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兆兆発止  作者: ぱんろう
最終決戦編
127/150

127話:最後の言葉

「!お兄様!」

死んだはずの善治の声を聞いて、真っ先に驚いたのは、善俊であった。善治の方を見るが、安らかな顔をしたままだ。

(どういうことだ!息はもう止まっている…なのに、声だけが聞こえるなんて!)

驚いたのは善俊だけでない。

(オーラが肥大している…それも勝手に…だ。)

十兵衛は自身のオーラが勝手に肥大しているのを感じた。そのとき、善治が再び声を出す。

(ミスター・リード首都警総監…少しのご無礼をお許しください。原理はわかりませんが、今の私はテレパシーに干渉できるそうです。)

(!…そうか。わかった。好きにしてくれ。)

(感謝します。ミスター・リード首都警総監。)

善治は間を置いて思念した。


(結論から言えば、俺は死んだ。今の俺は魂だけの存在だ。)


「!」

善治の死を知らなかった者はもれなく驚いた。とりわけ、秀助はオーラを弱めてしまった。アシドーシスはますます秀助に近づいていった。


(動揺するな!)

善治の口調が強くなる。

(ゴミ野郎!そんなことでへばるお前じゃないだろう!?)

(!)

(一ついいことを教えてやる…バランスを極めるんだ。)

(バランスだと…?)

(お兄様!それは!)

善俊が割って入った。それでも、善治は続ける。

(今のお前は、オーラを大きくさせることができるらしいな!だが、全体に行き渡らせることができていない!行き渡らせるんだ!オーラを行き渡らせることにより、技や身体能力を高次の段階に発展させることができる!)

(オーラの行き渡らせる...)

秀助は黙って善治の声を聞いている。善治が続けた。


(世界大戦時、中国でクーデターを起こした宗教集団によって生み出された技術…壹極畢僉(いちごくひっせん)!実は、壱極集中はこれを発展…いや、退化と呼ぶべきか。あるいは、誰でも使えるようにしたものだ!)


(善治君!それは、禁断の技術!歴史の闇に葬られているはずだ!なぜお前さんが知っている!)

十兵衛が取り乱したように聞いた。

(川路一族の情報網は、ミスター・リード首都警総監の想像以上ですよ。)


(善治!さっさとその方法を教えろ!)

秀助は焦っていた。無理もない。アシドーシスが近づいてきているのである。

(たく、死人に対して、なんだ、その態度は…簡単な話だよ。壱極集中を体全体でやればいい。)

(!そうか!)

(まあ、理屈でわかっても、実践するのは難しいがな…)

(は?じゃあ、なんで教えたんだよ!)

秀助は怒りを露わにする。しかし、善治はいつものように怒り返すのではなく、優しく言った。


(お前ならできるんじゃないかって思っただけさ。)


(!…お前…)

(死ぬなよ…五味川秀助。そして、他の皆さんも、どうかご達者で。)

秀助は意外な返答に困惑していた。それと同時に感銘も受けた。だが、何か返事をする前に、善治が再び思念していた。

(ミスター・リード首都警総監、今からは、善俊とだけで話します。他の皆の心の声を遮断してもよいですか?)

(ああ。)

すると、善俊と十兵衛以外の皆に、善治の声が聞こえなくなった。善治の訃報は、それぞれを悲しませる。特に、兆能力ファイトクラブで同じメンバーとして戦った者は涙を出さずにはいられなかった。

「善治…」

「…川路善治警部補…あなたとは、もっと兆能力について語り合いたかった…」


善治は、善俊に語りかける。

(善俊…お父様のことは、許してやってくれないか。)

(!ですが、お兄様…!)

善俊は心の声を強くする。

(確かに、ろくでもない人だ…本当にな…だが、本当のことを言うと、ちょっとだけ気持ちがわかるんだ。俺も首都警察になりたくて、なれなかった人間だからな…)

(…)

(善俊、これからは、お前が川路の名を背負っていくことになる。変えるんだ。くだらない、一族のしきたりをな。二度と、このようなことにならないためにも!)

(!…わかりました…)

善治は少し間を置いた。

(どうした?元気がないぞ?)

(だって…今でも信じられないんですよ!お兄様が死んだなんて!)

(!)

(それなのに、なぜ!こうして対話できているんですか!本当は生きているんでしょう!?からかうのはうやめてください!)

善俊は、善治の肉体に、涙を流しながら言い続ける。

(脈を確認してみろ…そいつは俺だが、そいつの中に俺はいない。)

(!うわああああああ!)

善俊は、その場で泣き崩れた。

(嫌です!離れ離れになりたくありません!)

(善俊…)

(嫌だ!嫌だ!)

(いい加減にしろ!)

(!)

先ほどまで優しい口調であった善治の思念が強くなった。

(死んだ者は、返ってこねぇぞ。こうして対話できることも、本来はありえないことだ。だからこそ、最後の時間をお前と噛みしめたいんだ。)

(お兄様…)

(俺だって…本当は嫌に決まってるだろ…!お前ともっと…うう…)

善治は黙り込んでしまった。

(お兄様?)

(すまない…どうやら、時間が迫ってきているようだ。くだらないことで喧嘩している場合じゃない。別れの言葉を伝えないとな…)

(はい…)


(善俊…今までありがとう。)


(お兄様…こちらこそ、ありがとうございます…)

善俊は涙を流しながらも、感謝の言葉を伝える。

(お前は、もっと長生きしろよ。そして、俺やお父様とは違って、幸せに、生きたいように生きてくれ…)

(…はい…)


(それじゃあな…善俊、お前が弟でよかったよ…)


(さようなら、自慢のお兄様…)

別れの言葉が交わされると、善治の声は聞こえなくなった。善治は、改めて善治の肉体に近づき、その安らかな顔を見続ける。そして、

(お兄様、この体は、間違いなくお兄様なのです…一緒に行きましょう。そして、この戦いが終われば、一緒に家に帰りましょう…)

善俊は善治の肉体を担ぎ、先に進むのであった。


(そうか、善治君…お前さんは、どうするか迷っていた私を見かねたのだな?)

十兵衛はゆっくりと立ち上がる。

(そうなんだよな…?じゃないと、こんなこと、起きるわけがない...!)

十兵衛も涙を流していた。善治の死を知ってからずっと下を向いたままの十兵衛であったが、顔を上げた。


(善治君…お前さんの死は決して無駄にしない!そのためにも、あの男を倒して、SOCIOLOGIを壊滅させる!)


十兵衛は立ち上がり、再び走りだすのであった。


追い詰められていた秀助は、なんとか気力を振り絞り、再び拮抗状態に戻していた。

「全く…そういうところが嫌いなんだよ…!」

秀助は涙を流している。止めようにも、止まらなかった。

「何を泣いているんだ?死が近づき、怖くなったか?」

龍助は、秀助の様子を見てからかっていた。

「うるせえな…お前には関係ないぜ。」

秀助も善治の死を悲しんでいたのである。涙を流しながらも、龍助と戦い続けていた。

(とはいえ、この状態から、どう抜け出す?…壹極畢僉(いちごくひっせん)ができるとは思えないし…)

そのとき、秀助の肩に誰かが手をぽんと置いた。

「しゅう君、まずは壱極集中を知ることからだよ。」


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