21話:激しくなる戦い
「こうなったら…!」
鳥山は両手を組み、それを前に突き出す。すると高速回転し始め、ドリルのように善俊に向かっていった。
「これぞ、嘴回突刺殺法!激しい回転とスピードでお前の体に穴をあけてやるぜ!」
『鳥山!急回転したぞぉ!ドリルが飛んでいる!見てください!飛んでいる、ドリルが!』
『これは、くらえばひとたまりもありません。とっしー、どのように対応するのでしょう。』
「…まずい!あれだけ回転されたら、視界をジャックしても目が追いつけない!」
鳥山は善俊に急接近する。それでも善俊は目をつむって動かない。
「雄康といったか…俺は兆能力物知り仲間として悲しいぞ。ビジョンジャックのレベル3最大の特徴を知らないとはな。」
「…!」
善俊は、接近してきた鳥山にかかと落としをする。その足には紫色のオーラが纏わりついていた。回転していた鳥山はそのまま叩き落される形になった。倒れた鳥山は、そのまま起き上がることはなかった。
「そこまで!」
審判が試合終了の合図をした。戦闘不能と判断されたらしい。
『なんということだぁー!とっしー、回転していた鳥山をいともたやすく倒したぞぉー!』
『飛ぶ鳥を落とす勢いでしたね。』
「どういうことなの!?一体どうして…」
みつねや雄康は善俊が攻撃できた理由を理解できなかった。善治が解説し始めた。
「レベル3のビジョンジャックは、視界をジャックしている場合に限り、時間を遅くさせることができるんだ。」
「うそー!」
「つまり、鳥山の高速回転も、善俊にとってはゆっくりな回転にすぎなかったんだよ。」
「…それと最後のオーラの使い方...足にオーラを纏わせたやつ…俺の技に似ているな…」
「あれは、体の一か所にオーラを集中させる技術・壱極集中だ。兆能力を使用する際に発生するオーラというのは、力のエネルギーなんだ。そのエネルギーを、パンチやキックなどの通常攻撃に応用することで、攻撃の威力を高めることができる。ちなみに、壱極集中は…って、これは言っちゃダメなんだった。」
「とっしー君…なんだか遠い存在になりつつあるね…」
みつねは、少し悲しそうに言った。
「むしろあれぐらいできなきゃ、川路の人間じゃない。それに、練習すれば、お前にもできるようになる。」
みつねはそれを聞いてもなお立ち直らなかった。会場での観客の反応もあったのだろう。その様子を見たトレイシーが、この日初めて言葉を発した。
「大丈夫よ。みつねちゃん、さっきのあなたの試合は素晴らしかったわ。」
みつねは、今まで一言も話してくれなかったトレイシーから声をかけられたことに驚くと同時に、何よりも嬉しくなった。
「トレイシーさん…!」
「トレイシーでいいわ。あのときはごめんね。少し緊張していたのよ。」
みつねはとても嬉しい気持ちになった。十兵衛はその様子を温かく見守りながら呟いた。
「それにしても…中原君遅いな…迷ったか?」
中原は、十兵衛の予想通り迷っていた。しばらく歩き回っていると、ある男をすれ違った。それは間違いなくミスターYであった。
「いやー、完全に初見殺しだわ、あれは。」
知り合いと思しき人と会話しながら、ミスターYは歩き去っていた。中原は振り返った。何度見てもそれはミスターYであった。中原は通りがかったスタッフを見つけ、十兵衛らがいる部屋の位置を教えてもらい、急いで戻っていった。その頃には、五回戦が始まろうとしていた。
部屋に戻ることのできた中原はすぐにこのことを十兵衛に話した。
「なんだと!それは本当か!」
その場にいた全員が十兵衛の方を見た。十兵衛はトレイシーの方を見て言った。
「トレイシー!お前さんの出番だ!医務室だ!心拍数の低い人を特定しろ!」
十兵衛の発言に応えて、トレイシーは兆能力を発動した。十兵衛の発言から推測するに、他人の心拍数を測る能力らしい。
「…場所はだいたいわかったわ。」
トレイシーがそう言うと、十兵衛は運営捜査班を招集した。
「運営捜査班、行動開始だ。行くぞ。」
運営捜査班はそのまま部屋を出て、医務室へ向かった。
すれ違いざまに善俊が部屋に戻ってきた。
「皆慌ただしいね。」
善俊の小言に善治が反応した。
「当然だろ。遊びで来てるんじゃないんだぞ。」
「その割には、さっきとっしー君の兆能力を嬉しそうに解説していたような…」
「!」
みつねの発言を聞いて、善俊は驚き善治の方を見る。
「ばっ!お前!余計なこと言うな!」
一方、秀助と一刻連十郎の試合が始まろうとしていた。相手の一刻は、片手に人形を持った男で、秀助の顔を不気味そうに笑いながら見ている。
(気味が悪いな…)
「はじめ!」
審判が合図をした瞬間、一刻が兆能力を発動した。人形が動き出し、秀助の方に向かってきた。
『一刻!人形を動かしたぁ!』
『喋ったりしないでしょうね。あれ、声が、遅れて、聞こえるよ?』
(なに!これは、人形を操る兆能力か!)
そう思っていると、人形の動きが止まった。秀助は呆気にとられた。
(兆能力範囲から出たのか…?)
そのとき、人形の腹に穴が開き、ガトリング銃が出てきた。
「えっ。」
秀助は横に逃げていく。しかし、人形は秀助を追いかけ、ガトリング銃を乱射している。
『なんと!最近の人形は、ガトリング銃も収納しているのかぁ!これは驚き桃の木山椒の木だぁ!しゅう君!逃げることしかできない!』
「ははははは!何もできないだろう!」
一刻は秀助が追い詰められるのを笑いながら見ていた。その秀助はいつの間にか回り込み、一刻の方に向かって走っていた。
「これでも乱射することができるか?」
一刻はそれでも笑いを止めない。秀助の後ろを走っていた人形が立ち止まった。秀助が振り返ると、人形はガトリング銃をしまい、今度は剣を取り出した。これによって、人形の移動速度が上がり、秀助に追いつく。ついには、秀助に斬りかかろうとした。
『今度は剣を取り出したぞ!早い早い!あっという間にしゅう君に追いつき、斬りかかる!』
秀助はなんとか人形の一太刀をかわした。
『しゅう君!人形の攻撃をなんとかかわす!』
『ですが、それで精いっぱいのようですね。反撃しません。』
(ちっ。意外に素早いなこいつ。)
秀助は隙を見つけて、人形の足元にローキックをかました。人形はバランスを崩して倒れた。
(よし!今のうちに本体に近づくか。)
秀助は即座に一刻に向かって走り出した。そのうち、エンジン音のようなものがした。秀助が走りながら振り返ると、人形はタイヤを付けて走っていた。
『人形がトランスフォームしたぞ!!』
「なんだよそれ!なんでもありじゃねーか!」
秀助は困惑しながら再び逃げ惑う。
「そろそろ兆能力を発動した方がいいんじゃないかな?」
一刻は相変わらず笑いながら、秀助を煽っていた。
(本当に厄介だな…距離をとればガトリング銃、近づけば剣、追いかけるときは車か…)
人形は秀助を轢こうとしていた。それをなんとかかわすが、人形はUターンしてしつこく追ってくる。
「仕方がない…とっておきたかったんだが、使ってやるよ…新技をな!」




