118話:飼い主の逆襲
「!3人とも!?」
(そんな!おかしい!ダーツの矢にそんな細工はしていない!)
爆発により発生した煙で周りが見えない中、菊千代は動揺していた。智子は声を出すことができず、ただ呆然としていた。そのとき、何者かが智子に襲いかかる。
「!きゃあああああ!」
「!智子ちゃん!」
智子の悲鳴がどこからともなく聞こえてきた。菊千代が智子の名前を呼ぶが、返事はない。
時が経つにつれ、煙がはれていく。すると、4人が倒れているのが見えるようになった。
「!そんな…」
菊千代は、口を手で押さえていた。これまで強敵に立ち向かってきた4人が、一瞬のうちに倒されたのだ。
そんなとき、菊千代の後ろに気配を感じた。菊千代は即座に振り返る。そこには、オーベルハウザーがいた。
「!あんた!」
菊千代は後方にジャンプし、距離をとった。そして、ダーツの矢を3本出現させる。
「もう一度、私に投げるかな?せいぜい、いちご病にならないよう気をつけたまえ。」
「うるさい!」
菊千代は3本のダーツを一斉に投げつける。狙いは正確だ。3本ともオーベルハウザーの急所を突ける位置に飛んでいた。その3本は間違いなくオーベルハウザーに命中する。しかし、
「!なぜ…」
ダーツの矢はオーベルハウザーの服を貫通することなく突き刺さった。
「いただくよ。これ。」
(!まずい!爆弾に変えられる!)
菊千代がそう思っていたとき、オーベルハウザーが一本の矢を放り投げた。それは爆発するのではなく、ガスを噴射した。
「!どうなってるの!?」
菊千代はガスに囲まれて困惑している。そこに、もう一本の矢が飛んできた。
「!」
その矢は光を発し、菊千代の目を眩ませた。菊千代が目をつむっている間に、オーベルハウザーが菊千代の目前に迫っていた。
(いつの間に!)
オーベルハウザーは、最後の矢を菊千代に触れさせた。すると、
「きゃああああああ!」
強力な電気が流れ、菊千代を気絶させた。
「そんな…」
ついに、菊千代は倒れてしまった。
一瞬の時間に、首都警察が5人もやられた。全員、精鋭暗殺部隊と戦ってきた猛者である。それを一瞬でだ。5人が倒れたのを、テレパシーを常時発動していた十兵衛が察知していた。
(!…おかしい!5人の心の声が消えた!…相手は…何者だ!)
(ミスター・リード。いるんだろう?2階の客間で待っている。話をしようではないか。)
(!誰だ!)
十兵衛は何者かと交信するが、とても奇妙な相手であると感じた。心の声がはっきりと聞こえないのである。
(こんなことは初めてた!どうなっている!)
十兵衛は下を向き、夥しい量の汗をかいていた。テレパシーで聞こえない声はない…はずなのに、相手の声が聞こえないのである。未知との遭遇に困惑していたのだ。
(とりあえず…救護班!1階にて怪我人だ!救護に向かってくれ!)
応援で駆けつけた首都警察のうち、救護班に呼びかけて、5人を救護するように要請した。そして、
(待っていろ…!部下に手をかけた罪は重いぞ!)
オーベルハウザーの言った通り、2階に向かっていくのであった。
その2階、ある通路にて、秀助と龍助が対峙している。
「大きくなったなぁ。俺のことを覚えていてくれて、嬉しいぞぉ。」
「当たり前だ。その傷を見れば、嫌でもな。今更父親面か?」
久しぶりの再会にしては、どこか険悪である。
「本当、俺には懐かないなぁ。」
「当たり前だろ!俺には一切触れず、話さず、目も合わせなかった!挙句の果てには、俺が5歳のときに失踪した!」
秀助は声を荒げていた。龍助は、まあまあ、と言わんばかりに、秀助を宥めようとしていた。
「悪かったよ。」
「なぜ、ここにいる!」
「なぜって…わかるだろ?SOCIOLOGIのNo.10、オーギュスト・パーソンズとして…不届き者を始末するのさ...」
「SOCIOLOGIに所属していたとはな...おふくろがいなくなったのも、お前のせいか…!」
秀助は拳を強く握りしめる。
「俺はもともとSOCIOLOGIに共鳴していてな。フランス支部で活動することになったから、お前たちを残してフランスの向かったのだよ。すると、茉莉が勝手についてきてな。それで、この組織を紹介したんだが、言うことを聞かなかったから…」
龍助が言いきるのを待たずして、秀助はゴミを発射していた。龍助がそれをかわす。
「ダストメイカーか…そういえば、今の俺はフランス国籍なのだが、デュルケームというフランス仲間がいてな。」
「だからなんだよ。」
龍助は悲しそうな表情をする。
「いい奴だったんだが、ちょっと前にやられちまったんだ…その死骸の周りには、塵が集まっていたという…」
秀助は龍助の発言を訂正しようとした。
「やられたって表現はやめてくれ。塵で捕まえたら、勝手に爆発しただけだ。」
龍助は笑っていた。
「それがSOCIOLOGI幹部の辿る末路…」
そのとき、秀助は寒気を感じた。
(なんだ…?この寒さ。)
寒気は、次第に酷くなっていく。辺りを見回すと、吹雪が発生していた。
「俺はそうなりたくない。だから、秀助、お前には死んでもらう。」
十兵衛と別れた後、川路兄弟は1階を探索していた。
「お兄様、この部屋にもいなそうです。」
目をつむっていた善俊が言う。
「迷路かよ…ここは...構成員でも迷いそうだ。」
善治がぼやいていたとき、善俊が何かに気がつく。
「!誰か向こうから来ます!…首都警察官ではありません!警察官の制服を着ています!」
「なんだって!?妙だな…この計画に参加している警察官は、俺一人だけのはずだが…」
「ええ、それにこの体型…」
すると、目の前にその人物が現れた。2人はそれを見て固まった。
「あ、あなたは!」
「お父様…?」
そこにいたのは、川路兄弟の父・善信であった。




