41話:世界三大兆能力者
誰が言い始めたのか、ハンフリー・デイヴィッド、フランツ・アウステルリッツ・フェルナンド伯爵、ミスター・リードこと平塚十兵衛の3人を、世界三大兆能力者と呼ぶようになった。
それぞれ、目まぐるしい活躍をしていた。デイヴィッドは俳優として人気を集めながらも、慈善事業で多くの人々を救った。どういうわけかSOCIOLOGIに所属しているが。フェルナンド伯爵は兆能力者としてひたむきに技術を高め、様々な兆能力の世界大会で名を挙げてきた。ミスター・リード―大勢の人間はその名を知るのみで、本名や姿を知らない―は、首都警察のトップとして、これまで多くの兆能力犯罪を解決してきた。その活躍は日本にとどまっていない。しかし、彼ら唯一の共通点であり、世界三大兆能力者と称される最大の理由がある。
それは、兆能力の知識量であった。
「フェルナンド。本人以外の人間が、『コフィンテイカー』からものを取り出すにはどうすればいいと思う?」
「そんなこと聞かなくてもわかってるだろう。本人を殺さない程度にぶちのめせばいい。瀕死状態になると棺のコントロールができなくなるからな。」
(嘘だろ…!なぜコフィンテイカーだとわかった!)
中原はつい顔に出してしまった。デイヴィッドが、すかさず中原を指差す。
「そこのお前、なぜわかったという顔をしているな。なに、簡単な話だよ。異次元に転移するといっても、ものを取り出すためには三次元のスペースが必要だ。こんな狭い通路でそれをできるのは、コフィンテイカーだけだ。」
フェルナンド伯爵が付け加える。
「ダストメイカーの四次元ゴミ箱など、狭い通路で使えるものは他にもあるが…人一人を収容するとなると、コフィンテイカーぐらいってのもあるな。」
(…すごい…これが世界三大兆能力者の知識か…)
雄康が感心してしまうほど、彼らの兆能力知識は並外れているのである。
「デイヴィッド、わけは知らないが、この男の棺から何かを取り出せばいいんだな?」
「ああ。女だ。」
2人がじりじりと距離を詰めてくる。追い詰められた中原は言った。
「いいのか!?それ以上近づくとコフィンテイカーを解除するぞ!」
他の4人が中原を守るように取り囲んだ。中原がコフィンテイカーをいつでも解除できるように。
「とはいえ。ダメですよ!中原首都警部!その女性はしゅう君の…」
「今そんなこと言ってられっかよ!」
「フェルナンド、取引をしよう。」
十兵衛はフェルナンド伯爵に声をかけた。
「お前さんの目的はこの私だろう?」
「そうだ。お前とは前から戦ってみたいと思っていたんだ。だが、お前はいつも俺の誘いをのらりくらりかわしてきた。」
フェルナンド伯爵は怒りで声を震わせながら言った。
「その誘いに乗ろうじゃないか。」
「!…本当か!」
フェルナンド伯爵は顔色を変える。
「ただし、あのデイヴィッドを捕まえたらだ。そうすれば、明日にでもやってやる。」
フェルナンド伯爵はデイヴィッドの方を向いた。そのまま念写でロープを出現させ、それでデイヴィッドを捕えようとする。
「お前、あいつの言うことを信じるのか?今日じゃなく、明日と言ったぞ?今までのらりくらりかわされてきたんだろう?」
「!」
フェルナンド伯爵は十兵衛の方を向いた。
「おいおい待てよ、フェルナンド。私がそんな男だと思うかい?」
フェルナンド伯爵は、自分の誘いを断ってきた過去の十兵衛を思い出す。怒りに震えたフェルナンド伯爵は、ロープを操る。中原を囲んでいた4人の間をくぐり抜け、ロープは中原の首を絞め始めた。
「ぐっ…」
「中原君!やめろ!フェルナンド!」
フェルナンド伯爵はやめようとしない。むしろロープをますます締めつけていった。
「コフィンテイカーを解除させたくなければ、本人にその隙を与えなければいいだけだ。」
中原はしばらく苦しんでいた。そのうち、いくつかの棺が登場し、ぱかぱかと開いていった。いくらかの棺が開いた後、ある棺から五味川茉莉が飛び出してきた。
「まずい!」
善俊が茉莉を受け止めようとするが、受け止められなかった。茉莉が空中に浮き始めたのだ。
「…これは…!」
「『サイコキネシス』!」
茉莉が浮いたのには、デイヴィッドが関わっていた。ハンフリー・デイヴィッドの兆能力は、『サイコキネシス』であったのだ。ダストメイカーがゴミを操るように、ものを宙に浮かべ、操る兆能力は多く存在する。しかし、あらゆる万物を自在に操ることができるのは、このサイコキネシスのみである。
サイコキネシスによって、茉莉はデイヴィッドに引き寄せられ、ついにデイヴィッドの手に渡った。その隙に、フェルナンド伯爵は5人をロープで縛りあげた。
「よくやった。フェルナンド。No.11!」
「お、終わった?」
デイヴィッドに呼ばれ、物陰に隠れていたNo.11が顔を出した。
「こいつらを連れていけ。特等席にな。」
「ああ、わ、わかった。」
No.11が5人を連れていこうとする。それをフェルナンド伯爵が止める。
「せめてリードは置いていけ。」
「まあ待て、フェルナンド。こいつには見せたいものがあるんだ。それが終わってからでもいいだろう?」
No.2は茉莉を、No.11は5人を連れてどこかに去っていった。フェルナンド伯爵はもどかしい気持ちになりながら、その場を後にするのであった。




