26話:ワイルド・ガンマン
「おやおやぁ、ばれちまったか。さすがだね。ワイルド・スピードのお嬢ちゃん。」
クリントンは拳銃を上に向け、参ったのジェスチャーをしながら口を開いた。
「…ワイルド・ガンマン…銃を手にすることによって、銃の技術や身体能力を高める兆能力だ…」
「なるほどな。銃は兆能力の欠点を補うものでなく、発動条件だったってわけだ。生で見たのは初めてだ。」
「ワイルド対決ってわけね…」
みつねと時を同じくして、部屋の皆もクリントンの兆能力を特定していた。
「でも、こっちの兆能力が見破られたところで、優勢であることに変わりはない。」
クリントンは再び銃口をみつねに向け、発砲した。みつねはすかさずワイルド・スピードでかわす。しかし、クリントンはかわした先にも銃口を向けていた。
「な!?」
クリントンはそのまま発砲した。銃口を向けられた瞬間にかわす動作をしていたため、致命傷にならずには澄んだ。しかし服が、かすめた銃弾によって切り裂かれてしまった。
『再びみっちゃんの服を弾丸が裂いた!いいのか!私たちはこれを見てしまって!』
『私たち、実況と解説は、その役割を持った以上、試合を最後まで見守る必要がある。目を逸らすな!見るんだ!隅々まで!』
「ひゅー♪これは眼福だねぇ。このまま全部切り裂いてやろうか。」
「くっ。なぜ?」
みつねがよろめきながら言う。クリントンは丁寧に教えた。
「なぜだって?そりゃお嬢ちゃん、わかりやすいんだよ。逃げ道が。」
部屋の善治が頭を抱えていた。
「あの女、相手の弾丸を、右に30m移動することでかわしている。ずっとそれでかわしている!動きが単調になるのが、ワイルド・スピードの悪い癖だ!」
「悪いね。これでおしまいにしよう。」
クリントンが、よろめいていたみつねの腹部に向かって発砲した。
それは、間違いなく命中した。
『ついに命中した!これは致命傷だ!』
「みっちゃん!」
秀助たちが心配そうにする。さすがの十兵衛も、モニターの方に目を向けた。
「安心しろよ。急所は外してある。このまま倒れていれば、これ以上は攻撃しないさ。」
警告ともとれるクリントンの発言を無視し、みつねは起き上がる。それは、腹部に銃弾が命中したとは思えないほど元気に。
『なにぃぃぃぃぃ!?なんて体してるんだ!鉄でできているとでもいうのかぁ!?』
「おいおい、冗談はやめてくれよ。確かに命中させたはずだぞ。」
ついにみつねは立ち上がった。銃弾は確かにみつねの腹部に命中しており、それを確認することができた。銃弾がみつねの腹部から落ちたことによって。銃弾はみつねの体を貫通せず、腹部で止められたのである。
「まさか!」
そう、みつねは防弾チョッキを着ていたのである。部屋の皆も安堵する。
「よかった、みっちゃん!」
秀助は心の底から安堵していた。しかし、中原は疑問に感じる。
(奴の銃弾はオーラによって威力が上がっている…首都警察に支給される防弾チョッキなんかで防げるとは思えないが…)
とはいえ、みつねが大事に至らなかったことに、同じく心の底から安堵していたのだった。
「参ったねぇ。そんなもので防がれちまうとは。だが…」
クリントンは銃口をみつねの足元に向けた。
「足がやられちまえば、動くことができねぇよな?」
みつねはワイルド・スピードで距離をとろうとする。
「あまり俺をなめるなよ。お嬢ちゃんの移動速度は見切ったよ。」
そう言って、クリントンはみつねがワイルド・スピードで移動している最中に発砲した。それは、みつねの足をかすった。
「!」
移動中だったみつねは、それに驚きつい転んでしまった。
(嘘!私の速さに追いついたっていうの!)
「あのクリントン・アープってのは大したもんだな。女の動きに合わせて発砲しやがった。」
善治が唖然としながら言った。秀助や雄康も、手に汗を握っていた。
「さあ、もう一度立ち上がるかい?今回は待ってあげるよ。ただし、立ち上がろうとすれば、君の右腕を吹き飛ばそう。」
クリントンがじりじりと近寄りながら、みつねを脅していた。みつねは下を向いたまま立ち上がろうとしなかった。誰もが降参かと思ったとき、みつねは突然上の服を脱ぎ始めた。
『なぜだ!なぜ脱いだ!でもいいや!』
「おおおおおお!」
会場の盛り上がりが最高潮に達した。
「ななななな何やってんだ!みっちゃん!」
秀助は顔を赤らめながら、手で顔を覆い隠した。
「色仕掛けか?悪くない判断だ。」
「首都警察がやることじゃないんだが…」
雄康や中原は呆れていた。しかし、みつねはそのような意図で服を脱いだのではなかった。
「おい…あんた…それは…」
みつねが服を脱ぎ、上半身下着姿になると、金属製のプレートがぶら下がっているのが見えた。




