138話:封印
「宗平!」
十兵衛は宗平のもとに駆け寄る。
(ドアノブを強く…!そういえば!)
十兵衛は少し前のことを思い出していた。というのも、ある人質が部屋から出ようとしていたのだ。宗平はそれをテレパシーで知り、部屋から出ないように、ドアノブを強く握りしめていた。そこを狙われてしまった。それでも宗平は、人質を守ることを優先したのだ。
(…俺のせいだ…)
十兵衛はその場で跪き、涙を流す。
「俺が最初っからテレパシーを使わなければ、こんなことには!」
その日のことは、十兵衛に大きな傷を残すことになった。それでもまだ、十兵衛はテレパシーを隠しはしなかった。ただ、使うタイミングを気にするようになる。それでも、多くの部下を失い続けた。眼鏡をかけた生真面目な女性、天真爛漫元気一杯の男性、とにかくよく食べる健啖家な女性…全てテレパシーを発動したことが原因で亡くなった。次第に十兵衛は、テレパシーの使用を避けるようになる。
(テレパシーさえ使わなければ…あるいはテレパシーのことを隠せば…)
そう考えた十兵衛は、自身の兆能力がテレパシーであることを隠すようになり、多くを語らないようになった。そうすることで、無理をする部下が減ると考えたのだ。十兵衛は部下のみならず同僚や上司も多く失っていった。つまり、十兵衛の兆能力を知る者が減っていったのである。ついには、十兵衛の兆能力を知る者が一切いなくなった。
その頃には、首都警総監となっていた。十兵衛本人も思っていることだが、はっきり言って、トップに立てるほどの者でもなかった。だが、他の適任者が存在していなかったし、実力的には文句なしではあった。こうして、説明を極端に省略する―それはときに、部下を追い詰める―や、部下思いである、現在の十兵衛に至ったのだ。
(そうか…そうだったんだな…じーさん…)
(!覗かれてしまったか…誰にも知られたくなかったんだがな。)
十兵衛はついつい秀助に過去を共有してしまったようだ。秀助は頭を押さえていた。
(そういうわけだ。秀助。お前さんはそこで見ていろ。奴は、この私が確実に仕留める!)
十兵衛は自身の左胸を突き刺そうとする。
(死ぬぞ!やめろおおお!)
そのとき、十兵衛の腕が吹き飛んだ。
「!ぐああ!」
「ぐがあああ!」
十兵衛とオーベルハウザーの2人が悶え苦しむ。
(何が起きた!馬鹿貴族は俺が止めていたはずだ!)
秀助が見回すと、見覚えのない人影が複数見えた。そのうちの何人かは、大砲の側に立っていた。
「こ、これは…」
「ふふ、フェルナンド伯爵が念写した城には専属の兵士がいる。」
オーベルハウザーは、苦しみながらも、笑っていた。
(前のときはこんなにいなかった!それに、大砲まで…まさかとは思うが…)
嫌な予感がした。そして、それは的中する。城の一部が崩壊し、巨大なドラゴンが現れた。
「ミスター・リード、攻撃をやめるんだな。」
十兵衛は残っていた方の腕で再び自身に攻撃しようとする。しかし、銃を持っていた兵士の一人が十兵衛の足に発砲した。
「があああ!」
「あああ!やめろと言っているだろう!」
十兵衛は振り絞るように叫んだ。
「好きなだけ攻撃しろ!俺はどうなろうと構わない!そして、お前も道連れだ!」
オーベルハウザーは傷を押さえながらも、冷淡に言った。
「おい、あのガキを殺せ。」
「!させるか!」
兵士は攻撃の対象を秀助に変えようとする。それを十兵衛が止めようとする。手負いでありながら秀助のもとに向かっていく。
「俺のことは気にするな!自分でなんとかできる!」
秀助の言葉に耳を貸さず、十兵衛は近づいてくる。そんなとき、オーベルハウザーは兵士に命令した。
「私の足を撃て。」
兵士は躊躇うことなくオーベルハウザーの足を撃った。
「ぐっ!」
「!」
十兵衛は足に痛みをおぼえ、そのまま倒れてしまう。
「よし!ガキを撃て!」
兵士は一斉に、秀助に射撃した。銃弾や砲弾が秀助を狙う。
(大魔塵で守る!)
秀助は大魔塵ダイアモンド・ダストを発動し、自身を守った。しかし、銃弾や砲弾は確実に塵を破壊し、いつ秀助に命中してもおかしくなかった。ついに塵のほとんどが破壊され、銃弾が飛んできているのが見えた。もはやこれまで、と思った秀助は目をつむる。
しかし、痛みがない。恐る恐る目を開けると、目の前には十兵衛が立っていた。




