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兆兆発止  作者: ぱんろう
最終決戦編
129/150

129話:見抜けぬ隠し処

芥小町はぐんぐんと龍助の方に向かっていく。

「くそぉおおお!くるんじゃねぇ!」

龍助は先ほどまでの余裕を完全に失っていた。秀助は、その様子を見ながらほくそ笑む。

(これが、壹極畢僉(いちごくひっせん)か!レンズのピントを、全体に合わせる...難しかったが、オーラを小さくすることでできた!)

とはいえ、なぜ、オーラを小さくすることが体全体にオーラを行き渡らせるきっかけになったのだろうか。

カメラで例えるなら、絞りを絞って(カメラに取り込む光が少ししか入らない)、被写界深度(ピントが合っているように見える範囲のこと)を広くして全体にピントを合わせるようなものだ。

オーラの量を絞って、体全体に行き渡らせたことで、秀助は壹極畢僉(いちごくひっせん)を取得した。

(一度オーラを行き渡らせば、大きくさせることも、小さくさせることもできるのか...!便利な技術だ!)

芥小町は次第に龍助の方に近づいていく。

「ぐぬぬぬぬ!」

「降参したらどうだ?お前には、勝ち目も出鱈目もないだろう。」

「なんなんだよ!そのオーラは!」

龍助は自身の危機もお構いなく、秀助のオーラについて尋ねる。それほど、興味がそそられたのだ。


「これか?これは、壹極畢僉(いちごくひっせん)…涙もろい男の、置き土産だ。」


「なんだと!?」

龍助は聞き慣れない単語に動揺したのか、力が抜けた。アシドーシスと芥小町が一気に龍助に襲いかかる。

「ぐわあああ!」

龍助は、アシドーシスを消滅させたが、それでも芥小町をかわすことができなかった。龍助の周りで塵が浮遊する。

「さあ、2撃目!」

浮遊していた塵は、一斉に龍助に向かっていく。一つ一つの塵が、それぞれ龍助にぶつかっていく。

「くかっ…ぐん。」

龍助は膝をつき、倒れた。


「やったぞ…善治。」

水のベールも消え、みつねが開放された。

「ぶはっ…はぁ、はぁ。」

「みっちゃん!」

秀助は、急いでみつねの方に向かっていく。みつねは、なんとか立ち上がって、嬉しそうな表情で秀助を見た。

「やったね!しゅう君!」

「ああ、まあな。」

みつねが無事であることを確認し、秀助は安心した。しかし、龍助のうめき声が聞こえると、再び構える。

「すまなかった…秀助…」

「は?」

意外な言葉に、秀助は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

「俺はもう死ぬ。だから、茉莉に伝えたいことがあるんだ。」

「それは都合がよすぎないか!」

龍助はにやっと笑った。

「『また家族一緒に食事をしよう』ってな…もちろん秀助もだ!」

「!」

秀助は固まった。龍助はそんな秀助に手を差し伸べる。

「さあ、まずは俺たちで一緒になろう!」

秀助は龍助の手を振り払う。

「!行くぞ!みっちゃん!こいつの近くにいるのは危険だ!」

秀助はみつねの手を取り、その場を去る。爆発に巻き込まれないため、とにかく走っていった。

「!待ってくれ!一人にしないでくれ!秀助!」

秀助は振り返ることなく、先に進むのであった。


「茉莉ぃぃぃぃぃぃ!」

しばらくすると、妻の名前を呼ぶ龍助の叫び声と爆発音が聞こえてきた。

「相応しい最期だ。」

秀助は、振り返ることもなく、ただ前に進んでいくのであった。

(しゅう君…それは本心なの?それとも、ただの強がり?)

しかし、みつねは見ていた。秀助の顔は決して明るいものではなかったと。その暗さがなんのゆえであるのか、みつねにはわからなかった。

(秀助!聞こえるか!私だ!)

(!じーさん!)

十兵衛の声が聞こえてきた。

(ようやく、五味川茉莉の居場所がわかったぞ。)

(なんだって!?)

(どうやら、構成員でさえも把握していなかったらしい。どうりで、テレパシーで見抜けないわけだ。)

(どこにいる!さっさと言え!)

秀助は強く思念した。

(まあ、そう焦るな。答えは、お前さんの近くにいる。)

「?どういう意味だ?」

秀助は辺りを見回す。それによって、十兵衛が思っていたことを理解した。

「!傷だらけの猫!?」

(そいつだ!そいつを追え!傷を治してもらうために、五味川茉莉のもとに向かっているんだ!さて、他の皆に告ぐ。即時避難せよ。この建物はほとんど陥落したようなものだ。)

猫を追うように指示した後、十兵衛は部下に避難指示を出していた。

それを聞きつつ、秀助は猫を追いかけ始める。しかし、猫は足が速い。走って追うことなど難しい。

「しゅう君、私に任せて。」

みつねがそう言うと、しゃがんで両手を後ろに回した。

「さあ、乗って!」

みつねは、秀助をおぶって、ワイルド・スピードで猫を追いかけようとしているのである。

「できるかよ!それに、みっちゃんのその足…」

秀助は躊躇った。恥ずかしいのもあったが、何よりもみつねの足が心配だ。

「いいから!」

みつねは大きい声で叫ぶように言った。秀助は、みつねの大声に弱いらしい、おどおどしながらも、みつねの背に体を預けるのであった。

「しっかり掴まってね…人を乗せるの初めてだから。」

みつねは、両足にオーラを纏わせながら立ち上がった。

「え…それって…」

秀助が言いきる前に、みつねはワイルド・スピードで急発進した。秀助が文字に起こすのも難しい声をあげているのを気にせず、みつねは先に進む。すると、一瞬のうちに、猫に追いついた。

(いた!猫ちゃん!)

猫は、ある部屋の中に猫専用の入り口で入っていく。そこには、人間が入るための入り口はなさそうであった。

「しゅう君!止まるついでに、壁をぶち破るね!」

「え?どういう…」

みつねは、その部屋の近くにあった壁に、全速力で追突する。大きな音を立てて、2人は部屋の中に入ることができた。

「いてて…しゅう君、大丈夫?」

みつねは特にこれといったダメージはないようであった。秀助は呆れながら言う。

「手荒すぎるぜ。よくそれで済んだな…」

「よかった!」

みつねは秀助の無事を確認すると、すぐに立ち上がり、部屋の中を見回した。

(なんて頑丈さだ…ワイルド・スピードゆえなのか?)

そこは、赤いカーペットとその上に置かれた机以外には何もない質素な部屋であった。

(猫がいない…どこにいった?)

みつねは部屋を歩き回る。いくら人間よりも小さい猫でも、この部屋に隠れられるような場所などなかった。しばらく歩き回っていると、あることに気がついた。

(!このカーペット…ひっかいた跡がある…)

みつねはカーペットをめくってみた。すると、小さい穴を見つけた。

「…これまた小さいね。猫ならば入るだろうけど。」

「きっと、猫にだけは、おふくろの治癒を受けられるようにしているんだ。他の構成員や幹部は、生きるか死ぬかだ。」

2人はしばらく黙り込んだ。つい先ほど、死んだ幹部がいたのが記憶に新しい。その沈黙を先に破ったのは秀助だ。

「さあ、この穴もぶち壊すか。」

そう言って、秀助は近くにあった机を壊した。そして、その机をダストメイカーで浮かべ、穴めがけて発射する。穴は人一人通れる大きさになった。2人は穴を覗き込む。

「暗いな…」

それでも秀助は穴の中に入った。その先に、五味川茉莉がいるかもしれないのだ。入らないわけがない。

(さあ、燃えるゴミの出番だ。)

秀助はなんとか地面に着地した。着地してすぐに四次元ゴミ箱を出現させ、ゴミを発射した。ゴミは燃えて、辺りを少し明るくした。秀助は、周囲が安全かどうかを確かめる。

「みっちゃん!降りても大丈夫だ!」

それを聞いて、みつねも穴の中に入った。

「結構広いね…でも、これじゃあまるで…」

「監禁状態だ。教祖様への待遇とは思えないな。」

2人はしばらくその空間を歩き続ける。すると、微かに紫色のオーラが見える。

「あそこだ!あそこにいる!」

秀助はそこに走って向かう。どんどんオーラが大きく見えるようになってくる。そして、ついに近くまで来たとき、秀助は五味川茉莉の顔をはっきりと確認することができた。


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