125話:ブラインドジャック
「!なんだって!?」
善信は再び辺りを見回す。
「無様だな…何度も辺りを見回して。」
声の主は善俊であった。しかし、その姿は見えない。
「善俊!出てきなさい!」
「何度も言わせるな。あんたの目の前にいるんだ。」
「!いないじゃないか!」
善信は声を荒げる。善俊はため息をついて言った。
「教えてやる。これは僕の新技だよ。そうだな…『ブラインドジャック』とでも呼ぼうか。」
「!」
「ジャックした対象の視界から、自身だけを消滅させることができる。第三者には僕のことが見えるが、あんただけが僕を見ることができない!」
善信は目をつむる。
(ならば、殺視でこちらも姿を消そう…とにかく防御だ。)
善信が殺視によって姿を消そうとしたとき、再び善俊の声が聞こえた。
「無駄だ。こっちはあんたの視界をジャックしているんだ。今の僕なら、姿を消したあんたも目に見ることができる。」
「ふん、それはどうかな?」
善信は姿を消しながら、未来を見る。
(!殴られている…!なぜだ!)
その未来には、善信の左頬が殴られている様子が写った。
(落ち着くんだ…左頬が殴られているというのであれば、そこを防御すればよいだけのこと…)
しかし、善信は考え直した。
(いや待て!奴は私の視界をジャックしている。つまり、あの未来を同様に見た…)
善信は、腕にオーラを纏わせていた。
(ならば、迎え撃ってやるさ…おそらく、奴は左頬に正拳突きをしてくる…!つまり、それに合わせて攻撃すればいいだけの話だ!)
善信は、左前方に向かって壱極集中のパンチをする。しかし、手応えはない。
(何!?手応えが…!)
「ごほっ!」
結局、善信は攻撃を受けた。善俊は、善信のパンチを背に、裏拳で攻撃していたのである。
「僕の攻撃が、実直なものだと思ったか?見くびるなよ。」
善信は吹き飛ばされる。今回は受け身をとることができなかった。
「はぁ…はぁ…」
(まずい!このままでは、爆発してしまう!…だが、奴の姿を捉えることができない…)
善信はなんとか起き上がる。
(そうだ…見る必要なんかないんだ…下手なカウンターもしない。)
善信は、オーラを目に纏わせる。
「有視実行!」
「!」
そのとき、善信がいた地点を除く、周囲の天井が崩れ落ちた。
(簡単な話だった。有視実行は、物体にも干渉することができる。私がいる位置から半径50cmを安全地帯とし、それ以外はデッドゾーンに変えればよいのだ。)
「さて。」
善信は上を向いた。
「助かりたいなら、私の頭上にくるはずだ!見えていたんだろう?未来が!」
そのまま、善信は頭上に向かって壱極集中のパンチをする。
「!?」
しかし、手応えがなかった。善信は辺りを見回す。
(死を受け入れたのか!?)
しばらく見回していると、あることに気がつく。
「!あれは!」
安全地帯がもう一つできていたのだ。そこは、善治が眠っている場所である。
「ま、まさか!善俊!お前はそこにいるのか!」
「そうだ!」
善俊の、口から血が出るような、振り絞った声が聞こえる。
「そんな死体を守るために、自身に無理をさせたのか!なんと愚かな!」
「兄弟がいないお前にはわからないだろうな!」
「貴様!親に向かってなんだ!」
善信は有視実行によって、崩れ落ちた天井の残骸を浮かばせた。




