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兆兆発止  作者: ぱんろう
兆能力ファイトクラブ編
39/150

39話:激闘決着

破裂したティアドロップは、辺り一面に水をまき散らした。破裂の衝撃はかなりのもので、観客は耳を防ぐような仕草をしていた。

『耳が壊れた!何も聞こえない!』

『そりゃ、あんた。耳ふさいでるじゃないの。』

衝撃の中心にいた秀助はどうなったのだろうか。

「…ぜぇ…ぜぇ…」

集められる限りでゴミの盾を作ったことで、かろうじて意識を保つことができていた。足に纏わりついていた水は衝撃で吹き飛ばされたようだが、立ち上がることはできない。

『しゅう君!倒れていない!なんて耐久力なんだ!』

「大したもんだ。ティアドロップを間近にくらっておきながら、意識を保つことができようとは。だが、それでも終わりは近いな。」

ティアドロップで体内の水を消耗した善治は、最後の気力を振り絞り、涙を流した。

「これで最後だ。」

涙は塊になった。ハンマーを形成する余裕こそなかったが、男一人を気絶させるには十分であった。善治はそれを全力で秀助に投げつけた。秀助はそれを避けない、いや避けることができない。ただ下を向いていた。

「安心しろ。フェルナンド伯爵は、この俺がぶちのめす。」

それを聞いた秀助は顔を上げた。

「何勝った気でいやがる…」

塊が秀助の目前に迫った瞬間、塵が飛んできた。塵は塊を砕いた。

「なんだと!?お前、まだそんな気力が…はっ!」

秀助をよく見ると、オーラの色が変わりつつあった。それは青みがかった紫色である。

「まさか…レベル3に…なろうとしているのか?なぜ…?」

「俺はマスクマンとの戦いで、自身の才能の限界に気がつき始めていた…この戦いも、俺を限界まで追い込んでいる…!」

秀助はふらふらしながら立ち上がった。

「俺は自身の限界を理解したんだ!」

「だからなんだってんだよ!」


「それこそが、レベル3への萌芽だったんだ!己の限界を知り、乗り越える!それが俺のダストメイカーレベル3だ!」


「!…お前...たったそれだけでダストメイカーの全てを理解したってのか!そんなことで!」

「馬鹿馬鹿しいよな。だがな、そんなことが、俺にとって最大の課題だったんだよ!」

秀助は四次元ゴミ箱を2つ出現させ、ゴミを集め始めた。

『おやおや!しゅう君!ゴミ箱を2つも出現させたぞ!それに、オーラの色も紫色になっている!』

「ゴミ収集ってのは隙だらけなんだが、今のお前には手を出せないだろうな。」

善治は、これ以上水を出せることができない。

ハイドロボディを持つ人間は、通常の人間よりも多くの水分を蓄えることができる。着目すべきは水分摂取量。通常、人間は一日あたり6L以上の水を摂取すれば死に至る。血中のナトリウム濃度が下がることにより、水中毒になるためである。そこで、ハイドロボディを持つ人間、善治は大量の水を貯水できるよう、赤血球の形がとても薄くなっている。通常の人間の赤血球は多くの水を含むと破裂してしまうが、薄くなることにより多くの水分を血液に貯蓄できるのだ。この貯水は、ラクダが水を蓄えている原理と同じである。

(これは、ほとんどの人間が知らないことだ。この特殊な体によって、無茶な放水が可能になる…だが…今の俺は…!)

しかし、善治はティアドロップによって多くの水分を使い果たし、これ以上の放水は命に関わる。兆能力によって引き戻す気力もない。それは先ほど塊を作ることで使い果たした。


「ぐぉおおおお!」


善治は突然雄叫びをあげ、そのまま頭を地面に擦りつけた。秀助はその行動の意図を理解できなかった。が、よく見ると善治は、地面にできていた水たまり―ティアドロップによってできた―をすすっていたのである。

『はるはる!突然頭を下げた!これは、はっきり言って、情けない!』

「正気かよ!あんた!」

常軌を逸した行動に秀助はドン引きした。


「はぁ…はぁ…俺はな…ゴミ野郎…勝利のためなら、くだらないプライドも捨てて、泥水をすすってやるさ…!」


善治は涙を流し始めた。


「いいか!この涙は攻撃の涙じゃねぇ!怒りと悔しさの涙だ!俺のプライドを傷つけた罪は重いぞ!」


「なんだよそれ…プライドは捨てたんだろ?」

「プライドってのはトカゲのしっぽさ…切り離したらすぐに再生させる…」

「都合がいいな…そういうところが嫌いなんだよ…!」

そう言いつつも、秀助は少しにやっとしていた。


「なんとでも言え!これが最後の一発勝負だ!行くぞッ!!五味川秀助!!」

「来いッ!!川路善治!!」


最初に仕掛けたのは善治であった。涙を塊に変えて、それを全速力で投げつけた。気力を使い果たしたとは思えないほど。一方、秀助は四次元ゴミ箱の片方から塵を取り出し、それを善治に向けて発射した。塊と塵、それぞれがぶつかり合おうしたそのとき、塵が発火した。

「!燃えた!?」

「燃えるゴミだからな…」

燃える塵は塊を砕き、そのまま善治の方へ向かっていく。

「さすがだ…俺がまだ水を蓄えていることを予見したか…」

善治は手から水を出し、燃える塵を受け止めようとする。火を消化させたものの、スピードは衰えない。塵はそのまま善治の体に直撃した。


「…負けたよ…五味川秀助…」


そう言って、善治はその場でぶっ倒れた。会場は大きな盛り上がりを見せた。

『感動したぁぁぁぁ!これほどまでに興奮した戦いは初めてだぁぁ!』

『私、つられて涙がこぼれました。』

「よかったぞー!」

「俺たちが見たかったのはこういう試合だー!」

観客がそれぞれ称賛を送る。それはどちらか片方ではなく、両方に対してであった。

こうして、犬猿の仲であった2人の激闘は、五味川秀助の勝利によって決着がついた。


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