44話:荒れる会場
フェルナンド伯爵は動揺した。
「くそっ!主砲にガラス瓶を突っ込みやがったな!ウォッカ!」
フェルナンド伯爵は戦車から身を乗り出す。そのときを狙っていたかのように、秀助が蹴りにかかってきた。紫色のオーラを纏わせて。
「ごはぁっ!」
フェルナンド伯爵は戦車から追い出されるように、蹴り飛ばされていった。
「これで2発…!」
『しゅう君!戦車の主砲を大破させ、さらにはフェルナンド伯爵にもう一発かましたぞぉぉぉ!』
会場は再び大きな歓声に包まれた。フェルナンド伯爵が立ち上がる。
「面白い!これだけ楽しいのは久しぶりだ!いいぞ!特別に見せてやろう!俺ができる最強最大の念写を!」
そう言って、フェルナンド伯爵がその場で力を込め始めた。すると、ごごごごごごと轟音を立てながら、会場が大きく揺れ始めた。会場はざわつき始める。
「な、なんだ?」
「何が起きている!」
しばらく揺れが続いていると、地中から巨大な建物が現れているのが見えた。それも、一つや二つではない。複数の建物が、観客席も巻き込みながら出現する。いずれ、揺れは収まり、新しい建物の出現もなくなった。出現した複数の建物は、大きな壁によって囲われている。
フェルナンド伯爵は、巨大な城を出現させたのである。
『な、な、な、な、な、なんだあれはぁぁぁぁぁぁぁ!フェルナンド伯爵!巨大な城を出現させたぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『念写…なんでもありだ…』
会場は、建物の出現に巻き込まれて大怪我を負った人で、阿鼻叫喚の様相を呈していた。
「だ、誰かぁぁ!」
「助けてくれぇぇ!」
その様子を見ていたNo.11が焦っていた。
「なんてことしてくれてんだ!せっかくの金づるが…」
隣でデイヴィッドが笑っていた。
「でかしたぞ、フェルナンド!これは、五味川茉莉の凄さを直接体験してもらえるいいチャンスだ!」
No.11がはっとした。
「そうか!今すぐアナウンスさせてくる!」
No.11は、急いで電話をかけ始めた。
秀助は眉間にしわをよせていた。
「お前!観客はおかまいなしかよ!」
「もともとここは無法地帯だ!関係ない!そんなことより、王座の間で待っているぞ!」
フェルナンド伯爵はそう言いながら、大きな門をくぐり抜ける。フェルナンド伯爵が城に入ると、門が閉まる。傷がついたリングが見える、立派な城門である。
「関係ないだと…?ふざけやがって!!」
秀助は塵芥雲を作り出し、それに乗る。正面からではなく、上からフェルナンド伯爵に攻撃するのだ。
「ちくしょう!王座の間ってなんだよ!」
上から城を見ると、様々な建物が見える。しばらく上から見ていると、ある建物から人影が出てきた。しかし、それは1名ではない。マスケット銃を持った4人の兵士であった。
「な!」
兵士は秀助に向けて発砲する。秀助は塵芥雲を巧みに操ってそれをかわしながら、四次元ゴミ箱を出現させ、塵や紙屑を取り出す。そして、それを兵士に向かって発射させる。ゴミは発火して兵士を燃やし始めた。
「たったそれだけの兵士で、この俺に敵うと思うのか?」
秀助が笑いながら見ていると、突如1つの建物が崩壊した。そこから現れたのは…
「ぐぉぉぉぉぉ!」
大きな咆哮をあげたのは、体長20mにもなる、蛇のようなドラゴンであった。
『ここまでくるとなんでもありだ!もはやリアクションできる気力もない!』
『リンドブルムだ…本物は初めて見た...』
ドラゴンは空を飛び、稲妻を発生させながら秀助を追いかける。秀助は動揺しながらも、塵芥雲で逃げる。途中で塵を集め、ドラゴンめがけて発射するも、全く効いていない様子であった。ドラゴンは流星までも発生させ、秀助を追い詰める。
「こいつっ!」
秀助は四次元ゴミ箱からガラス瓶を取り出した。
(こいつで最後か…使いどきを誤らないようにしないとな…)
秀助はガラス瓶を手に持ちながらドラゴンから逃げ惑う。ドラゴンは稲妻や流星で攻撃してくる。
「ちくしょう!口から炎でも吐けよ!…はっ!」
秀助を乗せた塵芥雲はUターンをし、ドラゴンの方へ向かっていく。ドラゴンは攻撃を続けるが、秀助はそれをかわしながら四次元ゴミ箱を出現させる。秀助はそのまま塵や紙屑を取り出した。燃えるゴミの方らしい。秀助はそれをドラゴンめがけて発射した。と同時にガラス瓶も投げつける。ドラゴンにこれらのゴミがぶつかり、激しく燃え始めた。
「やったか!?」
しばらく煙が立ち込め、何も見えなかった。しかし、大きな音が聞こえたと同時に、その煙は振り払われた。音の正体は、ドラゴンの翼が羽ばたく音であった。そう、ドラゴンはまだ消滅しておらず、羽を羽ばたかせて、煙を振り払ったのだ。
「ダメか!」
秀助は再び逃げようとする。しかし、ドラゴンの稲妻が塵芥雲に命中してしまう。バラバラにはならなかったが、コントロールができなくなった。
「まずい!」
秀助は塵芥雲を飛び降りるが、30m以上もの高さだ。地上にぶつかればひとたまりもない。再び塵芥雲を引き寄せようとしたが、ドラゴンの流星が塵芥雲に命中し、バラバラになってしまった。
秀助は、安全に降りる術をなくしたのである。




