし、こいつの兆能力で遊ぶぜぇぇ!」
久蔵?は青色のオーラを発した。すると、カードの束が出現する。
「なんだぁ?これ。」
「まずいわ!かなり!」
智子が久蔵?から距離をとった。
「トランプですかね?試しに引いてみればどうですか。」
ニールスが冗談まじりに言った。それを聞いた久蔵?は、カードを引こうとした。
「トランプはソリティアに限る!キャンフィールドでもやるかなぁ!」
「ダメ!引いちゃダメ!」
智子の制止に耳を貸さず、久蔵?はカードを引いた。
「は?なんだこれ?」
カードには、恐竜の絵が描かれていた。
久蔵?が恐竜の絵が描かれたカードをしばらく見ていると、そのカードが突然発光した。久蔵?はそのまぶしさに思わず目をつむる。発光が収まり、久蔵?は恐る恐る目を開ける。
すると、カードに描かれていた恐竜が出現しているのが見えた。




