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兆兆発止  作者: ぱんろう
兆能力ファイトクラブ編
49/150

49話:十兵衛とみつね

10年前―十兵衛が首都警総監に就任して間もない頃であった。東京のある施設を、兆能力犯罪者で構成されたテロ組織が占拠した。100人余りが人質となり、日本中大パニックであった。

十兵衛は本件を重要兆能力犯罪と認定し、自らも現場に赴いた。首都警総監がやって来ると聞いて、メディアは注目していた。十兵衛は、自身が首都警総監であるとメディア関係者に悟られないよう、変装している。

現場に到着し、十兵衛は施設をじっくりと観察する。敵の数は、確認できるだけで11人。人数こそ少ないが、どれもレベル2・3相当であると見えた。当時首都巡査だった中原が怯えながら言う。

「ど、どうすればいいんだ…」

「首都警察がへこたれるな!いいか、中原君。こちらが下手であっても、相手の動きを見る癖はつけなさい。相手がどのような兆能力を用いるかを見極めることができる。」

「は、はあ…」

十兵衛は建物内部に入ろうとする。

「首都警総監、何を!?相手を刺激してしまいますよ!」

周りの首都警察官が動揺した。十兵衛は毅然としていた。

「安心しろ。どうやら、私のことは受け入れてくれるみたいだ。」

周りの首都警察官はぽかんとした。何を根拠にそんなことが…とその場にいた全員が思った。十兵衛は、不安そうな彼らの視線を浴びながら、11人のテロリストが隠れている施設に堂々と入っていった。

その後の様子は、後に解放された人質たちの目撃談や、確保されたテロリストの話からでしか知ることができない。確かだったのは、人質の周りにいたテロリスト3名を除く8名は、ものの数分で倒されたこと、そして…

「来たようだな。ミスター・リード首都警総監。」

十兵衛は、施設の中でも広い部屋に出た。人質が集められており、3人の男がそれを囲んでいた。

「大した兆能力だな。」

一人の男が紫色のオーラを発しているのを見て、十兵衛が口を開いた。

「そうだ。私の兆能力『心ノ眼』は、相手の名前や性別、地位を見極めることができる。あんたは、只者じゃないって、この眼が言っているのだよ。」

テロリストの一人が眼をぎらぎらさせながら言った。

「心ノ眼か…それで、私を迎え入れたのに、訳はあるのかな?」

「そうだ。お前も人質になってもらうんだ。だから、部下にも襲わせないよう通信した。すんなり入ってこれたのはそのためだ。」

十兵衛は頭をかきながら言った。

「そうか。どうりで手ごたえがないと感じたわけだ。」

「貴様!同胞を!」

テロリストは激情し、人質に危害を加えようとした。十兵衛はそのテロリストに急接近し、壱極集中の蹴りをかました。

「な、なんて野郎だ!」

仲間のテロリストは、動揺して動けなくなっていた。十兵衛はその隙を逃さず、同じく壱極集中の蹴りをぶつける。あっという間に2人のテロリストを倒したのである。

それを見て、感動していた少女がいた。

最後に残った1人が、近くにいた人質を捕らえ、十兵衛を脅す。それでも十兵衛はテロリストに近づこうとする。

「く、来るな!こいつの命はないぞ!」

脅し文句で十兵衛に牽制するが、それでも歩みを止めない。腕にオーラを纏わせていたそのとき、

「がはぁあ!」

少女が猛烈なスピードでテロリストに突っ込んだ。テロリストは吹き飛び、人質を放してしまう。さすがの十兵衛も驚いた。


「これは、ワイルド・スピード…!」


しかし、いくらスピードがあっても子どもの攻撃、テロリストを倒すことはできなかった。

「このガキ!」

テロリストはその少女を捕まえ、そのまま絞め殺そうとした。

「ぐぬぬぬぬ!」

少女は苦しみ悶える。十兵衛は少女に夢中になっているテロリストの隙をつき、壱極集中のパンチを打ち当てた。

「ぐへぇっ!」

テロリストはそのまま倒れこんだ。締め上げられていた少女は解放され、十兵衛に受け止められた。そのうち、十兵衛の部下らが突入し、テロリストを捕えていった。犠牲者を出すことなく、事件を解決させることができた。

テロリストが連行されているのを横目に、受け止めた少女を見た。少女は十兵衛のことを、目を輝かせながら見ている。十兵衛は眉をひそめて言った。

「お前さん、ダメじゃないか!危険なことは!」

少女はしょんぼりする。

「でも、その勇気はうちの部下にも見習ってほしいもんだ。なあ?中原君?」

十兵衛はにやにやしながら、中原の方を振り返る。

「何があったのかわかりませんが、無謀なことできるのはミスター・リード首都警総監だけですよ…」

中原は呆れながら言った。十兵衛はふふっと笑いながら、再び少女の方を見る。

「お前さん、名前は?」

少女は元気いっぱいに答えた。

「みつね!三島みつね!」

それが、三島みつねと十兵衛の、最初の出会いであった。


そのみつねが、倒れている。息があるのかはわからない。しかし、誰が相手でも容赦しないあのフェルナンド伯爵のことだ。十兵衛は心配そうに見ていた。

「みつね君!!」

声をかけるが返事はない。十兵衛の声を聞いて、彼の方を見たのは、フェルナンド伯爵だけであった。

「リード…ちょうど、相手がいなくなったところだ…!俺と戦え!」

「フェルナンド…!」


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