28話:レベル3同士の戦い
会場に立った善俊は、ガスマスク山田をじっと見つめる。
(ガスマスク山田…こいつの兆能力は、毒ガスを用いる『スプレッダーガス』かな?昨日の試合では、スモーキー石田が彼に近づいただけで倒れていた…とりあえず近づかないようにはしよう。)
「はじめ!」
審判が試合開始の合図をした。善俊は無色オーラ状態でビジョンジャックを発動し、山田の視界をジャックした。ガスマスクで少し視界が悪い。山田は何も言わず善俊に近づいていった。
『ガスマスク山田!早速とっしーの方に向かっていきます!』
(そっちから来たか!いや、まあ来るだろうね。)
山田は近づきながらガスを噴出し始めた。善俊が予想した通り、スプレッダーガスの使い手であったようだ。オーラの色を確認することができない、つまり無色オーラ状態であるようだ。
『ガスが噴出されたぁぁぁ!これは実況の敵!何が起きているのかよく見えねぇ!』
『見るんだ。みっちゃんの体を見た私たちの目なら、きっと見える!』
「レベル3のスプレッダーガスは厄介だな。無色オーラ状態でも、兆能力範囲内の人間を容易に倒せるぐらいの毒ガスを出せる。」
そう言いながら、善治はモニターの善俊を見守っていた。
善俊は、相手が兆能力を発動したのを確認し、そのオーラの色を見るために目を開いた。
(無色オーラ!レベル3か…)
善俊は山田と距離をとりながら、靴下を脱いだ。そして、その靴下を自身の服に擦りつけていた。
善治は、善俊の意図に気がついたらしい。口角が上がっていた。
(とはいえ、どうやって発生させる?)
『とっしー、何をやっている!靴下を擦りつけているぞ!』
善俊は、擦りつけていた靴下を山田に向かって投げつけた。山田は、それを避けも、キャッチもしなかった。なぜ靴下を投げてきたのか理解できず、呆然としていたのだ。その靴下は山田が身につけていたベルトのバックルに接触した。
「!まさか!」
山田はようやく善俊の意図に気がついた。靴下がベルトのバックルに触れた瞬間、静電気が発生した。かなり強力な静電気で、火花までもが発生した。その火花は辺りに立ち込めていたガスに引火、大爆発が起きた。
『うわああああああ!大爆発だぁ!熱い!熱すぎる!』
『大したものだ…靴下でそれを可能にしたのですね。』
「わわわわ!静電気を発生させてガス爆発を発生させたんだね!」
「…距離を詰めることができず、遠距離攻撃ができなくとも、機転をきかせて攻撃を可能にした…さすがだ善俊…」
会場では、観客がどよめいていた。
「大丈夫か?」
「死んじまったのか?」
爆発により発生した煙から人影が現れる。山田であった。
「やれやれ、無色オーラじゃなかったら死んでいたな。」
『山田!生きていた!よかった!』
『死なれるといろいろ困りますからね。それで当然です。』
山田はこれといった傷もなくピンピンしていた。善俊は困惑する。
「嘘だろ…かなり派手に爆発したよ?」
「ふふふ。ガスを使っている以上こうなることは想定内だよ。とはいえ、静電気で着火させてくるのは意外だった。面白いなお前。ちょっと本気出してもいいかな。」
「まるで、今まで本気じゃなかった言い方だね。」
善俊は少しむっとしたが、それでもむやみに突っ込むようなマネはしなかった。山田は再びガスを発生させた。しかし、何かがおかしい。ガスは分散せず一か所に集中している。そしてそれは次第に形を変えていき、ついにドラゴンのような形になった。
『ガスがドラゴンになった!かっこいいぞ!』
「「なんだそれ!」」
善俊と、部屋にいた善治が同時に言った。
「おい、雄康!お前スプレッダーガスにあんなことできるって知ってたか?」
「…知らないです…ガスを自在に操れるはずがない…!」
ドラゴンのようなガスは、善俊に向かっていった。善俊は逃げ回る。そのガスは、ブレス攻撃もできるようだ。毒ガスを吹いてきた。
『ガスのドラゴン…ガスドラゴンと呼びましょう!…のブレス攻撃!とっしーはそれをかわします!』
(殺意が高いね…)
善俊はそう思いながら山田の方を見た。山田は手を組んでガスドラゴンと善俊の追いかけっこをじっと見ていた。善俊はその視界をジャックした。狭い視界ながら、確実に善俊を目で追っている。善俊は、ガスドラゴンから逃げながら山田の視界から消えようと試みた。そこで、全速力で走ることにより、視界から逃れようとした。これが功を奏し、山田の視界から消えることができた。そうすると、ガスドラゴンが善俊を追いかけなくなった。
(なるほどね。目で追いながらガスを使役していたようだ。)
山田は辺りを見回していた。
「どこ行った?」
その善俊は、確実に山田の方に近づいていた。山田の背後に近づいた善俊は、鳥山を倒した、あのかかと落としをくらわせた。オーラを集中させた足による強烈な一撃は、山田のガスマスクをかち割った。




