117話:群れ意識
どこからか声が聞こえてきた。だが、菊千代も智子も目の前のことに精いっぱいだ。すると、再び声が聞こえてくる。
(久蔵…お前は、今まで味方のことなど考えず、ただ相手を倒すことを考えて戦ってきた。)
(!…まさか、お前はディノニクスなのか!?)
久蔵は、落雷を受けたディノニクスの方を見つめる。
(なんだそれ!恐竜が喋るだと!?わけがわからない!)
久蔵のすぐ側で雷が落ちたが、それさえも意に会さず、狼狽していた。
(久蔵、落ち着いて聞け!今まで、ダイナソーカードの主導権は俺にあった。それに、俺の中で、お前は言うことを聞く価値のないカス野郎という認識だった。)
(...うるせえな...お前も大概カス野郎だ...)
(しかし、今のお前は、仲間を思いやり、傷つけまいとさえしている。お前は自分自身を犠牲にしてまでも、あの女を守ろうとした!俺の中でお前は、言うことを聞いてもいいカス野郎になった!さあ、命令しろ!)
久蔵は、もはや深く考えず、ただディノニクスに頷いた。そして、声高に叫んだ。
「ディノニクス!智子のサポートをしろ!」
ディノニクスは、言われた通りにした。智子のもとに駆け寄り、雷や風から智子の身を守る。
「あんた!ありがとうね!」
智子はディノニクスに微笑みながら感謝する。そして、彼に身を守られながら、猫のもとに向かうのであった。
(あの猫もかわすのに必死だ!それに、雷をかわすときは、いつもジャンプでかわしている。その先を狙えば…!)
猫は雷を警戒して、智子の方に一切目もくれなかった。それは、とても都合がよかった。確実に、着実に、智子は猫の方に向かっていった。そのとき、雷が猫に落ちようとしていた。
「にゃ!」
猫はジャンプしてかわそうとしていた。
(そこだ!)
智子は猫の回避先に先回りした。猫はそれに驚くも、ジャンプした以上簡単に方向転換ができない。
智子は「永」の⑤策を、猫に命中させた。
「ふなあああああ!」
猫は派手に吹き飛ばされて、姿を消していった。それと同時に、激しく吹いていた風や、降っていた雨が止む。
「やったぞ!」
久蔵がディノニクスの方を見ながら、嬉しそうに言った。ディノニクスは、ただ久蔵を見ていた。しかし、その目に敵意などない。むしろ、仲間と喜びを分かち合うような目をしていた。そのような目があるのかどうかわからないが、久蔵にはそう見えたのである。
「ふふっ。」
智子はその様子を見て笑いながら、その場でぐったりした。無理もない。雷に打たれながらも、無理をして戦い続けたのである。そこに、菊千代が寄り添う。
「さすがね!」
智子は微笑んでいた。そこに、アダムスと五郎兵衛が駆けつけてきた。菊千代たちとは別の通路に進んでいたはずだったが、いつの間にか合流してしまったらしい。
「あれ!?皆さんと合流してしまいましたね!」
「2人とも!無事でよかったわ!」
アダムスが手を天に突き上げながら言った。
「当然です!簡単にはやられません!」
合流した5人は、和気あいあいとしていた。そんなところに、一人の男がやってきたのが見えた。
「私のかわいいブロフェルドをいじめたのは、君たちかな?」
「!」
そこにいたのは、No.1のレオ・オーベルハウザーであった。怪我だらけの猫を抱えながら5人に近づいてくる。
「日本の首都警察というものか…ブロフェルド、五味川茉莉のもとに向かいなさい。」
そう言って、オーベルハウザーは、猫を下した。猫はそのままオーベルハウザーのもとを離れて、どこかに行ってしまった。
「五味川茉莉だと!」
久蔵が反応した。そのまま猫を追いかけようとする。しかし、オーベルハウザーが立ちふさがる。そこにダーツの矢が飛んできた。オーベルハウザーはそれをキャッチした。
「先に行きなさい!私が相手しておくわ!」
菊千代に言われるまま、3人が先に進もうとする。智子は、怪我のせいですぐには立ち上がれなかった。
「笑わせるな。」
オーベルハウザーは、持っていたダーツの矢を3人の方に投げた。
「こっちのセリフだ!そんなもんで、3人も止められるかよ!」
そのとき、ダーツの矢が派手に爆発した。




