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兆兆発止  作者: ぱんろう
最終決戦編
137/150

137話:平塚十兵衛

十兵衛は、突然の嘆願に、呆気にとられた。

「えーとぉ、何かまずいか?」

乾二郎が頭に指差しながら言った。

「頭が痛くなるんですよ!」

宗平も便乗する。

「そうだ。何よりも…」

「何よりも?」

「首都警部とは、直接お話したいんだ。口と口で。」

十兵衛は苦い顔をした。

「口が疲れる。それに、脳内に直接の方が、時短になるじゃないか。」

「緊急時はそうしてください!でも、普段は使わないで!」

十兵衛は深くため息をついて言った。

「わかったよ。」

それを聞いて、2人の部下は嬉しそうにしていた。十兵衛は呆れた顔で見ていたが、一方で、少し嬉しくもあった。

「それと、これからは平塚十兵衛首都警部と呼ばせてくれよ。」

「お前!どこでその名を!」

「いいじゃないか。ミスター・リード?ダセェ名前だ。それよりも、平塚十兵衛って名前のが心地よい。」

「!」

十兵衛は自身が肯定された気がした。それは、テレパシーによるものではない。名前の響きがよいからと、なんともおかしな理由だが、十兵衛にとっては、とても嬉しいことであると感じた。

それから十兵衛は、部下を可愛がるようになった。それゆえ、部下からも人望を集めるようになる。それが、出世に繋がっていった。もっとも、首都警総監に昇りつめたのは、それだけの理由ではないが。

「平塚十兵衛首都警部!食事に行きましょう!」

「平塚首都警部…少し相談があるんだが…」

十兵衛は、部下に囲まれ、さらには尊敬もされていて、幸せであった。それは、決してテレパシーだけで評価されているのではない。十兵衛の優しい性格によるところもあった。兆能力以外も評価されて嬉しかったのだ。

そんなある日、ホテルがテロリストに占拠されるという事件が発生した。人質が取られ、普通の警察だけでは対応しきれそうになかった。そこで、十兵衛と2人の部下、乾二郎と宗平が応援として派遣された。

「このホテルか…」

警察官が十兵衛のもとに来る。

「相手の数なのですが…」

「いい。自分で確認できる。」

「ぜひそうしてください。私たちでは全て確認できているかどうか…」

十兵衛はテレパシーを発動し、テロリストと人質の様子を確認した。それを2人の部下に共有する。

(相手は15人だ。厄介なことに、3階、4階、5階にそれぞれ5人ずつ分散している。人質は部屋の中に入れていて、そこから動かないように指示しているらしいな。兆能力は…)

十兵衛の思念を聞いて、乾二郎が提案する。

(それでは、三手にわかれて行動しましょう!)

十兵衛は2人の方を見る。

(大丈夫か?)

(甘く見ないでください。僕たちだって、過酷な合宿を乗り越えたんです!)

(あんたが兆能力を共有してくれたじゃないか。それがわかってしまえば、こっちのもんだ。)

(…そうか。信じていいんだな?)

2人は心の中で、はい!やああ!と返答し、任せてくださいといった感じで十兵衛を見ていた。十兵衛は、緊張した現場にありながら、少し吹き出してしまった。

(わかった。乾二郎は3階がいいかな。宗平は5階なら相性がよさそうだ。俺は4階に向かう。テレパシーで連絡を取り合おう。人質やテロリストの状況を共有しよう。)

2人は頷く。十兵衛はそれを見て、この2人なら大丈夫だろうと思いながら、ホテルの中に入っていくのであった。十兵衛は警察官に話しかける。

「俺たちが突入する。君たちはそこで待機だ。」

「ええ!?無茶ですよ!」

「いいや、奴ら、完全に油断している。俺たちが突入できないと思っているぜ。」

「なぜそんなことが…」

十兵衛はにやっとしながら言った。

「これが首都警察の力さ。奴らの行動は手にとるようにわかる。」


結論から言えば、突入は悪手であったと言わざるをえない。十兵衛は不意打ちに成功していた。そこで部下の様子を見に行こうと、十兵衛が3階に降りたとき、乾二郎の死を知る。

「そんな…嘘だ…乾二郎!」

十兵衛が駆けつけた頃には、息を引き取っていた。

(そんな…乾二郎…)

そのとき、十兵衛ははっとした。

(そうだ!宗平!無事か?)

十兵衛は宗平に呼びかけるが、返事はない。

(…)

十兵衛は即座に、宗平がいる5階に向かった。途中数人のテロリストと遭遇したが、すれ違いざまに倒した。

(きっと、逃してしまったんだ。そうだ。宗平に限って、やられることなど…)

しばらく5階を探索していると、宗平を見つけた。宗平は、部屋のドアノブを強く握りしめた状態で息絶えていた。


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