128話:言うは易し、行うは難し
秀助の肩に手を置いたのは、みつねであった。擦りむいた足で前に進み続け、ついに秀助に追いついたのだ。
「みっちゃん!?ここは危ない!せめて、別の場所に…!」
みつねは首を横に振る。
「いや、ここでいい。ここじゃなきゃ、ダメ…」
「みっちゃん…」
「ひゅー、妬けるねぇ。可愛いガールフレンドだ。いつも俺のクソ息子がお世話になっている。」
龍助が口笛を吹きながら言った。
「え!?あの人、しゅう君のお父さん!?…でも、ちょっと似てるかも…」
「「は!?どこがだよ!」」
2人は同じタイミングで突っ込んだ。みつねはついつい呆れていた。
(そういうところだよ…)
「そんなことよりもみっちゃん、俺は壱極集中を使えるぞ。」
秀助は即座に切り替えて、みつねに言った。
「できることと、知ってることは別だよ。」
「!」
「しゅう君は、理屈で覚えて、それを実践できるタイプ…だからこそ、川路善治警部補はしゅう君にならできると思ったんじゃないかな。」
「…まずは、壱極集中からだ。手短にな。」
秀助はみつねの方に顔を向け、話を聞く体勢になった。
「!しゅう君!レンズだよ!」
「レンズ?」
「そう!一点に光を集めるレンズのように、体にオーラを纏わせる!」
「…なるほどな。つまり、壹極畢僉の場合は、それを全身に置き換えればいいってわけだ。」
「さっきから、2人で何を話している?」
龍助が退屈そうに言った。拮抗状態は未だに続いている。秀助もだが、集中が切れているのだ。
(とはいえ、やられるのも時間の問題だ。体力でいうと、あっちの方がありそうだ。)
そんな秀助は、壹極畢僉を実践しようとしない。もどかしくなったみつねは口を開いた。
「しゅう君!あとは実践あるのみだよ!」
「理屈ではわかっても、実践するのはやはり難しい!それに、この拮抗状態を維持するので精いっぱいだ!」
「…!でも、実践しないことには、先に進まないよ!」
すると、みつねは秀助のもとを離れ、クラウチングスタートの体勢をとった。
「!何を考えている!」
「あの人の邪魔をしてくる!その間に、実践して!」
「無茶だ!その足ならなおさら!」
みつねは、秀助に耳を貸さず、ワイルド・スピードを発動した。龍助に急接近する。
「うぉ!やっときたか!」
龍助は右手でアシドーシスを放っている。
(狙うなら右から!)
みつねは拳にオーラを纏わせ、龍助に攻撃しようとする。
「まあ、きたからといってなんだというわけでもないが。」
龍助は視線を秀助の方に戻した。
「逃げろ!みっちゃん!」
みつねが殴りかかろうとしたとき、水のベールが張られた。
「!」
「これぐらいなら、アシドーシスを放っているときでもできる。」
みつねの腕は、水に引き込まれていく。ついには、全身が水にのまれていった。
「みっちゃん!」
「さあ、どうする?この子は、いずれ溺れ死ぬだろうな。」
「てめぇ…」
(もはや考える暇はない。こうなったら、賭けるより他にない!)
秀助はオーラを体全体に纏わせようとする。しかし、レンズのピントを全身に合わせるというのは、簡単にはできることではない。
(どうすればいい!どうすれば、オーラを全身に!)
心の中では必死だが、何も変化することはない。こうなったらと、秀助はオーラを弱めた。すると、芥小町がアシドーシスに押されながら急接近してくる。
「降参したか!?そうなんだよ!最初から、お前に勝ち目はなかったんだ!」
「いや、まだだ!俺には、出鱈目がある!」
「なんだって?」
秀助は再びオーラを肥大化させた。そのオーラは、秀助の全身をバランスよく纏っている。まるで、宇宙飛行士のようだ。
(これが、壹極畢僉!)
「なんだ!?なんだよ!それ!」
龍助は、見慣れない光景に動揺していた。それによって、アシドーシスの動きが少し鈍くなった。秀助はその隙を逃さず、力を込め始める。
「さあ、覚悟しろ!」
「そんな馬鹿な!アシドーシスが…」
芥小町はぐんぐんと、アシドーシスを押していった。龍助の方が押され始めたのである。
「さあ、クソ親父。そろそろ往生してもらうぜ!安心しな!墓に布団ぐらいはかけてやるよ!」




