126話:懺悔の爆発
(!そんなこともできるのか!)
「No.2のサイコキネシスほど精度は高くないが、死体を攻撃するには十分だ。」
「!まさか、お兄様をまだ傷つけるというのか!」
善信は、浮かせていた残骸を善治めがけて発射した。残骸はゆっくりだが、少なくとも人が走る速さよりも上だ。確実に善治の方に向かっていく。
(…この様子だと、10秒はかかる。だが、奴の走る速度よりも上だ。そして、奴なら残骸から死体を守ろうとする。)
善信はにやりと笑った。
(そこをついてやる!)
もはや、川路兄弟の親とは思えぬ。それほど、どす黒く、汚れた戦い方であった。残骸は、善治の近くまできていた。
(さあ、どうする!?)
そのとき、
「ぐはっ!」
善信は腹部に強烈な痛みをおぼえる。
「そんな…なぜ…!」
善俊だ。善俊が姿を現したのだ。その腕はオーラを纏い、善信の腹部にめり込んでいた。
「思い込みは、人を盲目にするな。」
それを聞いて、善信ははっとした。
(まさか…あのときから…私に近づいていたのか!)
そう、善信が残骸を善治めがけて発射した時点で、善俊は善信に近づいていたのである。
善俊はめり込ませていた腕を、全力で振り上げる。すると、善信は上に向かって吹き飛んでいった。勢いがすさまじく、善信の頭上にあった天井を貫いた。
「あの世でお兄様に謝ってこいッ!!」
「私はまだ死なん!」
善信は吹き飛ばされながらも目をつむる。
(!暗い!)
しかし、写るのは真っ暗な世界。いや、通常は目をつむれば、目の前が暗くなるのは当然だが、千里眼を発動していた善信にとって、それは想定外の出来事であった。
(そうか…私に未来は…ないというわけか…)
善信は死を悟り、静かに言った。
「悪いが、それはできないな。私が向かう先は、上ではなく、下なのだから。」
ある地点まで吹き飛ばされた善信だが、その地点で落下し始めた。落下している善信の目に、善俊と死んだ善治の顔が見えた。善俊の顔からは、大粒の涙が流れている。
「自分勝手な父親ですまなかった...善俊、善治...」
善信は落下している途中で爆発した。善俊は、何も言わず、爆発を最後まで見届けていた。
「!善信君の声が消えた…!」
下を向いていた十兵衛がはっとした。
(そうか…やったんだな…善俊君…)
十兵衛は上を向いた。
(善信君、お前さんはいつか、言っていたじゃないか。2人の息子が立派になるときを見届ける…と。それを知っているからこそ、お前さんを疑うこともなかったのだ。なぜ、その想いを蹴ってまで、この組織に与したんだ…)
一方、善治の死を知る由もない秀助は、切迫した状態になっていた。龍助のアシドーシスと、秀助の芥小町がぶつかり合って、拮抗していたのである。
「まさか、こんなことになるとはなぁ。」
「…」
秀助はとにかくオーラを肥大させる、それでも拮抗が崩れることはない。
(腐っても俺の息子だな。そう簡単にはいかないか。だが…)
龍助は、オーラを肥大させる。
「!あんたもオーラを大きくできるのか!」
すると、芥小町が押され始めた。龍助の力が増大したのと、それに秀助が動揺したことによって、拮抗が崩れたのである。
(まずい!押されている!)
アシドーシスは、芥小町とともに、着実に秀助に向かってくる。
小さく見えていた芥小町が、次第に大きくなってきていたのだ。
「こんなところで!よりにもよって、こんな奴に!負けるわけにいかない!」
秀助は目をつむる。これまで、多くの仲間たちにフォローされて、ここまで来た。彼ら彼女らの顔を一人一人思いだす。仲間たちのためにも、秀助は決して負けるわけにはいかないのだ。
そのとき、何者かの声が聞こえてきた。
(そうだ!ゴミ野郎!)
「!この声は…!」
それは間違いなく、死んだはずの善治の声であった。




