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兆兆発止  作者: ぱんろう
兆能力ファイトクラブ編
51/150

51話:十兵衛の兆能力

「どこを使って行動しているか…だと?」

フェルナンド伯爵は最初、その発言の意味を理解できなかった。しばらく考えた後、こう答えた。

「そりゃあ、手足や体を動かしてだろ。」

「そうなんだが、違う…お前、ノイシュバンシュタイン城建てたのを大工って言うタイプかい?」

「うるせぇな…」

「ここだろ?ここ。」

デイヴィッドが頭に指差しながら言った。

「ここまで言ったらわかるだろ?腐っても、世界三大兆能力者の一角を担う者なんだろう?」

「いちいちうるせぇな!…はっ!」

フェルナンド伯爵がはっとした。

「そうだ。頭の中で考えて行動する。リードは、まるで相手のそれがわかっているかのように行動する。俺がマスケット銃を向けたとき既に、奴は銃口から逃れていた!」

フェルナンド伯爵は手の平をポンっと叩いた。


「人の心を感知できる兆能力『テレパシー』…!」


「正解だ!」

十兵衛がフェルナンド伯爵に拍手をしていた。

「フェルナンド、お前さんの空っぽな頭の中で、理論が構築されていく様は、読んでいて滑稽だったぞ。」

「てめぇ…!そうやって俺の心を読んで馬鹿にしてきたのか!」

フェルナンド伯爵は大砲を出現させて砲撃する。十兵衛はそれを楽々とかわす。

「単調だな…お前さんほど真っ直ぐな心の声はない。」

十兵衛がフェルナンド伯爵の攻撃をかわしている様子を見ながら、デイヴィッドが聞いた。

「リード、お前、いつからテレパシーを発動していた?」

「決まっているだろう。ここに来てからだ。無色オーラと相性がいいからな。とはいえ、無色オーラだと、誰が何を思っているのか判別がつかない。」

「ふっ。組織の情報もかなり握ったんだろうな?」

十兵衛は笑っていた。

(ああ。ロングアイランドアイスティーという、お前さんが考えたくだらない合言葉も含めてな。)

(脳内に直接…!)

フェルナンド伯爵は相変わらず攻撃を続けていた。大砲をばんばん撃ちまくる。

(無心!無心!無心!)

「フェルナンド、スポーツ漫画は読むかな?」

「は?」

フェルナンド伯爵は思わぬ質問に困惑したが、構わず砲撃を続けた。

(バッターボックスに立った打者が、ボールを投げられてからバットを振るまでの短時間に、ありえんぐらいの長文で思考しているのを見たことないかい?あれは、キャラクターが感覚的に思ったことを、読者に向けて言語化しているだけのことなんだ。)

「だからどうした!」

(人間は、脳内の様々な部位が機能し、連携することで、体を動かすことができる...意識せずともな。私のテレパシーは、その脳内の複雑な動きさえも読み取ることができる。つまり、お前さんが『無心!無心!』などと思ったところで、全てお見通しなのだよ。)

「な!」

「ぶははははははは!」

デイヴィッドが腹を抱えて笑い始めた。フェルナンド伯爵は赤面している。

「いやー、すまないな、フェルナンド!ついおかしくて…ひひっ!」

「てめぇら…俺を馬鹿にしやがって…こうなったら…!」

「!」

十兵衛は笑うのをやめ、フェルナンド伯爵に向かっていった。そしてそのまま、壱極集中の蹴りをフェルナンド伯爵の腹部にお見舞いした。

「レベル…ぐはつ!」

フェルナンド伯爵は何か言おうとしていたが、十兵衛の蹴りをもろにくらい、その場に倒れた。フェルナンド伯爵らしくない、呆気ないやられ方であった。

「フェルナンドの野郎…マジになりすぎだ….だが、おかげで大きな隙ができたな。」

十兵衛が呆れていた。

「さて…馬鹿も倒れたことだし、こっからが本番かな?」

デイヴィッドが腕を組んで見ていた。

(わざわざ口を開くのは面倒だ…テレパシーで伝えてくれてもいいんだよ?)

(それだと、私の負担が大きいじゃないか。)


一方、秀助たちはNo.11の分身に苦戦を強いられていた。

「なあ、ヤス!こんだけの分身を一気に消す方法はないのか?」

「…本体を叩けば消えるが…いかんせん区別がつかん…!」

トレイシーが口を開いた。

「本体と分身、心拍まで一致しているわ。ここまでくると不気味極まりないわね。」

No.11はさらに分身を生み出した。今度は12体追加である。これによって、No.11の数は本人含めて22人となった。

「うわあああああ!」

ここまでくると完全に劣勢である。全てのNo.11が高笑いをしていた。善治が、あることに気がつく。

「等比数列だ!こいつら、初項3、等比2の等比数列的に増加してやがる!」

「なんだよそれ!ってことは、次は24体増えるってのか!?」

秀助は戦慄していた。とはいえ、それぞれNo.11の動きに慣れてきたのか、善俊を除いて善戦するようになってきた。中原は、コフィンテイカーを発動し、棺にNo.11を閉じ込め、そのままコフィンテイカーを解除する。これにより3体の分身が消滅した。

「お前ら!殺す気でやれ!じゃないと、こっちがやられるぞ!」

園田が真剣を持ち直し、トレイシーも表情を険しくしていた。

(心拍を、死に至るまで弱めるしかないわね。)

そんな中、善俊は苦戦を強いられ続けていた。

「おい、善俊!お前しっかりしろ!」

ついに、2人のNo.11が壱極集中のパンチを放った。それはどちらも善俊に命中しようとしていた。

「とっしー!」

秀助や雄康はそれを助けようとするが、他のNo.11に邪魔をされてどうにもできない。もはやこれまでと思ったそのとき、


「うおおおおおお!」


善治が飛び出してきた。善治は、身を挺して善俊を庇ったのだ。


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