46話:母をたずねて3650日
秀助は、搬送されている怪我人に同行するふりをして、母がいると思われる場所に向かっていった。
(待ってろ、おふくろ!今会いに行く!)
進んでいくにつれて、白衣を着たスタッフを見るようになってきた。しかし、肝心の母がいない。
「その怪我人は私が担当しよう。おそらく、私レベルでも5分で治療できる。」
白衣の一人が、怪我人と同行する秀助らに声をかけた。
「君たちはそのままホテルに向かいなさい。会場に行けば、こっちに戻ってくることになる。」
白衣が怪我人を引き取りながら言った。そうするわけにはいかないと、秀助は架空の怪我人をでっち上げる。
「いえ、あっちにもっとひどい怪我人がいるんです。マリアンヌの助けが必要かと。」
「そうか。では連れてきてくれ。私が見よう。」
「聞いてなかったのか!マリアンヌじゃないと無理だ!」
「…わかった。あちらにいらっしゃる。怪我人をそこに連れていけ。」
白衣のスタッフは、ある方向を指さしながら言った。
「ああ、感謝する。」
秀助は架空の怪我人を迎えに行くふりをしながら、白衣が指さした方向へ向かっていった。すると、とても広い部屋を見つけた。
(おふくろ!)
そこに入ると、一人の女性が佇んでいた。周りには多くの重症人が並べられている。しかし、全員穏やかな顔をしており、すやすやと眠っていた。
「おふくろ!」
秀助がその女性―五味川茉莉―に声をかけた。しかし、反応がない。
「どうしちまったんんだよ…俺だよ!秀助だよ!」
距離を縮めながら言っても返事がない。茉莉はただ紫色のオーラを発していた。
「おい!お前!そこで何をやっている!」
秀助は誰かに呼び止められる。
振り返ると、そこにはデイヴィッドと、No.11が立っていた。
「お前!怪我人じゃないだろう!」
「なんだお前ら…?」
「なんだとはなんだ!ここは重症人以外立ち入り禁止だ!ていうかお前、しゅう君だよな!?フェルナンド伯爵と戦っていたんじゃないのか!?」
怒鳴り散らすNo.11を、デイヴィッドが抑える。
「まあ落ち着けよ、No.11。それよりこの男、面白いことを口にしたぞ。そう、おふくろとな。」
「おふくろ?母のことか?….まさか!」
No.11がはっとして秀助の方を見る。
「ああ、どうやらこいつは、五味川茉莉のガキらしい。」
「驚いたな…確かによく見てみればあいつに…」
「おい!そいつの話はするな。思い出すだけでも虫唾が走る。」
デイヴィッドが不機嫌になりながら言った。
「ああ、すまなかった。それより、どうするんだ?こいつ。」
「ふふっ。捕まえて、リードと同じところに監禁しておけ。」
「!…そうか!お前らがじーさんを…あっ!」
「「!」」
ついうっかり口に出してしまった。いつもの秀助ならこのようなへまはしない。するわけがない。しかし、変わり果てた母との再会に、気が動転していたのである。
「またまた驚きだな。こいつもリードの部下らしい。」
「飛んで火にいる夏の虫か!お笑いだな、こいつは!」
デイヴィッドとNo.11が大笑いしながら言った。
「…ねぇ…」
「ん?」
No.11がぽけーっとしていたとき、塵がNo.11に命中した。デイヴィッドにも同じく塵が飛んできていたが、彼はそれをかわしていた。
「やるしかねぇ!お前らをぶちのめして、おふくろを連れ帰る!」
「こいつ!よくもやったな!」
「No.11、こいつはガキといってもレベル3だ。それに、レベル2時点でレベル3の相手に勝っている。油断はするな。」
「ああ、そうだな。」
デイヴィッドとNo.11が兆能力を発動した。デイヴィッドがレベル3なのは、想像に難くないが、あの頼りないNo.11も、同様にレベル3であった。2人分の、紫色のオーラがゆらゆらとうごめいている。
(さすがに分が悪いか…ここは気を逸らして逃げの一手だ。)
冷静になった秀助は四次元ゴミ箱を出現させ、塵や紙屑を取り出せるだけ取り出した。そしてそれを2人めがけて発射した。
「へっ。それがなんだよ!」
No.11が高を括っていた。しかし、
「馬鹿野郎!かわせ!」
デイヴィッドがサイコキネシスで塵や紙屑を跳ね除けた。それらは燃え始めていた。
「ダストメイカーレベル3は、四次元ゴミ箱が2つになる。そのうち1つは燃えるゴミ箱!発射させたゴミを発火させることができる!」
(詳しいな、こいつ…それにどこかで見た顔だ…)
デイヴィッドはお返しに、サイコキネシスでの攻撃をしてきた。周りにあったもの全てを宙に浮かせ、秀助めがけて発射したのだ。
「うわぁぁ!」
防御のため塵を集めるが、ものの量が桁違いである。これでは受けきれない。もうダメかと思ったそのとき、秀助に向かっていったものがすぱっと斬られた。
「…秀助…大丈夫か…」
雄康が真剣を手に持ち、立っていた。
「ヤス!どうしてここに…」
雄康だけでなかった。捕らえられていた十兵衛らと善治もやって来たのである。




