67話:緊急手術
秀助は救急車に運ばれていた。救急隊員が話し合っていた。
「困りましたね…これだけの傷…僕たちの治癒能力では治せませんよ…」
「ああ、病院で対応するしかないな…」
救急車はそのまま近くにあった総合病院に到着し、秀助は手術室に連れられて行った。そこには、知らせを聞いた十兵衛や中原がいる。菊千代は十兵衛に頭を下げた。
「申し訳ございません!私がついていながら…」
「いいんだ。諌山君。私にも責任がある。」
「…想像以上に刺客を送り込んでいるらしいですね…菊千代、どんな相手だった?」
「それが…」
菊千代は、襲われたときの様子を詳細に話した。
「タギーか…!信仰しているのは、SOCIOLOGIだろうがな...」
十兵衛が呟いた。タギーとは、インドで組織される殺し屋集団である。本来のタギーは、ヒンドゥー教の女神・カーリーを信仰し、流血による殺人を禁じている。そのため、黄色いスカーフによる絞殺を専門とする。
「中原君。皆に伝えてくれ。気をつけるようにと。タギーは組織化された集団だ。3人だけじゃない。」
わかりました、と言って中原がどこかに急いで走りに行った。
「秀助…」
十兵衛は、手術中と表示されている赤い照明に目をやっていた。しばらくすると、その照明が消滅した。手術室から執刀医が出てくる。十兵衛はそれに駆け寄った。
「彼の容態は…?」
「少なくとも、命に別状はないです。ただ、いつ目を覚ますかは…とりあえず、入院させましょう。」
十兵衛はほっと胸をなで下ろした。
「そうですか…生きてるだけ、よかった…」
次の日、改めて五味川茉莉救出メンバーが招集された。
「聞きましたよ。ミスター・リード首都警総監。しゅう君は大丈夫なのでしょうか?」
善俊が不安そうに聞いた。
「ああ。しばらく入院することになったが、少なくとも命に別状はないとのことだ。」
善俊やみつね、雄康らがほっとした。
「しかし、あの秀助がやられたんだ。皆も十分警戒してくれ。」
善俊らは、秀助を見舞いに行った。病室に入ると、既に菊千代がいた。
「諌山首都警部、来てたんですね。」
「ええ、ペアだからね…」
菊千代は元気がなかった。秀助が倒れたことに責任を感じていたのだ。
ベッドで横になっている秀助は、目を開けていない。まだ意識が戻っていないようだ。
「しゅう君がこんなことになるなんて…」
みつねがぼそっと言った。菊千代が3人の方を見て言った。
「皆も気をつけてね…無理はしないで…!」
「!…はい!」
善俊たちは大きな声で返事をした。それを見た菊千代は少し元気になったようだ。にこっと笑った。
「…それじゃあ、俺はそろそろ行くよ…別件の捜査に行かなければならないからな…」
そう言って雄康は、一足先に病室を後にした。病院を出ると、七郎次と伊里が待機している。
「終わった?彼、大丈夫そう?」
「…ああ…なんとかな…そんなに気になるなら、お前らも来ればよかったじゃないか…」
「大勢で行っても迷惑さ。」
そのとき、伊里がはっきりと言った。
「うち、あの人好きやないわ。」
「…!」
「お、おい!伊里!」
伊里は続けた。
「強いんか知らんけど、上司に対する口の利き方がなってないねん。首都警察は、上下関係について厳しかったはずや。実際、うちの友達はそれで合宿落ちた。」
「…」
雄康は不機嫌そうな顔をする。七郎次が怒鳴る。
「伊里!タイミングってのを考えろ!雄康君の気持ちも知らずに!」
「...いいんだ、七郎次...仕事に行こう...」
雄康は足早に病院を後にする。伊里もそれに続き、もどかしさを感じながら七郎次もついていく。その3人を、5人の人影がマークしていた。タギーである。2人のタギーは姿を消し、残り3人のタギーは影に身を潜め、3人を尾行するのであった。




