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兆兆発止  作者: ぱんろう
最終決戦編
134/150

134話:意味を変える

「ものの「意味」を、まるで変えてしまう…だが、存在するというのか…!?」

オーベルハウザーは瞠目していた。

「流石だ…世界三大兆能力者の名に恥じないな。」

「その肩書きは、デイヴィッド亡き今無価値だ。二度と口に出すな。」

十兵衛は険しい表情でオーベルハウザーを見る。

「死んだ者のことなど、どうでもいい。それよりも、君は私の兆能力を理解した。そうだ。私の兆能力『ワールド・イズ・ノット・イナフ』は、ものの「意味」を自由自在に変えることができる。もっとも、生物の体にだけはこの兆能力を適用できないがね。」

例えば、机があるとしよう。机というのは、文字を書く、本を読む、物を置く、といった用途があり、辞書においてもそのような意味で定義されている。一方で机は、暴動においてはバリケードを張るための道具として使用された。

このように、ものの意味は、人間の匙加減によって決定され、その時々に応じて変容するのである。そして、ワールド・イズ・ノット・イナフは、その変容を自由自在に決定できる兆能力なのだ。

「これならば、さっきまでの現象もある程度理解できる。ある程度だぞ?それに、構成員や幹部の最期、五味川茉莉やフェルナンドの様子も、これで説明できるというわけだ。」

オーベルハウザーは拍手しながら、ある物を取り出した。

「正解だ。まずは、これを見てくれ。SOCIOLOGIの構成員バッジだ。平凡な構成員なら黒、幹部なら白だ。それぞれに、『追い詰められた場合、黒なら発火、白なら爆発』という「意味」を付与している。追い詰められた、というのは、私の主観だよ。わかるか?構成員や幹部の運命は、全て私の匙加減で決まるのだよ。」

「五味川茉莉やフェルナンドの場合、身につけているものか。」

「そうだ。『身につけると兆能力を発動できる操り人形になる服』という「意味」を付与している。」

十兵衛はため息をついていた。

「まるで、子どもの妄想だな。」

「そうだ。だからこそ、強いのだよ。子どもの想像力は、ときに大人のアイデアマンさえ凌駕する。」

オーベルハウザーの横で、フェルナンド伯爵がバイクを念写していた。オーベルハウザーは、それに触れている。何らかの「意味」を付与しているのだ。オーベルハウザーは、バイクに乗り込み、十兵衛のもとにバイクを走らせる。十兵衛は危険を察知し、迎え撃つのではなく、かわすことにした。

「おや?壹極畢僉(いちごくひっせん)なのに、攻撃しなくてもよかったのかい?」

バイクは、Uターンしてくる。

(あのバイクに、どのような「意味」が付与された?)

十兵衛は、落としたリンゴを拾い、それをバイクめがけて投げつける。リンゴはバイクに命中した。リンゴはぶつかる衝撃でぐちゃっとなるのではなく、まるで刀に斬られたかのように、すぱっと真っ二つになった。

(!あのバイクは、刃物だ!『走る刃物』とでも「意味」づけられたか!?)

そのとき、後ろから銃声が聞こえた。振り返ると、フェルナンド伯爵がマスケット銃を構えている。

(あの馬鹿貴族!)

十兵衛は、フェルナンド伯爵とオーベルハウザーに挟まれる形となった。

(前からは、刃物と化したバイク、後ろには、銃か。)

そう考えている間にも、バイクは迫り、二発目の銃弾が放たれる。十兵衛は、放たれた銃弾をキャッチした。

「!」

「後ろからの射撃は容易に対応できる。やはり、注意すべきはバイクか。」

しかし、バイクは急ブレーキで停止した。オーベルハウザーはバイクから降り、発していたオーラを小さくさせ始めた。

「これじゃあ、フェアじゃないな。」

「フェア?一対二のことかな?」

「ふっ。伯爵は頭数に含まれないよ。私の武器にすぎないのだからな。」

それを聞いて、十兵衛は表情を険しくする。

「そうか。それで、何をするんだ?」

「君と同じ領域に達するだけさ。」

「!まさか!」

オーベルハウザーの全身が、オーラに包まれていた。壹極畢僉(いちごくひっせん)である。

「No.6から聞いているよ。」

十兵衛は表情を少し暗くした。

(No.6...善信君のことか...)

オーベルハウザーはフェルナンド伯爵に命令する。

「…フェルナンド!やれ!」

フェルナンド伯爵は、再び銃を構える。しかし、狙いはオーベルハウザーに向けていた。

「反旗を翻したか。」

フェルナンド伯爵はそのまま発砲した。オーベルハウザーは銃弾をキャッチする。オーベルハウザーはにやりと笑い、銃弾を十兵衛めがけて投げつけた。その速度は、発砲したときよりも速い。

(まずい!これは対応できない!)

十兵衛は思わず目をつむる。数秒経った、が、未だに痛みを感じない。

目を開けてみると、男の背中が見えた。見慣れた男の背中だ。


「まさか、じーさんを助けることになるとはな。」


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