34話:レベル3への道
眠っていた秀助であったが、ついに目を覚ます。しかし、辺りを見回しても女性の姿はない。秀助が横たわっていたベッドの横にはもう1つのベッドがあったが、そこには誰も横たわっていなかった。秀助は体を起き上がらせ、ベッドから降りる。しばらく部屋の中を見回していたが、いずれ部屋を出るためドアに向かおうとした。不思議なことに体が動くのである。あれだけ大やけどを負っていたのにも関わらずだ。部屋を出ると、一人の男が壁に寄りかかって立っていた。マスクマンである。
「よう、目が覚めたようだな。」
「マスクマン…」
「驚いたよな。あれだけの傷がきれいさっぱり無くなっている。痛みもだ。いろいろな治癒能力で傷を治療してもらったが、ここまでのは初めてだ。」
「ああ。俺もだ。こんな気分は、子どもの頃を…」
秀助は少し考えこんだ。しばらく考えこんだ後、
「誰が治療していたか、顔を見たか?」
とマスクマンに尋ねた。
「いや、見てないな。気分が良くてずっと寝ていたよ。」
「そうか…」
秀助はその場を去ろうとした。
「まあ、待てよ。」
マスクマンがそれを呼び止める。
「お前、レベル3になる方法を知っているか?」
「!」
秀助は足を止め、マスクマンの方に振り返る。
「突然何を…」
「お前の戦闘センスには、驚きの連続だった。あんなに熾烈で、楽しい戦いは初めてだったよ。」
マスクマンは目をつむり、腕を組みながら言った。
「だが、それなのにお前のダストメイカーはレベル3に達していない。」
「そうだな。」
マスクマンは間を置いて、
「それは、ダストメイカーをまだ理解していないということだ。」
と断言した。
「なんだと!」
秀助は声を荒げた。レベルが低い、能力がしょぼいなどとは、十兵衛やチンピラから言われてきた。しかし、そんなことを言われたのは生まれて初めてだ。
「いいか、よく聞け。お前は才能がありながら、その才能を開花させていない。才能ってのは人それぞれだ。だが、それを開花させるためには、誰もが自身の才能を理解しなければならない。」
秀助は黙って聞いていた。
「いいかい、しゅう君。お前はレベル3に達するだけの才能がある。そのために、お前は自身と、自身にとってのダストメイカーをもっと理解するんだ。」
「理解だと…」
秀助はその発言に理解できなかった。秀助は母探しのために一人旅を始め、ときには、兆能力を用いた戦闘も経験してきた。そのために、ダストメイカーという兆能力と長年向き合ってきたのだ。それなのにたった今、それをもっと理解しろと言われた。秀助はその発言を受け入れることはできなかった。
「無理に引き留めてすまなかったな。俺からは以上だ。明日の試合も頑張れよ。」
そう言ってマスクマンは去っていた。秀助はしばらく立ち尽くしている。すると、十兵衛たちがやって来た。
「秀助!お前…大やけどを負ったんじゃないのか…?」
雄康が秀助の姿を見て驚きながら聞いた。
「どうやら治癒能力で治療されたらしい。」
「治療した人は誰だった?」
十兵衛が尋ねた。
「それがよく見えなかった…起き上がった頃には、部屋には誰もいなかった。女性ってことだけはわかったんだが…」
「そうか…女性か…」
十兵衛は何か考えていた。
「とりあえず部屋に戻ろう。これからについて話す。」
部屋に5人が部屋に戻ると、既に治療を終えた善俊や、試合終わりの善治が戻ってきていた。
「お前本当にゴミ野郎か?さっきまで焼き焦げていたのに…」
善治は秀助の姿を見て驚いていた。
「そこら辺の話は後でしろ。重要なのはこれからの話だ。」
十兵衛が仕切る。
「まず、今日の試合で勝ったメンバー諸君、勝者の食事会にはこの大会の主催者が参加する。誰が来たのか、どのような会話をしたのかなど、内容をできる限り記憶しておいてくれ。」
「ああ、わかった。」
「それと、明日の試合は無理に勝たなくていい。」
「なぜだ?」
秀助がすぐさま尋ねた。
「見ていただろう?フェルナンド伯爵には誰も勝てない。レベル3だとしてもな。」
「…」
秀助は納得のいかない顔をした。
「いいか。この任務は大会の優勝を目的にしているのではない。SOCIOLOGIへの接近が目的なのだ。今夜の食事会で主催者と接触できれば、大会参加班においては十分な成果だ。」
秀助はそれ以上何も話そうとしなかった。十兵衛は解散、と言い今日の試合に勝利した3人に改めて頼んだぞ、と言いながら部屋を後にした。秀助もすぐに部屋を出てホテルに向かった。
食事会の時間になった。みつね、秀助、善治とフェルナンド伯爵が席に座っていた。そこに会話はない。秀助はフェルナンド伯爵の方をずっと見ていた。しばらくすると、一人のスタッフがやって来た。
「皆さま、お待たせしました。今大会の主催者がいらっしゃいました。」
そう言って部屋の扉を開く。




