145話:悲しき人形
「なんだと!」
秀助はポッケに入れていた手を出す。
「ふふふ。私が、ただやられているだけだと思ったか?君がレベルΖを発動したんだ。私も発動しないと、アンフェアだと思わないか?」
秀助は歯をぎしぎしさせる。
(この野郎…!)
それでも、スペースデブリがオーベルハウザーのもとに向かっていた。
「だが、手遅れだ。」
そのとき、オーベルハウザーの前に何者かが立った。怪我を負っていたクリントンである。
「何をやっているんだ!」
「知らねえ!体が勝手に動いたんだ!」
(くそっ!攻撃は止められない!せめて、軌道だけでも!)
スペースデブリは、そのままクリントンの体を貫いた。
「がはっ!」
「お前!」
クリントンは、その場で倒れこんだ。
「ぐほっ…兄ちゃん…あのお嬢ちゃんによろしくな…」
クリントンはそれ以上動かなくなった。秀助は頭を抱える。
「くそおおおおおお!!なんということだ!」
それを見て、オーベルハウザーがほくそ笑んだ。
「これが私のレベルΖ『恣意座視理念理論』!兆能力範囲内のものなら、自由に「意味」を付与することができる!もはや、腕など必要ない!」
秀助は、手を挙げようとするが、誰かに阻まれた。善俊である。
「とっしー!何を!」
「知らない!体が勝手に動くんだ!」
「!まさか!」
秀助はオーベルハウザーの方を見る。
「ふふ、そいつの制服に、『私の命令を聞く服』という「意味」を付与した。それも、意識は保ったままな。せいぜい、殺し合いを楽しむんだな。」
「てめぇ…」
秀助は恨めしそうな顔でオーベルハウザーを見る。
「私を見ている暇があるかな?彼は、兆能力を発動しているが?」
「!何!」
秀助は辺りを見回す。確かに、善俊の姿が見つからない。
「しゅう君!右からだ!かわせ!」
秀助は言われた通りにかわした。すると、顔の右側に、風を切るような感覚を感じた。
(!これがとっしーの新技か!)
オーベルハウザーは、苦しみながらも愉快そうに秀助を見ていた。
「私にレベルΖを発動させたのは、後にも先にも、君だけだろう!前言撤回だ!君は、ミスター・リードが命を捨ててまで守る価値がある!だから、こっちも全力でいかせてもらう!」
秀助の周りに城壁の一部や、建物の残骸が集まってくる。
「!」
「そいつらは、私の番犬だよ。『ご主人様に歯向かう敵に、鋭い殺意を持つ』という「意味」を付与した。」
「うわああああ!」
秀助は手を挙げる。スペースデブリが秀助に襲いかかる残骸などを破壊するが、懸念があった。
(とっしーに当たらないか心配だ!おそらく、自身を守ることもせずに、俺に攻撃してくるだろう!)
「しゅう君!僕の心配はしなくてもいい!自分の心配をしろ!君だけが、君だけがあの男を倒すことができるんだ!ミスター・リード首都警総監がいなくなった、今な!」
「!」
秀助は、さらに手を高く挙げた。
「当たってくれるなよ!」
さらに多くのスペースデブリが残骸を破壊していく。しかし、途中で、
「ごほっ!」
という声が聞こえて、秀助は手を下げた。
「気にするなと言っているだろう!甘ちゃんが!手を下げるなあ!」
「!恨むなよ!」
善俊の声を聞いて、秀助は再び手を高く挙げた。すると、無数のスペースデブリが空に見えた。
「そうか!仲間を殺してまで、助かりたいか!はははははは!」
オーベルハウザーは高笑いしている。そのとき、女性の声が聞こえた。聞き慣れた声だ。
「とっしー君は死なないよ!私たちが助けるから!」




