51話:十兵衛の兆能力
「どこを使って行動しているか…だと?」
フェルナンド伯爵は最初、その発言の意味を理解できなかった。しばらく考えた後、こう答えた。
「そりゃあ、手足や体を動かしてだろ。」
「そうなんだが、違う…お前、ノイシュバンシュタイン城建てたのを大工って言うタイプかい?」
「うるせぇな…」
「ここだろ?ここ。」
デイヴィッドが頭に指差しながら言った。
「ここまで言ったらわかるだろ?腐っても、世界三大兆能力者の一角を担う者なんだろう?」
「いちいちうるせぇな!…はっ!」
フェルナンド伯爵がはっとした。
「そうだ。頭の中で考えて行動する。リードは、まるで相手のそれがわかっているかのように行動する。俺がマスケット銃を向けたとき既に、奴は銃口から逃れていた!」
フェルナンド伯爵は手の平をポンっと叩いた。
「人の心を感知できる兆能力『テレパシー』…!」
「正解だ!」
十兵衛がフェルナンド伯爵に拍手をしていた。
「フェルナンド、お前さんの空っぽな頭の中で、理論が構築されていく様は、読んでいて滑稽だったぞ。」
「てめぇ…!そうやって俺の心を読んで馬鹿にしてきたのか!」
フェルナンド伯爵は大砲を出現させて砲撃する。十兵衛はそれを楽々とかわす。
「単調だな…お前さんほど真っ直ぐな心の声はない。」
十兵衛がフェルナンド伯爵の攻撃をかわしている様子を見ながら、デイヴィッドが聞いた。
「リード、お前、いつからテレパシーを発動していた?」
「決まっているだろう。ここに来てからだ。無色オーラと相性がいいからな。とはいえ、無色オーラだと、誰が何を思っているのか判別がつかない。」
「ふっ。組織の情報もかなり握ったんだろうな?」
十兵衛は笑っていた。
(ああ。ロングアイランドアイスティーという、お前さんが考えたくだらない合言葉も含めてな。)
(脳内に直接…!)
フェルナンド伯爵は相変わらず攻撃を続けていた。大砲をばんばん撃ちまくる。
(無心!無心!無心!)
「フェルナンド、スポーツ漫画は読むかな?」
「は?」
フェルナンド伯爵は思わぬ質問に困惑したが、構わず砲撃を続けた。
(バッターボックスに立った打者が、ボールを投げられてからバットを振るまでの短時間に、ありえんぐらいの長文で思考しているのを見たことないかい?あれは、キャラクターが感覚的に思ったことを、読者に向けて言語化しているだけのことなんだ。)
「だからどうした!」
(人間は、脳内の様々な部位が機能し、連携することで、体を動かすことができる...意識せずともな。私のテレパシーは、その脳内の複雑な動きさえも読み取ることができる。つまり、お前さんが『無心!無心!』などと思ったところで、全てお見通しなのだよ。)
「な!」
「ぶははははははは!」
デイヴィッドが腹を抱えて笑い始めた。フェルナンド伯爵は赤面している。
「いやー、すまないな、フェルナンド!ついおかしくて…ひひっ!」
「てめぇら…俺を馬鹿にしやがって…こうなったら…!」
「!」
十兵衛は笑うのをやめ、フェルナンド伯爵に向かっていった。そしてそのまま、壱極集中の蹴りをフェルナンド伯爵の腹部にお見舞いした。
「レベル…ぐはつ!」
フェルナンド伯爵は何か言おうとしていたが、十兵衛の蹴りをもろにくらい、その場に倒れた。フェルナンド伯爵らしくない、呆気ないやられ方であった。
「フェルナンドの野郎…マジになりすぎだ….だが、おかげで大きな隙ができたな。」
十兵衛が呆れていた。
「さて…馬鹿も倒れたことだし、こっからが本番かな?」
デイヴィッドが腕を組んで見ていた。
(わざわざ口を開くのは面倒だ…テレパシーで伝えてくれてもいいんだよ?)
(それだと、私の負担が大きいじゃないか。)
一方、秀助たちはNo.11の分身に苦戦を強いられていた。
「なあ、ヤス!こんだけの分身を一気に消す方法はないのか?」
「…本体を叩けば消えるが…いかんせん区別がつかん…!」
トレイシーが口を開いた。
「本体と分身、心拍まで一致しているわ。ここまでくると不気味極まりないわね。」
No.11はさらに分身を生み出した。今度は12体追加である。これによって、No.11の数は本人含めて22人となった。
「うわあああああ!」
ここまでくると完全に劣勢である。全てのNo.11が高笑いをしていた。善治が、あることに気がつく。
「等比数列だ!こいつら、初項3、等比2の等比数列的に増加してやがる!」
「なんだよそれ!ってことは、次は24体増えるってのか!?」
秀助は戦慄していた。とはいえ、それぞれNo.11の動きに慣れてきたのか、善俊を除いて善戦するようになってきた。中原は、コフィンテイカーを発動し、棺にNo.11を閉じ込め、そのままコフィンテイカーを解除する。これにより3体の分身が消滅した。
「お前ら!殺す気でやれ!じゃないと、こっちがやられるぞ!」
園田が真剣を持ち直し、トレイシーも表情を険しくしていた。
(心拍を、死に至るまで弱めるしかないわね。)
そんな中、善俊は苦戦を強いられ続けていた。
「おい、善俊!お前しっかりしろ!」
ついに、2人のNo.11が壱極集中のパンチを放った。それはどちらも善俊に命中しようとしていた。
「とっしー!」
秀助や雄康はそれを助けようとするが、他のNo.11に邪魔をされてどうにもできない。もはやこれまでと思ったそのとき、
「うおおおおおお!」
善治が飛び出してきた。善治は、身を挺して善俊を庇ったのだ。




