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兆兆発止  作者: ぱんろう
兆能力ファイトクラブ編
42/150

42話:マリアンヌ

ついに最終日を迎えた兆能力ファイトクラブ。秀助はいまだ合流できていない十兵衛らを心配していた。善治との戦いを終え、医務室で治療されてからすぐホテルに戻った。結局、五味川茉莉のもとに運ばれなかったのだ。

参加者専用のホテルでは、みつねと合流できても、善俊と合流できなかった。聞けば、みつねも十兵衛らを見てないという。そして、迎えた最終日、いつもの部屋に来ても、十兵衛たちはいない。決勝戦は午後からのため、3人は部屋で十兵衛らを待ち続ける。すると突然、真っ暗だったモニターがぱっと点いた。

「突然ですが皆さま。ここでアナウンスです。」

3人はモニターを見る。会場で休憩していた観客もオーロラビジョンに注目する。

「今大会では、数々の名勝負が繰り広げられました。」

アナウンスがそう言っている最中、モニターには試合のダイジェストが流れていた。観客は盛り上がっている。

「しかし、名勝負に大怪我はつきものです。」

次に、大やけどを負ったときの秀助が映し出された。

「なんだよこれ…」

秀助が困惑している中、アナウンスは続ける。

「皆さんご存じのように、こちらの選手、次の日にはピンピンしております。こうなったのも、ある女性のおかげなのです。その女性とは…」

アナウンスがそう言った瞬間、モニターにある女性が映し出された。顔は隠れている。しかし、それは間違いなく五味川茉莉であった。腕に見覚えのあるブレスレットをしていたのだ。モニターを見ていた秀助が固まった。

「おふ…くろ…?」

確かに五味川茉莉であった。しかし様子がおかしい。心ここにあらずである。変わり果てた母を見た秀助は絶句した。

「こちらの女性はマリアンヌ。あらゆる病気や怪我を無条件かつ迅速に治すことができます。」

モニターには、秀助やマスクマンが茉莉によって治療されている様子が映し出された。

おおおおっと歓声があがった。あらゆる怪我や病気を迅速に治療できる兆能力は滅多に見られないためである。

「皆さま、我ら聖マリアンヌ教団に入信すれば、あらゆる病気、怪我から救われます。それは皆さま自身だけではありません。皆さまの家族も救われるのです。興味をお持ちになられた方は、決勝戦終了後、帰りのバスではなくホテルに向かってください。より詳しい説明を致します。」

会場はざわめいていた。中には疑心暗鬼の者もいた。

「どうする?なんか怪しいぞ?」

「でも、あの治癒能力はすごいよ。医者に匙を投げられたうちの母も治してくれるかなぁ。」

部屋はより静かになった。

「なるほどな、そういうことか…」

善治が沈黙を破る。続けて発言した。

「奴ら、あの女を教祖に仕立て上げて、新興宗教を立ち上げようとしているんだ。あの治癒能力は誰もが惹かれる...信者という名の駒を集めるには、うってつけだな。」

「あの人は、五味川茉莉…俺のおふくろだ…」

みつねと善治は秀助を見る。秀助は怒りで震えていた。

「マリアンヌだと!?ふざけるな!あいつらをぶちのめす!」

秀助は部屋を出ようとした。

「落ち着け!今出ていっても仕方がないだろう!ミスター・リードたちが来てからでも…」

「だが、待てど暮らせど来ないじゃないか!」

「だけど、私たちじゃ人探しは難しいよ!」

善治とみつねが秀助を止める。

「それにゴミ野郎、決勝戦はどうするんだ?」

「出てられっかよ…それどころじゃないだろ…!」

善治はそれを聞いて、秀助の胸ぐらを掴む。

「なんだと!?お前、俺に勝ったんだ!プライドも何もかも捨てた俺にな!今になってやめるってのか!?」

「忘れたのか!?これは任務だ!重要なのは運営との接近であって優勝じゃない!」

「喧嘩はやめて!今争っても仕方がないよ!」

みつねが2人をとめようとする。

「いいか!ゴミ野郎!お前は何がなんでも決勝に出ろ!そしてあのフェルナンド伯爵に一発かますんだ!」

「…」

「それに、何か知っているかもしれない。食事会のことを思い出せ。」

「!」

秀助は食事会でのフェルナンド伯爵を思い出す。十兵衛と戦うことに固執しており、十兵衛に会うためなら手段を選ばんとした、あのフェルナンド伯爵を。

「ちゃんと意味があるんだ。わかったか?それと、お前がフェルナンド伯爵と戦っている間に、五味川茉莉は俺たちで探す。」

秀助は黙っていたが、ただ一言、わかった、と言って部屋を出た。善治は、会場に向かったと信じ、それを止めなかった。


アナウンスからしばらく経ち、決勝戦の時間になった。秀助は会場に立っていた。秀助とフェルナンド伯爵の対決。会場の誰もが注目していた。

「やれやれ、決勝だというのに、消化試合になりそうだ。」

フェルナンド伯爵はため息をつきながら言った。

「は?」

「おっとすまない。こちらにとってはの話だよ。なんせ、リードとその仲間を捕まえたからね。本気を出す必要がなくなったんだ。」

「なんだって!?」

秀助は大きな声を出して驚いた。

「そうか…お前が…じーさんたちを…」

「ん?」

「耳の穴かっぽじってよく聞け。俺もネズミだ。」

「だからなんだよ。リードの部下ごとき、俺の相手じゃねぇ。」

フェルナンド伯爵は嘲笑しながら言った。

「試してみるか?俺はお前を殺す気でいくぞ。」

秀助はオーラを出現させながら言った。

「…面白い。そっちがその気なら、こっちだってそれに応えてやろう。」

フェルナンド伯爵もオーラを出現させた。オーラの応酬に、茉莉のことで既に盛り上がっていた会場は、さらなる大盛り上がりを見せる。


「はじめ!」


審判が試合開始の合図をした。今ここに、兆能力ファイトクラブの決勝戦が始まる!


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