50話:三つ巴の戦い
フェルナンド伯爵は嬉しそうな顔をして十兵衛を見た。
「リード!始めよう!最高の戦いを!」
「その前にリード、その子をどうした。」
十兵衛はフェルナンド伯爵に強く尋ねた。
「ああ、ワイルド・スピードの女か…ワイルド・スピードってのは速度に優れる分、動きが単調になりやすい。おおよその動きを見切ったところで…」
「そういうことを聞いているんじゃねぇ!」
十兵衛は怒声をあげた。フェルナンド伯爵は耳を防ぐようなジェスチャーをした。
「うるさいな。観客はいないんだ。そんな大声出さなくとも聞こえる。それよりリード、つまらない前座を終えたところで、さっさと始めようじゃないか。」
「つまらない…前座…だと?それは...みつね君のことか...?」
十兵衛が紫色のオーラを出現させた。フェルナンド伯爵は、より嬉しそうな顔になった。
「おお!珍しくやる気じゃないか!」
「ああ…バリバリやる気さ…ここなら私の兆能力もフルパワーで使える…!」
十兵衛とフェルナンド伯爵が見つめ合っていたとき、十兵衛の後ろから声が聞こえた。
「ほう、面白そうなことになっているじゃないか。」
デイヴィッドだ。ついに、十兵衛に追いついたのだ。
「デイヴィッドォ、お前も来たのか!ははは!これは面白くなりそうだ!」
フェルナンド伯爵はこれまでにない高笑いをした。
「ん?」
「お前も戦いに来たのだろう?このときを楽しみに待っていたぞ!」
「おい、何を勘違いしているんだ?」
「この会場には、俺たち以外に誰もいない!存分にやろうじゃないか!」
デイヴィッドはため息をついた。
「やれやれ、戦闘狂も度が過ぎるな…」
十兵衛がデイヴィッドの方を見ながら口を開いた。
「そんなこと言いながら、お前さんも乗り気のようだな…?」
「ふふっ。ばれたか。」
デイヴィッドは笑いながらオーラを出現させていた。しばらく三者は動かず、それぞれの動きを警戒している。最初に動いたのはフェルナンド伯爵であった。フェルナンド伯爵はマスケット銃を出現させ、2人に向けて発砲した。十兵衛は既にそれを避けていた。銃の発砲を生身でかわすのは難しいことであるが、十兵衛は見事に避けていたのである。一方のデイヴィッドは、サイコキネシスによって銃弾を受け止めていた。その銃弾をフェルナンド伯爵に向けて発射した。フェルナンド伯爵は鉄の壁を念写し、それで銃弾を受け止めた。ふと下を見れば、十兵衛がいた。壱極集中のパンチをフェルナンド伯爵にぶつけようと、拳にオーラを纏わせている。フェルナンド伯爵も拳にオーラを纏わせる。オーラを纏った拳と拳がぶつかり合った。
どごおおん!!
大きな衝撃が発生し、ドラゴンの攻撃によってできた、城の残骸を吹き飛ばした。
「ふっ。」
飛んでいた瓦礫の一部は、突然動きを止める。それなのに、宙に浮いたままであった。デイヴィッドだ。デイヴィッドが、瓦礫をサイコキネシスで操っていた。デイヴィッドは、それらの瓦礫を2人めがけて発射する。十兵衛は、それも既にかわしていた。フェルナンド伯爵は念写でハンマーを出現させ、飛んできた残骸を全て砕いた。
「お見事だな。」
デイヴィッドが拍手をしていた。
「ぐぁー!わからん!」
フェルナンド伯爵が、頭をかきむしりながら、急に大声を出し始めた。
「リードの兆能力が全くわからん!」
デイヴィッドが続けて発言する。
「ミスター・リード、お前は世界三大兆能力者に数えられながら、未だに兆能力がなんなのか、ほとんどの人が知らない。まあ、あまり表に出るような人間じゃない。多くの人が知らないのも納得だが。」
「ほとんど?全くの間違いだ。」
十兵衛がにやっとしながら言った。
「私が知っている。」
デイヴィッドが自信満々に言った。フェルナンド伯爵が興味津々に聞いた。
「本当か!教えてくれ!」
「おい、今のお前は、私の協力者じゃなく、敵対者だろう?教えるわけないだろう。」
「ぐぬぬぬぬぬ!」
フェルナンド伯爵は歯を食いしばらせていた。
「わかった!一時協定だ!だから教えろ!」
「都合がいい奴だ….断る!」
デイヴィッドは呆れながら言った。フェルナンド伯爵は呆気にとられる。
「だが、ヒントは教えてやっていいかもなぁ。」
そう言ったデイヴィッドに対して、十兵衛が急接近していた。
「ふふ…」
その十兵衛を、フェルナンド伯爵がマスケット銃で狙撃した。十兵衛はそれをかわすために、デイヴィッドに近づくのをやめた。
「言え!」
フェルナンド伯爵が叫ぶ。デイヴィッドは笑いながら、ヒントを口にする。
「いいだろう。大ヒントだ…フェルナンド。お前が何か行動をするとき、どこを使って行動している?人間は、どうして体を動かすことができる?」




