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兆兆発止 第1部 ゴミ箱からの脱出  作者: ぱんろう
兆能力ファイトクラブ編
21/150

21話:激しくなる戦い

「こうなったら…!」

鳥山は両手を組み、それを前に突き出す。すると高速回転し始め、ドリルのように善俊に向かっていった。

「これぞ、嘴回突刺殺法(しかいとっしさっぽう)!激しい回転とスピードでお前の体に穴をあけてやるぜ!」

『鳥山!急回転したぞぉ!ドリルが飛んでいる!見てください!飛んでいる、ドリルが!』

『これは、くらえばひとたまりもありません。とっしー、どのように対応するのでしょう。』

「…まずい!あれだけ回転されたら、視界をジャックしても目が追いつけない!」

鳥山は善俊に急接近する。それでも善俊は目をつむって動かない。

「雄康といったか…俺は兆能力物知り仲間として悲しいぞ。ビジョンジャックのレベル3最大の特徴を知らないとはな。」

「…!」

善俊は、接近してきた鳥山にかかと落としをする。その足には紫色のオーラが纏わりついていた。回転していた鳥山はそのまま叩き落される形になった。倒れた鳥山は、そのまま起き上がることはなかった。


「そこまで!」


審判が試合終了の合図をした。戦闘不能と判断されたらしい。

『なんということだぁー!とっしー、回転していた鳥山をいともたやすく倒したぞぉー!』

『飛ぶ鳥を落とす勢いでしたね。』


「どういうことなの!?一体どうして…」

みつねや雄康は善俊が攻撃できた理由を理解できなかった。善治が解説し始めた。

「レベル3のビジョンジャックは、視界をジャックしている場合に限り、時間を遅くさせることができるんだ。」

「うそー!」

「つまり、鳥山の高速回転も、善俊にとってはゆっくりな回転にすぎなかったんだよ。」

「…それと最後のオーラの使い方...足にオーラを纏わせたやつ…俺の技に似ているな…」

「あれは、体の一か所にオーラを集中させる技術・壱極集中(いちごくしゅうちゅう)だ。兆能力を使用する際に発生するオーラというのは、力のエネルギーなんだ。そのエネルギーを、パンチやキックなどの通常攻撃に応用することで、攻撃の威力を高めることができる。ちなみに、壱極集中は…って、これは言っちゃダメなんだった。」

「とっしー君…なんだか遠い存在になりつつあるね…」

みつねは、少し悲しそうに言った。

「むしろあれぐらいできなきゃ、川路の人間じゃない。それに、練習すれば、お前にもできるようになる。」

みつねはそれを聞いてもなお立ち直らなかった。会場での観客の反応もあったのだろう。その様子を見たトレイシーが、この日初めて言葉を発した。

「大丈夫よ。みつねちゃん、さっきのあなたの試合は素晴らしかったわ。」

みつねは、今まで一言も話してくれなかったトレイシーから声をかけられたことに驚くと同時に、何よりも嬉しくなった。

「トレイシーさん…!」

「トレイシーでいいわ。あのときはごめんね。少し緊張していたのよ。」

みつねはとても嬉しい気持ちになった。十兵衛はその様子を温かく見守りながら呟いた。

「それにしても…中原君遅いな…迷ったか?」


中原は、十兵衛の予想通り迷っていた。しばらく歩き回っていると、ある男をすれ違った。それは間違いなくミスターYであった。

「いやー、完全に初見殺しだわ、あれは。」

知り合いと思しき人と会話しながら、ミスターYは歩き去っていた。中原は振り返った。何度見てもそれはミスターYであった。中原は通りがかったスタッフを見つけ、十兵衛らがいる部屋の位置を教えてもらい、急いで戻っていった。その頃には、五回戦が始まろうとしていた。

部屋に戻ることのできた中原はすぐにこのことを十兵衛に話した。

「なんだと!それは本当か!」

その場にいた全員が十兵衛の方を見た。十兵衛はトレイシーの方を見て言った。

「トレイシー!お前さんの出番だ!医務室だ!心拍数の低い人を特定しろ!」

十兵衛の発言に応えて、トレイシーは兆能力を発動した。十兵衛の発言から推測するに、他人の心拍数を測る能力らしい。

「…場所はだいたいわかったわ。」

トレイシーがそう言うと、十兵衛は運営捜査班を招集した。

「運営捜査班、行動開始だ。行くぞ。」

運営捜査班はそのまま部屋を出て、医務室へ向かった。

すれ違いざまに善俊が部屋に戻ってきた。

「皆慌ただしいね。」

善俊の小言に善治が反応した。

「当然だろ。遊びで来てるんじゃないんだぞ。」

「その割には、さっきとっしー君の兆能力を嬉しそうに解説していたような…」

「!」

みつねの発言を聞いて、善俊は驚き善治の方を見る。

「ばっ!お前!余計なこと言うな!」


一方、秀助と一刻連十郎の試合が始まろうとしていた。相手の一刻は、片手に人形を持った男で、秀助の顔を不気味そうに笑いながら見ている。

(気味が悪いな…)

「はじめ!」

審判が合図をした瞬間、一刻が兆能力を発動した。人形が動き出し、秀助の方に向かってきた。

『一刻!人形を動かしたぁ!』

『喋ったりしないでしょうね。あれ、声が、遅れて、聞こえるよ?』

(なに!これは、人形を操る兆能力か!)

そう思っていると、人形の動きが止まった。秀助は呆気にとられた。

(兆能力範囲から出たのか…?)

そのとき、人形の腹に穴が開き、ガトリング銃が出てきた。

「えっ。」

秀助は横に逃げていく。しかし、人形は秀助を追いかけ、ガトリング銃を乱射している。

『なんと!最近の人形は、ガトリング銃も収納しているのかぁ!これは驚き桃の木山椒の木だぁ!しゅう君!逃げることしかできない!』

「ははははは!何もできないだろう!」

一刻は秀助が追い詰められるのを笑いながら見ていた。その秀助はいつの間にか回り込み、一刻の方に向かって走っていた。

「これでも乱射することができるか?」

一刻はそれでも笑いを止めない。秀助の後ろを走っていた人形が立ち止まった。秀助が振り返ると、人形はガトリング銃をしまい、今度は剣を取り出した。これによって、人形の移動速度が上がり、秀助に追いつく。ついには、秀助に斬りかかろうとした。

『今度は剣を取り出したぞ!早い早い!あっという間にしゅう君に追いつき、斬りかかる!』

秀助はなんとか人形の一太刀をかわした。

『しゅう君!人形の攻撃をなんとかかわす!』

『ですが、それで精いっぱいのようですね。反撃しません。』

(ちっ。意外に素早いなこいつ。)

秀助は隙を見つけて、人形の足元にローキックをかました。人形はバランスを崩して倒れた。

(よし!今のうちに本体に近づくか。)

秀助は即座に一刻に向かって走り出した。そのうち、エンジン音のようなものがした。秀助が走りながら振り返ると、人形はタイヤを付けて走っていた。

『人形がトランスフォームしたぞ!!』

「なんだよそれ!なんでもありじゃねーか!」

秀助は困惑しながら再び逃げ惑う。

「そろそろ兆能力を発動した方がいいんじゃないかな?」

一刻は相変わらず笑いながら、秀助を煽っていた。

(本当に厄介だな…距離をとればガトリング銃、近づけば剣、追いかけるときは車か…)

人形は秀助を轢こうとしていた。それをなんとかかわすが、人形はUターンしてしつこく追ってくる。

「仕方がない…とっておきたかったんだが、使ってやるよ…新技をな!」


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