131話:トップ同士の対談
十兵衛は、恐る恐る部屋の中を進む。オーベルハウザーは椅子に座ったまま微動だにしない。
「やあ、ミスター・リード。これで私は、全ての世界三大兆能力者と出会うことができたのだな。」
「随分と余裕だな。」
十兵衛はオーラを発しながら、オーベルハウザーを睨んでいた。
「そう凄むない。私は、君と対話がしたいのだよ。私の名はレオ・オーベルハウザー。SOCIOLOGIのNo.1だ。」
(!こいつが!)
「対話だと?」
「そうだ。まあ、座りたまえ。」
そう言って、オーベルハウザーは手の平を上に向けて、もう片方の椅子を指した。十兵衛は、警戒を解かないまま、椅子に近づく。
「兆能力も解除したらどうかな?」
「お前さんの兆能力がわからん以上、それは無理な話だ。」
十兵衛はきっぱりと断る。オーベルハウザーはため息をつきながら兆能力を発動した。紫色のオーラが発生したのである。
「!」
十兵衛は身構える。
「何、身構える必要はない。これで信用してくれるだろう?」
「?」
オーベルハウザーは、机をとんとんしながら言った。
「この机は、たった今オーラ探知機となった。」
そのとき、机からびーびーと音が鳴り始めた。
「!」
「さあ、兆能力を解除しないと、こいつは鳴り続けるぞ。うるさくてかなわんだろう?」
十兵衛は仕方なくテレパシーを解除した。すると、音は止まった。
「もちろん、無色オーラでも反応する。試してみようか。」
再び音が鳴る。少しして、その音は止まった。
(なんなんだ!?この者は…全てが奇妙だ!それに、なんだ!この迫力は!)
十兵衛は、オーベルハウザーの言うことを聞かざるをえなかった。今まで、同じ世界三大兆能力者相手にも冷静さを取り戻していた十兵衛が、動揺し続けていた。
「ミスター・リード。私の話を聞いてくれないか。」
「なんだと?」
オーベルハウザーは、机の上で腕を組みながら、自身の思想を語り始めた。
「この世界は、天才を殺す社会だ。そうは思わんかね。」
「…」
「兆能力禁止条約によって、兆能力の使用は極限までに限られている。その結果、光る才能も光らないのだ。」
「才能を光らせるためなら、あらゆる犯罪に手を染めてよいとでも?」
「そうせざるをえないから、やっているだけだ。私がこの世界を掌握した、そのときには、そのような犯罪を起こさない平和な世界にするさ。」
十兵衛は椅子から立ち上がり、机に手をやる。そして、右足を上げて、オーベルハウザーめがけて回し蹴りする。しかし、オーベルハウザーはそれを左手で受け止めた。
「やれやれ、すぐに手を出すのか?」
「出したのは足だ…というのは屁理屈だな。だが、あんたの描く空想よりは、よっぽど筋が通っているだろう。」
「空想だって?これは、青写真というものだよ。」
十兵衛は即座に右足を引っ込める。そして、テレパシーを発動した。机からうるさい音が発せられたが、うるさいと言わんばかりに、十兵衛が破壊した。
「本当に荒い…もう少し冷静になれないか。」
実際、十兵衛は冷静さを欠いていた。部下が傷つき、さらには死んだ者もいる。十兵衛は、そのような状況に居ても立っても居られないのである。そして、これ以上部下を失わないためにも、目の前の敵を倒すことに必死だったのだ。
「お前さんの心を覗いてみたいな。」
「おや?テレパシーじゃなかったのかな?」
(人間の脳内には、本人でさえ認知できない情報が存在する。テレパシーは、それさえも読めるはずなのだ。それなのに、この男のそれは読めない。この男の兆能力さえ、何なのかわからん…まあいい。そういうときは…)
十兵衛は、オーラを肥大させた。ガンツフェルトフィノメノンを発動しようとしたのだ。
「!これは!」
オーベルハウザーは頭を抱え始めた。
「ほう、さすがのお前さんも、この状態には驚きを隠せないか。」
十兵衛はほくそ笑みながら、オーベルハウザーに近づく。
「お前さんの兆能力、得体こそ知れないが、手で触れることが発動条件…つまり、不用意に近づかず、遠くから攻撃すればいい。」
「…それが…」
「ん?」
「それが、人類が衰退している理由だ!」
「!」
オーベルハウザーは頭を抱えていた手を、服のボタンにかけながら叫んだ。
「兆能力の使用を禁止した結果、軟弱な者ばかりが生まれる!ハイレッグやソードマスターといった近接専門の兆能力でさえ、飛び道具のような技を習得している!」
「争いとそれに伴う損害を避けるためにも、牽制技を持つのは合理的だと思うがね。」
「それが軟弱な考えなのだ!この世に、ある程度の争いは必要だ!それがなければ、いつかは軟弱な人間だけの、軟弱な世界が生まれる!」
オーベルハウザーは、服のボタンを荒々しく手に取り、投げ捨てた。そして、目をつむった。




