15話:怪しい会合
雨が強く降るある日、ある町を歩く一人の男がいた。黒いスーツに身を包み、黒い山高帽を被っていた。その男は辺りを見回しながら、大きなホテルに入る。男はホテルの受付カウンターの女性スタッフに話しかける。
「どうも、今日はワインでも飲みながらゆっくりしたい日だ。君のような人とね。」
女性スタッフはくすっと笑うと鍵を差し出した。
「ありがとう。今日は格別にきれいだね。」
男はそう言い残しながらも、鍵に書かれている部屋へ向かう。鍵に書かれていたのは、105号室、1階の部屋であった。男は部屋に入るやいなや、スーツのポケットからボタンのついた機械を取り出し、ボタンを押した。すると、クローゼットが動き出し、地下への入り口が出てきた。男は地下へと続く階段を降りる。すると、その先には大広間があり、10人の人物がそれぞれ用意された椅子に座っていた。特に存在感を放つのが、高い位置に座る人物だ。顔は見えないが、膝の上に白い猫を乗せて可愛がっていた。その人物が口を開いた。
「来たか。No.2。座ってくれ。定例会合を始めよう。No.3とNo.6は、任務によって欠席だ。」
男はNo.2と呼ばれているらしい。その男は椅子に座った。
「まずは悲しいお知らせだ。3人組の殺し屋ジャック兄弟が死亡した。勝手なことをやって墓穴を掘ってしまったようだ。警察に捕まりそうだったから、粛清されてしまった。」
秀助らが倒した3人組について話をしているようだ。しかし、その死を伝えている男に悲しみといった感情はなさそうであった。ただ淡々と、話を進める。
「それでは、活動報告といこうか。No.7。」
No.7と呼ばれた男は髭が立派で、眼鏡がよく似合うフランス人であった。
「中国軍上層部の兆能力情報をアメリカ政府に売却。報酬1億ドル。」
「No.4。」
No.4と呼ばれた男は長髪で、どこか優しさを感じさせるドイツ人であった。
「中東のテロ組織に兆能力戦闘訓練を実施。中東地域の多国籍企業に打撃を与えることができるでしょう。」
「No.8」
No.8と呼ばれた女は猫耳をつけた、不思議な風貌をしていた。
「イギリス人スパイ、ジョージ・ハリソンの暗殺。また、MI6の機密情報をいくつか収集することができました。」
「NO.11」
No.11と呼ばれた男は図体こそ大きいが、気が小さそうなイタリア人であった。
「違法ドラッグ・モンスターカフェインの密売。5000万ドル。」
「No.11、本当に5000万ドルなのか?」
「は、はい。No.9と計算しております。」
No.11は冷や汗をかきながらNo.9の方を見る。ちょび髭をたくわえ、凛とした表情でいたNo.9はこくりと頷いた。
「そ、それに、メキシコを始めとするラテンアメリカ諸国で活躍するマフィアとの競合も激しく、収益があがりにくい状況です…」
No.11はおずおずと話した。
「もちろんそれも想定の上で話している。つまりNo.11、君が横領をしたと考えるのが自然なのだよ。」
「しかし、私は…」
No.1はNo.11の話を遮る。
「No.11、この組織で、裏切り者がどのような結末を迎えるか。幹部の君なら理解しているはずだ。」
「はい。No.1。」
No.11は怯えながらNo.1の手元を見る。No.1は手元にあった機械に手を差し伸べた。そこにはいくつかのボタンがあり、No.1はそのうちの1つを押した。そのとき、
「ぎゃあああああ!」
No.9が声にもならない悲鳴をあげた。椅子に強力な電流が流れているようだ。いずれNo.9は動かなくなる。周りの幹部はその様子を恐ろしい様子で見ていた。たった一人No.2を除いて。
「さて、活動報告は以上だ。ここからは、No.2からの重要な計画の発表だ。なんせ10年も前から練っていたようだからな。No.2。」
「はい。お時間をいただき、感謝します、No.1。まず、重要な報告を一つさせてください。」
No.2は少し間を置いて言った。
「五味川茉莉の兆能力がレベル3になりました。」
周りがざわめき始めた。No.1はそれを抑えながら言った。
「それは素晴らしい。10年という長い月日が経ったが、ついにレベル3になったか。」
「はい。計画は五味川茉莉の兆能力をフルに活用する、というのは皆さん周知の通り。五味川茉莉の兆能力は、『無条件治癒能力』。どのような傷・病気でも無条件で治癒することができる兆能力です。この能力が使えるのは100年に一人現れるか現れないかというほど、稀少な兆能力です。レベル3になれば、兆能力範囲にいる人間全てを治癒できるようになります。」
五味川茉莉についての説明がなされた後、No,2のプレゼンテーションが始まった。
「まずは、計画の前座について。我々は今まで、兆能力者同士を戦わせる『兆能力ファイトクラブ』で人を集め、参加費、観戦費、そして賭博費といった莫大な活動資金、さらには戦力となる人員を得てきました。この集まりを利用して、五味川茉莉の兆能力を試しがてら、計画の起点にします。」
「世界三大兆能力者の一角を担う君のことだ。他に算段があるんだろう?」
No.1はNo.2に何か他の考えもあることを見抜いた。
「ええ、その通りです。今度のファイトクラブでは、世界三大兆能力者全員が集まることになるでしょう。」
「ほう。」
「一人はミスター・リード。奴は、組織の情報を得るため五味川茉莉を探しています。そこで、餌を撒いたところ、見事に引っかかってきましたよ。」
「ミスター・リード…奴は我々にとって一番の脅威だ。もう一人は?」
「もう一人の方は、参加者としてお目にかかることができるでしょう。なんせ兆能力者随一の戦闘狂ですから。」
「なるほど、そこで集まってきた奴らを排除、あるいは引き込もうってわけだ。奴らは我々にとってガンのような存在だからな。」
No.2はにやりと笑い、深く頷いた。
「それでは、本題の計画について、他の幹部にも説明したまえ。」
「前置きが長くなりましたね。本題の計画なのですが…」
その後No.2による計画が説明された―
「以上です。No.1。」
「説明ご苦労、No.2。早速実行に移してもらおう。実行にあたっては、No.2が指揮をとるように。くれぐれも失敗するなよ。」
「わかりました。SOCIOLOGIの名において、必ず遂行してみせます。」
こうして、国際犯罪組織・SOCIOLOGIの会合は閉会となった。




